【そして一つの可能性・13】
2015年01月14日 (水) | 編集 |
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臨時妃 ・ 原作寄り ・ オリキャラ有り








黎翔は夕鈴を抱きかかえたまま回廊を大股で歩き、そのまま後宮内にある神殿に入って行った。

此処は、普段なら神事の時にしか立ち入らない場所。
そして・・・・黎翔は神なんか信じてはいない。

如何して此処に来たのか?
それは一重に夕鈴と二人っきりになりたかったから。
・・・ただ、それだけ。

祭壇の近くまで近寄り夕鈴の身体を横に抱き替えると、
そのまま自分もゆっくりと座り込んだ。
夕鈴の顔を覗き込むと、蒼白な顔色で茶色の瞳は堅く閉じられている。

「夕鈴・・・・・・・。」
周りの壁に反響して、思ったよりも大きく聞こえてくる自身の声。
情けないくらいに覇気もない。

こんなに私は夕鈴に溺れていたんだな。
その存在の大きさに気づくのが失いかけてだとは、全くもって忌々しい。

「ねぇ、目を覚まして、その茶色の瞳に僕を映してよ。」

ぽつりと呟くが腕の中で昏々と眠る夕鈴には全く届いていないのか、微動だにせず瞬き一つもない。

気が付くと、黎翔の頬に一粒の光るモノが・・・。
それに気付き、手の甲で拭ってみると、微かに水滴がついている。

「涙?これが涙なのか??」

自分が流した涙に驚き、目をパチパチさせる。
そして目を開くと、周りの視界がボンヤリとなっていた。

そして、それがきっかけで自分の中の強い感情が身体中を駆け巡り、
何かに揺さぶられるように感情の暴風が吹き荒れ外へと飛び出していった。

「夕鈴!!私を置いて逝くなどと、許せる道理はない。
神がそして冥府の王が許しても、私は君を手離さない!!
絶対にだ。だから早く目を覚ましてくれ!!
もう私は決めた・・・・君を正式な妃にすると。
誰にも邪魔はさせない・・・だから私の為に生きてくれ!!」

黎翔は力の限り叫んで、夕鈴の身体を揺すってみた。
それだけでは済まないらしく、顔を近づけてその青ざめた唇に自身の命を吹き込むかのように、荒々しく口付けた。


その時。
不意に周りの空気が震えた様な感覚がして、唇を離し夕鈴を凝視した。
睫毛がフルフルと細かく震え、ゆっくりと開いていったのだった。

「へ・・・・・い・・・か?」
「夕鈴!!夕鈴、ゆうりん・・・・・・・。」

そのまま掻き抱いて、何度も何度もその愛しい名を呼び続けた。

「へい・・・か、です・・・・・・・よね。・・・どうし・・・・たんです?」
「いいよ、しゃべらなくて。」
「でも・・・・・ここ・・・は・・・・どこ・・・なんです?」
「此処?ああ、後宮内の神殿だよ。此処には僕と夕鈴しかいないから大丈夫だよ。」
「そうです・・・か・・・」
「・・・・・・・」

そのシッカリと開かれた茶色の瞳には、確かに自分が写っている。
夕鈴の瞳は明らかに生命力が宿っており、意識もはっきりとしているようだ。
このまま2度と目覚めないのでは・・・などと、考えたくはないがそう思っていただけに、言葉が出なくなるほどの悦びが身体中を駆け巡る。

黎翔は安堵してようやく大きく深呼吸を一つした。
そして自身の腕の中でシッカリと抱きかかえられいる夕鈴を見てみると、
さっきまで生死を彷徨っていたとは思えない程の力で自分から逃れようともがいていた。

「痛っ!!」
「夕鈴・・・・ほら動いたら傷に触るし、さっきまで昏睡状態だったんだから大人しくしていてよ。」
「でも・・・・」
「でも、じゃない!!!」

きっぱりと夕鈴の反論を封じ込めると『もう逃さない』とでも言う様に、更に動けないようにシッカリと抱きとめた。
そんな黎翔に抗う事をやめた夕鈴はじっと天井を見上げ、何やら考え込んでいるようだ。

