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臨時妃 ・ 原作寄り ・ オリキャラ有り

    





執務室へ行くと、まだ朝も早いと云うのにすでに李順は書簡相手に黙々と政務を進めていた。
戸口から入ってきた黎翔に気付いたのだろうが、特に何も云う風もなく黙々と書簡と格闘している。

「李順、珍しいな。お前が昨晩の事を聞かないし、例の言葉を云わないとはな。」
「ああ、あれですか?」
「そう、『夕鈴殿は臨時の花嫁でいずれは帰すのだから』だの
うんぬんかんぬんというヤツだ。」
「解ってらっしゃるのなら、もう何も云いませんが・・・
それに昨晩は・・・云える状況ではなかったですから。」
「そうだな。」

書簡を精査する視線を外し黎翔の方に向けると、
李順にしては珍しく柔らかく安堵した表情を見せ更に黎翔へと告げる。

「それにしても、夕鈴殿が回復してくれてよかったですよ。
あのまま、もし亡くなられたなんてことになってたなら、
親御さんにどう弁解しても許される事ではないですからね。
しかし、嫁入り前の身体に傷を付けたことに関しては、
如何したら良いのかを考えないといけませんが・・・
危険手当を渡すだけと云う訳にはいかないでしょうから。」

さすがにどうするべきかを考えあぐねている様だった。
それを見た黎翔は、ニヤリと微笑んで決定的な事を宣言する。

「そんな事をお前が気にする事はない。
簡単な事だ―――私がもらい受ければいいだけの事だ。
それこそいい口実だ。」
「へ・・・陛下・・・・今なんと仰いました?
そんな事許される訳がないでしょう!!」
「何故だ?」
「何故って仰っても・・・・彼女は庶民なのですよ。」
「それが如何したと云うのだ・・・古狸共の薦める、
どうとも知れない世間知らずな娘よりもシッカリしているのだし、
何が不満だと云うのだ!!」

黎翔の自分に向ける瞳が真剣そのものであったことから、
これは真意なのだと云う事が解る。
そう李順は理解した・・・・これは以前自分が
『最終的には陛下の決定に従う』と云ったことを全うして、
この事態をいよいよ甘受しないといけなくなったのだと。

「それは、夕鈴殿にも?」
「いいや、まだ云ってはいない。意識のある時にはな。」
「はい?」
「いや、こちらのことだ・・・もう少し回復したらキチンというつもりだ。」
「そうですか・・・・では、もう考え直す事はないと云うことなのですね。」
「くどい!!もう決めたのだ!!
もう駄目だと云われた時に離せないと思ったのだから、
撤回するつもりはない。いいな!!」
「畏まりました。陛下の御意志として承り、
どんな邪魔も入らない様に致しましょう。」

李順は立ちあがり、黎翔に深く頭を垂れた。
それは、黎翔の決めたことに恭順の意を表することだった。
ずっと一緒につき従ってきてくれた李順の決意を汲み取ると、
次第に小犬モードに切り替わりやんわりと悪戯っ子の様に言う。

「まぁ、夕鈴が承知してくれたらね・・・こんな怖かったり、
痛い思いをするような後宮にはいられないから帰して下さいって云われたら、
この話は無かったことになるけどね。ここは僕の腕の見せ所かな?」
「そうですね・・・・・まぁ、頑張って下さいとしか云えませんがね。」

二人は顔を見合わせると、大きな声で笑い始めた。
張りつめていたものが緩んでいくのを、お互いが感じたのだった。

「ところで、話は変わるが、あの者たちはどうした?」
「色々と話してくれましたよ。もう昨晩の内には黒幕の官吏も捕えに向かわせましたし。」
「ほう、さすがと云うべきだな。」

先程とはうって変わって狩りを愉しむ様な若い狼の雰囲気を纏い、
今からのことに思いを馳せると、ニヤリと鋭い瞳を李順に向ける。

「では、後は好きにしていいのだな!」
「御意!!」

その言葉を聞くと、直ぐに地下牢に向かった。
門守に扉を開けさせ、中にいる賊に対峙する。
但し、もう生気が残っている者は皆無と云ってもよかった。

「李順・・・・お前、かなりやったんだな。」
「まぁ、私も少々いらだっておりました故。」

バイトとは云え、曲がりなりにも妃である夕鈴を後宮で亡くならせたとでもなったら
大きな問題にも為り兼ねないし、それより陛下がその後如何なるのかが解らないのだ。

「お前らはこの国の王である珀 黎翔を狙ったのだ、
その度胸は褒めてつかわそう・・・だが、お前らは重大な事をしでかしてくれたのだ。
私の唯一の妃を傷つけたのだ、これは万死に値する。
因って・・・・・後は云わなくても解るな!!」

