【そして一つの可能性・10】
2014年12月12日 (金) | 編集 |
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臨時妃 ・ 原作寄り ・ オリキャラ有り












「・・・・・・秀・・・・おにい・・・・・・」

ハッと我に返り、云い掛けたのを自分の手を口元に当てて云い止めた。

嘘だ、そんな事ある筈が無い!!
・・・・・なんでこんなところにいるのよ。
どうして??

暗闇から出て来た人物がまさか自分の知人であろう筈がない・・・夕鈴は必死で打ち消そうとしていた。
でも頭の片隅では、危険信号がチカチカしている。
ここにいるのは、不当に王宮に入り込んだ賊の仲間なのだと。
そして目の前まで来た第3の人物も、目を丸くして夕鈴をジッと見据えていた。

「夕鈴ちゃん?なの???」

自分の瞳に映っている人は、自分が知っている可愛い幼馴染であろうはずがないと。

「「どうして??」」

疑問に思う二人の言が一つに重なった。
静かな沈黙が、その場の空気に溶け込んで流れていく。
それを打ち破ったのは、最初に夕鈴が対峙していた賊の一人であった。

「早く連れて行かないと、酷い目に遭わされますよ。何しろあの人は気が短いのだから。」
「いや、いい・・・ここは自分がどうにかするから、脇で見張っていてくれ。
女人に手を上げるのは、いささか気が進まないからな。」
「そうすか・・・じゃあ、任せましたよ。」

そう云うと、もう一人の男と共に脇にある柱の影に移動した。
そして、対峙した夕鈴にゆっくりと話しかけてきた。

「どうして夕鈴ちゃんが綺麗な服を着て、後宮にいるの??」

バレた???私が仮だけど陛下の妃である事が。
何か云わないと、不信に思われるよね。

「あの、これは・・・。」
「わかったよ!!これは陛下からか、本物のお妃からの命令かい?
ただの掃除婦の夕鈴ちゃんを囮に、身代わりにしようと・・・酷過ぎるよ。」

いえ、これは違うんです!!!
身代わりではなく、私が狼陛下の唯一の妃(仮)なんです!!

こんな風にハッキリ云えればどんなにスッキリとしただろう。
でも秘密をワザワザ教える必要は何処にもない。

「いや・・・・・・それよりも何故?秀お兄ちゃんが此処にいるの?」
「何故って???そんなのは決っているよ。
珀 黎翔陛下を弑逆するんだよ。」
「えっ????何て云ったの?」
「だから、陛下を暗殺するんだよ・・・・。」
「どうして??」
「それは・・・・・・・・話せば長くなるから。
夕鈴ちゃん、ここは危ないから早く身代わりなんて辞めて逃げなよ。
もうすぐきっと陛下も来るだろうから。」

夕鈴はもう何が何だか判らなくなってきた。

一体陛下が何をしたって言うの?
どうして暗殺なんてしないといけないの?
どうして優しい秀お兄ちゃんがこんな恐ろしい事に加担しているの?
そしてあの先日逢った時の優しい笑顔は嘘だったの??

夕鈴の疑問は大きく膨れ上がり、今にも破裂してそのまま溢れかえりそうになっていた。
へたり込んだまま、もう身動き出来ない夕鈴に秀偉が手を差し伸べようとしたその時。

「私の妃をどうしようと云うのだ。」

明らかに怒気を露わにした黎翔が、二人の視線の先に現れたのであった。

「陛下・・・・・・・・。」

夕鈴は秀偉の手を振り払って傍に近寄ろうとした矢先、
脇に控えていた男二人が駆け寄り腕を掴まれ阻止されてしまった。

「おっと、いけないよ。勝手をしちゃあならないよ。」
「アンタは大事な人質になるんだからさ。」

腕を掴まれ自由を失った夕鈴はそれでも足で相手を蹴り上げて逃げようと応戦する。
だが自分よりも背の高い男性二人が相手なのだから、太刀打ち出来るはずもない。

「もう離して!!あなた達の人質なんてなりたくないわよ。
いい加減にしなさいよ!!」

夕鈴は身体の自由は奪われていてもまだ戦意は衰えておらず、今度は口で応戦する。

「あ~~うるさい女だな。」

男は夕鈴の腕を更に締めあげようとする。
それをジワリジワリと距離を縮めてきている黎翔が、男たちに警告する。

「いい加減に離してもらおうか、お前たちの様な薄汚い手で触れていい筈はないだろうが!その腕を切り離してもいいのか!!」

瞳がいつもよりも深紅に血走っており、このまま行くと此処にいる者はどうなるのか判ったものではない。
でも黎翔は自分が下手に動けば、夕鈴が傷つけられるだろうと予想ができ動く事が出来ないでいた。

「陛下、私は大丈夫ですから。」

一応夕鈴はこれ以上黎翔を刺激しないように、やんわりと宥めてみた。

「大丈夫???そんな筈はなかろう。」

もう黎翔は相手を切りつける事を確定としているらしく、夕鈴の取りなしも聞き入れられそうになかった。
その三者のやり取りを静かに見ていた秀偉は灯篭の明かりに映し出された黎翔の顔が、先日下町に現れた夕鈴の上司だとようやく気が付いたのあった。