陛下・・・・・いつもと同じ様子だし、此処には二人だったって言っていたし。
じゃあ、さっきのは夢だったのよね。



******




「ココハドコ????」

そこは冷たい霧雨が降るひんやりとした暗闇。
私はただこの暗闇と雨から早く逃れたくて、遠くに光っている所を目指そうと速足で歩く。

そこにポツンと座りこむ男の子が・・・・。

「ドウシタノ?」

その子が徐に顔をあげると、齢6歳ぐらいだろうか・・・
不思議なことに陛下によく似た深紅の瞳が印象的な男の子が泣いていた。
そして顔を上げると私を食い入るように見詰めた。

『だって、勝手に居なくなろうとするから・・・』

云いたい事だけ告げるとまた激しく泣きだしてしまった。
私は何と答えて良いの解らなかったから、その頭を撫でるしか出来無かった。
でも一向に泣き止まなかったから、誰のことを云っているのかはわからないけど答えてあげた。

「イナクナンテ、ナラナイカラ!!」

って約束したら、その子が笑顔になった。
すると目の前に光が差し込み始め、気がつけば光りの洪水に私はその場所から弾き出されてしまっていた。


*********


よく考えたら、おかしな話で・・・。
陛下によく似た男の子だとは云え、陛下が泣くなんて事はあり得ないし、
第一それじゃあ臨死体験って感じだしね・・・・・・。

でもその後に、確か陛下の声が聞こえてきたような。
必死に呼びかけてくる悲痛な声が・・・何か大切なことを言っていた気も・・・。

「あの・・・・・・・へいか・・・・・なにか、わたしに・・・・いっていましたか?」
「ああ、確かに云ったが聞こえていたのか?私が君を正式な妃にする事をと云ったのだが。」
「せっっっっ、正式な妃にですって~~~~~~痛っ!!」
「だから、興奮しないでよ、傷に触るから。」

夕鈴は驚き身体を起きあがらさせようとして、
どうやら傷が酷く痛んだらしく声も出せずに涙目になっていた。

「夕鈴・・・その事は後でゆっくりと話そう。
今は取り敢えず部屋に戻って、侍医に診てもらおう。」

黎翔はいつも通りの妖艶な笑みを夕鈴に見せ抱きかかえたまま立ちあがる。
そして真っ赤に頬を染める夕鈴のことは見ないふりして、そのまま涼しげに歩いて行った。
その腕で夕鈴の体温をシッカリと感じながら。

暖かい・・・・ちゃんと生きてる。

同じ道のりなのに先程の切羽詰まった気持ちとは間逆で、
心の奥底が暖かくなるような感覚を味わっていた。

「大丈夫?傷に触るだろうから、ゆっくりと歩いているつもりだけど・・・痛まない?」

抱かれた夕鈴は堅く目を瞑っているから、
痛んでいるのかどうかが解らないから気になって聞いてみた。
その言葉に閉じていた瞳をジンワリと開いて、
抱かれたまま見上げるとニッコリと微笑んだ。

「大丈夫です。」

・・・但し、その後はまた茶色の瞳は直ぐに閉じられた。

かなり痛むのだろうが、我慢して大丈夫と言ったんだろうな。
早く侍医に診せた方がいいな。

逸る気持ちを抑えつつ、夕鈴になるべく負担は掛けない様に注意を払いつつ少し速度を早めた。

「侍医は控えておるのか?」

黎翔の大きな声が部屋中に響き渡る。
隣りの控えの間から、慌てて転がり出て来たのは侍医達の中では一番年若い侍医。
ただし、腕は確かなのを買われて抜擢されている注目の者だ。

「は、はい、陛下此方に・・・。」
「他の者たちは!!」
「取り敢えず、詰め所の方に戻りまして御座います。」

申し訳なさそうに、拱手したまま答える。

「まぁ、仕方もあるまい。妃はもう駄目だろうという見解だったからな。
直ぐに使いをやって呼び戻してこい!!妃が気が付いたのだ!!」
「お妃さまが・・・・・・あっ、ハイ!!!ただ今直ぐに!!」
「では、先に寝室に連れて行く故、直ぐに頼んだぞ。」