深紅に冴えわたる瞳に圧倒され牢内の者が頭を抱えて唸っており、
そこに漂う悲壮感はヒシヒシと黎翔や李順にも感じられた。

「―――と言いたい所だが、妃がお前たちの命乞いをしていたのだ。そ
れを処刑していまうと彼女が哀しむだろうから、それだけは思い直しすことにした。」

隣りの李順がいぶかしむ目つきで黎翔を見ていた。
きっと怒りに任せて、この場で処刑してしまうのだろうと思っていたから。

それが黎翔に伝わったのか・・・李順を見るとニヤリと微笑んだ。

「ただ、お咎めなしとはいく訳はないくらい解るだろうな。
よってお前たちは開墾地へと送ることとする、
そこで一生開墾してもらうこととする―――以上だ!!」

ある意味命が助かっただけでも良しとしなければならないのだろうが、
その開墾地も大変な場所なのだ・・・・1年の気候変動は激しく、
過酷な労働とそして終りない広大な荒れ果てた大地。
ただ医療設備等は整っているから、その点に関して環境としては劣悪なモノではない。

李順を見ると、『それでいいのでは?』と黎翔の決定した事項に異論はないらしく、頷いていた。
そして黎翔はもう用は無いとばかりに、門守に命じて扉を締めさせた。

一つ厄介な事は終った。
後は一つだけ・・・・・それで夕鈴の元へ行ける。
黎翔は自然と早足で目的の場所へと向かう。

そこは地下牢ではないもののその前や外の窓の下に兵士を配して、
中にいる者が安易に逃げられないようにしている部屋だった。
突然の陛下の来訪に、扉の前の兵士は直立不動で敬礼をし丁寧に扉を開けた。

「待たせたな。」

黎翔は入るなり、中にいる人物に声を掛けた。
そう、秀偉に・・・・。

「いえ・・・・・・・。」

短く答えてそれ以上言わない秀偉の意図を汲み取り、
黎翔は秀偉が聞きたいであろう事を話してやる。

「夕鈴なら、大丈夫だ。もう心配はいらない。」
「もう・・・というと?もしや・・・」
「察しがいい事だな。昨晩は確かに危なかったのだがな、
持ち直して順調に回復している。」
「そうですか。」

秀偉の心底安堵した様で大きく深呼吸をした。
それを黎翔が見届けると、徐に話を続ける。

「私がここに来た事は、もう解っていると思うのだが・・・。」
「はい、それは処刑についてですね。」
「なるほど・・・・この男は、頭が切れますね。」

李順も秀偉の先程からの勘のいいところを認めたようだ。

「では、申し伝える・・・董 秀偉、お前には申し訳ないのだが死んでもらう事とした。
とは云っても、表向きだ。お前のその洞察眼を私の為に使って貰おう。
地方に赴き、秘密裏に官吏・領主の動向を監視して、
もし不正等があれば私に報告してもらうこととする。
・・・・これは其処に住まう民たちの為である。どうか?」
「はい・・・・畏まりました。もとい、私は大切なお妃様の御命を危険に晒してしまいましたので、死んでお詫びすべきだと考えておりました。ですので、陛下のお役に立てるのならば一生お仕え致します。」

秀偉は、その場に跪いて深々と頭を下げた。

「では、申しつけよう。董 秀偉、お前を地方監視官に命ずる。
これより順次地方に赴くこととせよ。」
「御意!」

そして、黎翔はそのまま李順と部屋を出て行った。
残されたのは、秀偉と部屋の隅にいた浩大。

「じゃあ、これから準備する事だね。
まぁアンタの死亡届とかは陛下の側近なんかがやるから、
まだ2、3日は此処にいることになると思うよ。」

浩大は、伝えておくことだけ言うと『お役御免』とばかりに窓からヒラリと居なくなった。

夕鈴ちゃん、無事なんだね。
ホントに良かった・・・・・・・・。

残された秀偉の瞳からは涙が溢れ、幾筋かの涙が頬を伝っていた。

賊と秀偉の処分言い渡しを終え全ての面倒事が片付くと一応執務室に戻った黎翔は、やっと夕鈴の所に行けると意気揚々としていた。
そこにすかさず李順は『申し訳ございませんが・・・』一言付けて書簡を黎翔に手渡す。

「これは、何だ。」
「何だと仰られても・・・・・急ぎの書簡に決っているではありませんか。」

書簡を見詰めて、黎翔は深い溜息をつく。

これでは、夕鈴の所にいつまで経っても行けないではないか!!
怒り心頭なのだがそこを抑えて仕方ないと諦め、
いつもよりも倍以上の速さで書簡に署名していく。
ものの半刻も経たない内に、渡された書簡全てを片付け李順に乱暴に押し付ける。
そして、李順に狼の声音で釘を差しておく。

「では、行って参るが・・・・・李順云っておくが、
まだ夕鈴が心配だからこの後今日は此処に戻るつもりはない。
いいな、くれぐれも書簡など後宮に持ち込むな!!
宰相が何を云おうと受け付けないからな。」

キチンと申し伝えておかないと、邪魔されたのでは敵わないからだ。
今から自分にとって最も重要で大切な事を告げに行くと云うのだから。
流石に李順も自分の命は惜しいようで、深々と頭を下げ短く「畏まりました」返答しておいた。
その言葉を聞くと、黎翔は弾かれた様に執務室を出て行った。




続~次回はラストです~
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