「あの時の男が陛下だって??だったら夕鈴ちゃんは・・・」

秀偉は驚きを隠せずに、夕鈴にフラフラと近づくと男2人に腕を離すように促した。
そして夕鈴の目の前に立った。
夕鈴に事情を聞こうとしたその瞬間、回廊の外から低い中年の男の怒鳴り声が届く。

「おい、何をもたもたしているんだ。早く陛下に目にモノを見せてやるんだ。」

そのまま柱の陰から手刀が次々と黎翔目がけて飛んできた。

「先程の者か!」

黎翔は持っていた剣で次々と払い落す。
しかしいくら払い落しても手刀は次々に飛んでくる。

その内、相手も疲れてきたのかコントロールが定まらなくなってきた様で、四方八方に飛んでくるようになっていた。

「おい、隠れてないで姿を表わせ!!私を倒すのが目的なのだろう。」

黎翔はまだ余裕があるのか、応戦しながら相手をおびき寄せようと挑発していた。
夕鈴は秀偉によって身を屈まされ、手刀が飛んで来ない位置に静かに移動していた。

そして_________黎翔が剣で払って飛ばされた手刀が、
運悪く秀偉と夕鈴の所に飛んできた。

秀偉が除け損ねてその手刀に心臓を貫かれようとした時、
夕鈴は咄嗟に背中を向け秀偉を押しのけた。


グサッ!!!!

鈍い音がした瞬間、飛んできた手刀が夕鈴の背中を貫いた。
それはスローモーションのようであった・・・・背中に手刀を受けた夕鈴の身体がぐらりと倒れ伏したのは。

「夕鈴!!」
「夕鈴ちゃん!!」

逼迫した二つの叫びが回廊中を包み込む。

黎翔は直ぐにでも夕鈴の傍に行きたいのだが、未だ賊と交戦中であり思う様に近づけない。
その間、夕鈴の傍にいるのは賊の仲間だ。

そんな輩に夕鈴を渡せない。
渡せるものか。

黎翔の想いは熾烈な剣捌きとなって賊を凌駕していき、
次第に相手が投げてくる手刀は数と勢いが衰えていく。

「うぐっ、離せーーーーー。」

手刀の猛攻が無くなると、直ぐに男の低いうめき声が柱の物陰から聞こえてきた。
浩大によって、後ろ手を締めあげられた主犯格とみられる男が回廊に引きずり出されてきた。
そして他も隠密も駆け付け、そこに座り込んでいる賊の下っ端二人を縛り上げた。

黎翔はそれを確認すると、もう終ったのだと剣を素早く鞘に納め夕鈴の元に走り込む。
倒れ込んだ夕鈴の傍には秀偉が付いていたがそれが秀偉だとは気付く余裕もなく、
強引に夕鈴を奪い取りそっと抱き締めた。

「夕鈴!!シッカリしろ!!夕鈴。」

夕鈴の背に刺さった手刀の周りからは血が流れだしている。
深手ではありそうだが、致命傷ではない様だ。
ホッと一息ついたが早く手当てしないと、下手をすると取り返しのつかないことになる。

直ぐに判断した黎翔は、その辺りにいるであろう隠密に命令を飛ばす。

「早く侍医を!!!」

その命で一人の隠密が素早く従い、飛ぶように消え去った。

「夕鈴・・・・夕鈴・・・お願いだから目を開けて。」

悲痛な声が木魂する。
その声を受けて、浩大に拘束されている賊が大声で笑い出した。

「あはははは~~狼陛下と言えども、ざぁまねぇな!!!
女一人に心を奪われているのか?」

夕鈴を静かに横たえると、ゆらりと立ち上がり鞘から剣をすばやく抜き賊にかざす。
紅き瞳に明確な殺意を込めて、言葉を発した賊を見据える。

「お前は、今ここで私が直々に始末してやろう。」

静かに宣言すると、相手に向かって走り込もうとした矢先―――か細い声が黎翔の耳にハッキリと聞こえた。

「へい・・・・か・・・・・ダメ・・・・・で・・・・・す。ころして・・・・・・は・・・だめ・・・・・です。」

それは、微かに目を開けた夕鈴の懇願する声であった。

「夕鈴っっ!!こいつは君を傷つけた元凶なんだぞ!!」
「それ・・・・でも・・・・・・・ダメ・・・・・・で・・・す・・・。」

擦れた声で必死に止める夕鈴に抗って、目の前でこの賊を惨殺する訳にはいかなかった。

後で、ゆっくりと・・・・・・だな。

ギリッと奥歯を噛み締めて、黎翔はシブシブ剣を鞘に納めた。
しかしこの男達をこれ以上見ている忍耐力は持ち合わせておらず、
浩大に目で合図しそのまま地下牢へと引っ立てて行かせたのだった。