黎翔は命を言い放つと夕鈴を大切そうに抱き直して、寝室へと消えて行った。
それから部屋中はごった返したように慌ただしくなり、侍医達に加え侍女達も揃えられたのだった。

「陛下・・・・・宜しいでしょうか?」

帳の外から、侍医達が揃った様で様子を窺ってくる。

「揃ったようだな。では妃を頼む。」

その言で侍医達が入ってきて診察を始めたので、
黎翔は傍の壁際まで退いてその様子をジッと見守っていた。

「陛下、お妃さまはもう大丈夫でございます。
お気づきに為られたことでお命の危険も無くなりましたから、ご安心ください。」

黎翔の気持ちを慮って、侍医長が安心させるように言葉を紡ぐ。
そこでようやく張りつめていたものが緩んだように、黎翔は大きく深呼吸をした。

「では、我々は下がります。また早朝に窺わせて戴きます。
何かありましたら、控えの間にてこの者を待機させますので、
直ぐにお呼び下さい。
あと、お妃さまにはぐっすりお休みいただけますように薬を処方致しておりますので、朝までは目をお覚ましにはなられないと思います。
では・・・。」

伝える事だけハッキリと言うと、侍医達は若手の侍医を残して早々に辞して行った。
二人きりとなった寝室・・・・・先程の喧騒がうそみたいに、夕鈴の規則正しい寝息だけが聞こえてくる。
寝台の傍に椅子を運んで腰かけると、夕鈴の寝顔をジッと見詰めていた。

頬には先程と違いホンノリと赤みが刺し、生気が満ち溢れている。
その頬に手を添えてゆっくりと擦ると安心感が胸の奥で広がり、急に眠気が襲ってきた。

「ふぁ~~~~~~夕鈴、お邪魔するね。」

大きく欠伸をするとそのまま布団に滑り込み、夕鈴の隣りで眠りについた。
やっと安心して眠ることが出来る・・・その幸せを黎翔は微睡みの中で感じていた。


朝日の眩い光りが窓から差し込み、新しい一日の始まりが訪れる。
昨晩の事がウソみたいに、穏やかで暖かい陽の光・・・・その光を身体に取り込み、目を覚ました。
黎翔は隣りで寝息を立ててまだ眠っている夕鈴を起こさない様に、長い金茶の柔らかい髪を撫でてみた。

もう大丈夫だな。
昨日はどうなる事かと思ったが・・・・。

「うぅ~~ん。」
「夕鈴?起きたの?」
「え・・・・・へいか?・・・・」

未だ処方された薬が切れていないらしく、まどろみ潤んだ瞳は焦点が合っていない。
どうやら僕の姿をキチンと把握していない様だ。

「夕鈴、まだ休んでいていいよ。僕は李順のとこに行ってくるけど、また戻ってくるからね。」

夕鈴はボーとした眼差しで見ていたが、段々シッカリと僕を見据えていた。
そして目つきがジトッとしたモノに変わる。
これは、そう寛いでいる僕に無言の抗議をしているようだ。

もしかして、この状況を理解してきた?

「あの、陛下・・・一つ質問してもイイですか?」
「いいよ。僕が答えられる事ならね。」

昨晩、生死を彷徨っていたとは思えない回復ぶり・・・ここはシレ~としているに限るよね。

「あの・・・・では、どうして陛下が今時分に私の寝室にいて、
何故床を同じくしているんでしょう?」
「どうしてか?と僕に問うの?」
「はい。」
「その訳はたった一つしかないよ。夕鈴が心配だったから。」
「それは、どういうことで?」

夕鈴の質問攻めは続く。
だったら、ここで話題をスリ変えておこう。

「夕鈴は覚えてる?賊の放った手刀が夕鈴の背に命中して、怪我をした事?」
「あっ、何となく・・・・・背中が焼けるように痛いと思ったところまでは覚えていて。
その後、陛下に何かお願いした様な・・・。」

「そうだよ!!夕鈴は自分を襲った賊の命乞いをして・・・・。」
「なんだかボンヤリとそんな言っていたような・・・・あっ!陛下、秀お兄ちゃんは????イッッ~~~~。」

