【意味などとしての水入らず・7】
2014年11月09日 (日) | 編集 |
【設定】

臨時妃 ・ 原作寄り ・ オリキャラ有り ・ 原作外設定有り




 

慌てて飛び出た店の外は、騒然としていた。
悲鳴をあげた女性は輪の中心で、見れば見るほどガラの悪いガタイのデカイ男性に手頸を掴まれ、引き上げられていた。
それを取り巻きが周りを囲み、チャチャを入れていた。

「おい、俺たちから逃げられると思うなよ。」
「お前はな、この笹亥さんのものになるんだよ。有り難く思うんだな。」
「ヒューヒュー、羨ましいぜ!!」
「可愛がってもらえよ!!」

口々に囃し立てる取り巻き達は、二人だけでなく周りで遠巻きに見ている人たちにまでおよんでくる。

「おら、何見てんだ!!早くどっか行っちまえ!!」
「誰も呼びにいくんじゃないぞ!!これはレンアイ関係の縺れだけだからな。役人でも呼びに行こうもんなら、お前らまでギタギタにするんだからな。」
「そうだぞ!!おらおら!!」

厭らしい言い様に周りで見ている人垣の中には誰一人として、助けようとする男儀のある人物は出て来ない。
誰もが、ただその女性は気の毒だとは思うものの、助けに入るのは腰が引けているらしい。

夕鈴は確認すると、直ぐにその人垣を掻き分け輪の中心にズンズンと入っていく。
そして自らの横暴さを周りに見せつけている男性に、大きな声で一喝する。

「ちょっと!!何してんのよ!嫌がっているじゃない、離しなさいよ!!」
「あぁん?外野は黙ってろ!!」

―――夕鈴、正義感旺盛なのは良いのだけど君に危険が及ぶのは感心しないから、何か有ればあの男性は僕が退場させるからね。

黎翔はハラハラしながら、夕鈴の傍で成り行きを見守っていた。

「ねぇ、恥ずかしいとは思わないの?大のオトコが往来で女性に乱暴なことをして!!」
「うっせーな、このアマ、いい加減にしやがれ!!」

その男性は手頸を掴んでいた手を乱暴に離し、その女性を払いのけた。
そこでやっと自由になった女性は、転がるように逃げて行ったのだった。

男性は逃げて行った女性を舌打ちしながら睨みつけたが、逃げた女には用は無いと今度は夕鈴に対峙して鋭い目つきを向けていた。

「おい!!お前のせいで逃げられたじゃねーか!!どうしてくれるんだよ!!」
「そんな事知らないわ!!女性にあんなことしておいて謝るどころか悪態をつくの?女性に済まない事をしたって自覚も無いのね。」
「いい加減、その減らず口を閉じやがれ!!」

男性は金切り声をあげて、目の前に仁王立ちしている夕鈴目がけて拳を振り上げる。
そしてそのまま拳が夕鈴に_________________________届く事はなかった。

寸での所で黎翔が二人の間に素早く入り、剣の鞘で相手の拳を止めたからだった。

「あぁん?お前、邪魔立てするのか?」
「邪魔立て?女性に手をあげるとは見下げたヤツだな。しかも私の大切な女性に手をあげようとしたのだから、それ相応の覚悟は出来ているのだろうな。」

黎翔はそのまま鞘からキラリと光る剣を抜きにかかる。
それを見た男性は、一人では対応できないと感じ、周りの取り巻きに号令を発する。

「おい、お前ら!この気障な男をぶちのめせ!!」
「へい!!」
「ほい!!」
「おらおら!!」

瞬く間に、1人から10人程度が一斉に黎翔に襲いかかってくる。

―――危ない!!

夕鈴が顔を覆い、目を閉じている間に黎翔は身体を左右に軽く傾けながらかわし、10人がかりでも誰一人として黎翔の身体に触れられるものはいなかった。
しかしそれでも男達は戦意を喪失しておらず、更に血走った目で襲いかかってくる。
それを夕鈴は間近で見ているものだから驚いてしまい、邪魔になるから避けようと思っても身動きが取れなくなる。

「夕鈴さん、とばっちり受けない様に端っこに行ってた方がいいよ。」
「悠さま?」
「僕も加勢に入るからさ!!見ててよ。」

悠はニッコリ笑いながら片目を瞑ると、夕鈴の背中をそっと添えて道の端っこに誘導する。
それに促され、夕鈴もようやく足が動いたのだった。

そして夕鈴を安全な所に立たせ、悠は嬉々として黎翔の加勢に入ったのだった。

「何処のどなたかは存じませんが、私も加勢させて頂きます。」

その一言で悠は黎翔と背中合わせとなり、襲いかかってくるチンピラの集団を薙ぎ払う。
そして確実に急所を叩きのめし一人一人を動けなくするまで、それこそわずかな時間だった。
周りに屯っている群衆は喧嘩などではなく、何かの華麗な見世物の様で観客となっていた。

「お、覚えておけよ!!!」

お決まりの文句でチンピラ集団はお互いをかばいながら、それこそそそくさと逃げて行った。

「夕鈴、大丈夫か。」
「夕鈴さん、大丈夫ですか。」

二人の男性の言葉が重なり、同時に一人の女性の方を向いていた。

「??」
「!☆?」

その声掛けにお互い向き合い・・・文字通り、言葉が出なくなった。

さもあろう・・・お互い、こんな所で合う筈のない間柄であるのだから_______。
二人はどちらかが声を掛けるまでは・・・と押黙っており、視線を離せず突っ立ったままだった。
其処にこの事態を打破出来る人物がオズオズと近寄って来た_____夕鈴である。

「お二人とも大丈夫でしたか??」
「「大丈夫」」

夕鈴の声かけに二人の言がピタリと重なる。

「え~~~と、あの助けてくださって有難うございます、悠様・李翔さん。」
「李翔?」
「悠?」
「「えっ、誰?」」

二人のやり取りに口がアングリと開く夕鈴。
頭の中には『??』マークが溢れかえりそうに為っており、何が何だか訳が判らない。

それはそうである________夕鈴には二人が知己の間柄で有るとは思わないのだから・・・・。

「あの・・・・・・・・・御二人はもしかしてお知り合いとか???」
「いえ、自分の知り合いとは名前が違いますし、こんな所にいる筈も有りませんから・・・他人の空似でしょう。」

まず、否定したのは悠であった。

まさか狼陛下と異名を持つ、珀 黎翔陛下がこんな所に居るはずもないし、こんなに人懐っこい表情をする筈なんてないから。

「そうだね・・・・僕も似ている人は知っているけど、まさか客人がこんなところに居るはずもないし。」

黎翔までも否定する。

そこで夕鈴はピンときた________この二人は知り合いだ!!それを上手く誤魔化そうとしているのだと。

「あの・・・・・こんなところで立ち話もなんですから、もし宜しければ、我が家に来ませんか?狭いところですが、人の耳も有りませんし。」
「そうだね、久し振りに夕鈴の家に行きたいな。」
「良いのですか?夕鈴さん。」
「はい、どうせ父は遅くならないと戻りませんし、弟は良く出来た弟なので、大丈夫ですよ。」

夕鈴は、暗に秘密は外には漏れないと云っているのある。
それを察した悠は、夕鈴の申し出を受け入れることとした。

「では、お伺いさせて頂きます。」
「はい、ではどうぞ。」

奇妙な取り合わせの三人が連れ立って下町を闊歩しているのを見つけた狼陛下付きの隠密が・・・・・そう、浩大は密かに『これは結構面白いことになりそうだな』と呟いた言葉は、風に解けていき誰にも聞かれる事は無かった。


続。
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