そして回廊に残ったのは、横たわった夕鈴と黎翔・・・・・・・そして、夕鈴を心配そうに見詰める秀偉だった。


黎翔は肩で息をしている夕鈴の傍で両膝をつき、夕鈴の頭を膝上にそっと乗せた。
それ以上為す術のない黎翔は、ただ茶色の髪を優しく撫でて語りかけるだけだった。

「夕鈴、もう少しの辛抱だから・・・直ぐに侍医が来るからそれまで頑張ってくれ。」

夕鈴はうつらうつらし始め、そのまま黎翔の膝の上で意識を手放そうとしている。

「夕鈴!!夕鈴!!!目を閉じないでくれ。」
「は・・・・・・・い。」

黎翔は必死に呼びかけ、夕鈴の意識を保たせようとする。
しかし、夕鈴も疲れ切ったのか・・・・・・呼びかけに返事はしたものの、そのまま目を閉じてしまった。

「夕鈴!!!ゆうりん!夕鈴・・・・・」

意識を失った夕鈴に危機感を覚え、黎翔は尚も呼び続けていた。
そこに侍医がハァハァ息を切らしながら、駆け付けたのであった。

「陛下・・・・・・・お妃様が負傷なされたとのことで・・・・・・直ぐに診ましょう。」
「ああ、直ぐに頼む。」

侍医の見立てでは、今の処は命には別条はないだろうという見解だった。
正し、意識が戻ればという条件付きではあったが。

直ぐにでも部屋に連れていきたいが夕鈴の背中の手刀はまだ刺さったままであり、
まずはそれを抜いてからということになり、黎翔が夕鈴の身体をシッカリと抱きとめて侍医に合図した。

「失礼いたします。」

侍医は小刀の柄をシッカリと握り、ジワジワと抜いていった。
抜き取られた傷跡から鮮血が、夕鈴の衣裳を赤く染めていく。
夕鈴の身体が大きく震え、かなりの痛覚が刺激された様だった。
一瞬意識が戻った様にも見え黎翔が優しく呼びかけてみたが、ハッキリと意識が戻る事は無くまた黎翔の腕の中でクタリとしてしまった。

傷口辺りの衣裳を切り裂きガーゼをあてがい取り敢えずの応急手当てを施すと、
あとは後宮に運ぶとなり黎翔が静かに抱き上げたのだった。

そこで初めて、侍医の他に秀偉が控えていた事に気が付いたのだった。
黎翔に恭順の意を表す為に秀偉は頭を下げたまま、膝を折って跪いていたのだった。

「お前はたしか・・・・・・・董 秀偉だったな。どうしてお前が此処にいるのだ。
いや、此処にいたのは賊だったはず!!
ではお前は・・・・まぁ今は夕鈴が先だ、浩大!!」

もう戻って来て様子を窺っているだろう隠密の名を呼ぶ。
空気が震え何処からとなく現れた浩大は頭を垂れ静かに黎翔の前に跪く。
今の状況ではいつもの軽口も叩けないでいた。

「浩大!この男を拘束しておけ。後でゆっくりと聞きたい事があるからな。」
「了解!」

短く返事をすると秀偉の腕を掴んで、連れて行ったのだった。
秀偉も抗う事無く、浩大にその身を預けたのであった。

浩大に連れて行かれながらも、秀偉は後ろ髪を引かれるように振り返って夕鈴の様子を見る。

「夕鈴ちゃん、死なないで・・・。」

自分が何か出来るわけではないことは重々承知しており、ただただ小さく呟いたのであった。





続。
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コメント
この記事へのコメント
No title
死なないで・・・・夕鈴。
へいか・・こうなる前に気持ちは伝えないとダメですよ・・・。
後悔先に立たず・・です。
よゆりーん!!!今日はありがとう!!
あとさぁ・・・ごめん。
ワッフルたい焼きって言ったけど、クロワッサンたい焼きでしたー。
生地がワッフルとクロワッサンで違うけど、大丈夫かな?
ごめんね~言い間違いしました(-_-;)
楽しみにしておいてくださーい!!(=^・^=)
2014/12/12(金) 13:05:38 | URL | ママ #-[ 編集]
ママ様
こんばんわ~~コメント有難うございます
うふふ、返信いきますよ~~
さぁ、佳境への入り口です。
この先は~~~~~~~ですよね。
陛下!!頑張ろうよ~~
夕鈴が居なくなってからではすべてが遅いのですよ!!!と云ってあげたいもんです。
まぁ、この先の展開は知っていると思うけど・・・・
この先変えちゃおうか~~
するとドキドキ2倍だよん~~
(今はする暇はないか・・・・・残念!!)
そして、今日はこちらこそお付き合い有難うございました~~
楽しかったよ~~~もう悶々としていたものがスッキリしたもんっっ。
ワッフルもクロワッサンも大好き~~~~だから全然OKなの!!
嬉しくって楽しみだよ~~
こちらでも、福岡の美味しいお菓子見繕っておくからね~~
一つ候補はあるんだぁ~~~
それでは、本当に今日は有難うございましたっっ!!!!
2014/12/13(土) 02:03:09 | URL | 瓔悠 #-[ 編集]
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