身体を急に起こそうとして夕鈴は背中に激痛を感じて固く目を瞑る。
黎翔も身体を起こし、そっと注意しつつ夕鈴を寝台に横たえた。

「夕鈴、無茶しないで!君は昨晩出血が中々止まらなかった事が原因で、昏睡状態だったのだから。」

黎翔の深紅の瞳は心配そうな色合いで、少し陰っているように見えた。

「ごめんなさい・・・・・でも、秀お兄ちゃんがあの後如何なったのかが気に為って。」

黎翔は、夕鈴に聞こえない様にぼそっと独りごちた。

「妬けるよね、全く・・・・・・董 秀偉だったっけ、大丈夫だよ今のところはね。
色々と事情は聞かないといけないから拘束はしているけど、手荒な事はしていない。」
「そうですか」

夕鈴もそれ以上は聞かなかった。
陛下を弑逆しようとした賊の仲間だったのだから、ただでは済まないだろうということくらいは想像できる。
でも、何処かで許して貰えないのだろうかという淡い期待もあるのだが、
自分がそれを陛下に懇願するのは筋違いなのだと思った。
だからこれ以上は言わないし、聞かない事にしたのだ。

そこで夕鈴は先程の質問の答えを陛下から貰ってないことを思い出した。

「陛下・・・答えは?」
「何の?」
「だから、何故、今も同じお布団に陛下がいるのでしょうか?」
「・・・・さっきも言ったけど、心配だったから・・・。」
「それは先程聞きましたが・・・・。」

黎翔は黙り込んでしまい、夕鈴に切なげな瞳を見せる。
何故?僕が心配して居ても立ってもいられなかった事が解らないんだと云う悲痛な眼差しが夕鈴を射ぬいた。

「解りました・・・・・・・今日の所は、それでイイとします。」
「じゃあ、李順の所に行ってくるから・・・シッカリと休んでいるんだよ。」

寝台から降り立つと、そのまま身を乗り出して前髪が分かれて露わになっている夕鈴のおでこに優しく口付けた。
途端、真っ赤になってそっぽを向いてしまった夕鈴の背中を愛おしそうに見詰めながら、黎翔は夕鈴が生きていてくれた喜びを感じていた。
そして一言、夕鈴に告げた。

「夕鈴・・・後で大切な話があるから・・・。」

そうして寝室を後にすると、居間で控えていた侍女に後を託し部屋を出て行った。
残された夕鈴は、口付けられたおでこを手で押さえながら、真っ赤になった頬を鎮めようとしていた。




続。
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コメント
この記事へのコメント
こんばんわ^^
今日はごめんなさいね~。
明日は必ず!大丈夫ですから~♪楽しみにしてる~^^
大事な話があるから・・・・ん、まっ。なんて素敵な響き。
そんな大事な話をされたのはウン十年前の私。今は老後の話・・いやー!(笑)
今年結婚20年目。身内だけの結婚20周年記念日パーティでもしようか?なんて話してるけど開催できるかは甚だ疑問ですけど(笑)
重なってることが多々ありますからね~。
ではではまたあしたー!
2015/01/14(水) 21:43:07 | URL | ママ #-[ 編集]
ママ様
こんばんわ~コメント有難うございます
イエイエ、お忙しい時に失礼いたしましたです!!
明日は楽しみにしてるね~~
今からウキウキ!!!
やっと続きUpしました。
中々出来なくて・・・・。
やっぱりそのままは掲載できなくて、少しだけ手直しするから
時間があるときにしかUP出来なくて。
ボチボチ更新でごめんなさい~~
さてと、マァマ今年結婚20周年なの??
それは素敵ですよね~~
旦那様からはプレゼントはあるのかしら??
ウチは10周年の時に、旦那にスィート10を無理矢理プレゼントさせました。
旦那はかなり渋ってましたけど・・・・。
身内でパーティはいいですよね!!
実現することをお祈りしてます。
それでは、明日ね~~
おやすみなさい~~
2015/01/14(水) 23:38:09 | URL | 瓔悠 #-[ 編集]
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