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【約束は、叶える為にある・3】

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夫婦設定 ・ 原作寄り 






そう、あれは――――。
下町に帰して、少し経っての事だった。
兎に角、早く記憶を取り戻させたくて・・・。
自分の焦りが引き起こした事。

予想もしなかった。
まさか自分が、夕鈴の瞳に気圧されるだなんて。
『狼陛下』とか言われている自分が、
恋した相手に対して何も出来無くなるなんて思わなかった。


その日、政務を何とか片づけて、夕鈴の様子見に行った。
下町に帰してからは、浩大に張らせている。
何か、事が起こってはいけないから。
でも、李順は言う―――『あそこは、お妃様の実家であり、
更には誰も夕鈴殿がお妃様である事は知らないのですから、
危害を加えられるなんて事は万が一にもありませんよ』と。

しかし自分の唯一の花がもし危険な目に遭ったりでもしたら・・・と考えると、
万全を期してしまうのは仕方が無い事だろう。

漸く、夕鈴に逢える。
それだけで、浮かれていたのだと思う。
だからすっかりと忘れていたのだ、記憶が無いという事を。

訪ねて行った玄関先で変わらぬ姿を見て、思わず口元が綻ぶ。

「夕鈴っっ!!ようやく逢いに来れたんだ。
君がいないのは、太陽の光が雲間に隠れているようだよ。
今すぐにこのまま連れて帰りたいよ」

久々に会う目の前の夕鈴を、愛しさの余り我慢出来ずに抱きしめたのだ。

「放してくださいっっ!!一体あなたは誰なんですか?
私に何の用なのっ!!放さないと大声で人を呼びますよ!!」

僕の腕の中に囲われた身体を抜け出そうとして精一杯捩りながら、
キッと睨みを効かせる薄茶の双眸。
僕の事なんて、見た事も無い様な視線を向けてきた。
そこで、はたと思い出した。
そうだった、夕鈴には僕の記憶が無いの・・・・・だったんだ。

怯えからくる怒り。
そんなものを夕鈴から感じて、僕はパッと腕から開放してやった。
すると夕鈴はすぐさま4、5歩後退り、僕から距離を取って自分自身の身体を抱きしめていた。

そんなに、怖かったのだろうか―――。
言い知れぬ虚脱感が、身体を走り抜けた。


「ごめんね・・・久々に逢えたのが嬉しくて、思わず抱きしめてしまったんだ」
「・・・・・・そう・・・・なんですね。
分かりました・・・でも、もうしないで下さい。
私はあなたが誰なのかも分かりませんし・・・・」
「そうだったね、僕は李翔と言うんだ」
「李翔さん、ですか・・・・・・スミマセン、私と関係がある人なんですよね?」
「勿論だよ」

う~~んと唸りながら、夕鈴は考えている。
けれど全く思い出す気配もなく、コテンと首を傾げてしまった。

「いいんだよ、ゆっくりと思い出してくれればいいんだから」
「はぁ・・・・・・そうですね。それで、私に何か用だったんですか?」
「いや、用って程の事ではないのだけど」

言えなかった、ただ逢いたくて来たのだという事を。
これ以上、怯えさせる訳にはいかないから。

微妙に流れる、何とも言えない空気。
玄関の外から聞こえてくる下町の喧騒だけが、耳に入ってくる。

何か言わねば。
でなければ、きっと夕鈴は家の中に入ってしまう。
そうなれば、もう出て来ることは無いだろう。

何でもいいから。
何か話題を。

「今、どうしているの?」
「今って?」
「ああ、何をして過ごしているのかなと思って」

そんな事は知っている。
浩大から毎日報告を受けているのだから。
でもそれでも。
会話が出来れば、ここに居る理由になる。

「・・・・言わないといけませんか?
知らない人に」
「っっ」

絶句した。
二の句が継げぬとは、こういうことだ。

「そうだね、確かに」
「ですよね。で、ご用は何ですか?」
「いいんだ、君が健やかでいるのなら」
「ありがとうございます」

夕鈴はニッコリと微笑んで、僕を真っすぐに見ていた。
でもその瞳に映る僕は、夫ではない唯の他人。

もうこれ以上、何も言えなくて。
一言だけ。

「失礼するよ」
「はい、さようなら」

夕鈴は、ゆっくりと一礼をした。
その礼は、李順から仕込まれた妃然とした優雅なモノだった。



続く。






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ますたぬ様


おはようございます~~コメント有り難うございます


1から読み返しされたんだぁ~~ありがとうございますっっ!
私も書くに当たって読み返したけど、いやぁ~どうなるんだろう?って思った。
(そう、展開と終着点を忘れているとも言う・・・ははは)

しかし、今回の話は書きながら『へ~か、かわいそ』とか思っちゃいました。
酷いよね、作者・・・・って私じゃん。
陛下が気の毒なんで、早目に続き書くことにします。

ホント、昨日ようやく色んな方のブログ回りをしてビックリ!!しました。
閉めてる方も多くて。
何かあったのかな??と心配になりました。
夏の間、私も放置だったから何も言えないけど。


そして表紙のサンプル、コチラにUPしてみました。
コピー本の分も話を増やして、キチンと作ろうかなぁ~と思いたって。
そうすると、最初の本がもう手元に無いんで再販しようかなぁ~とかも思い出して。
出来るかは分かんないけど、頑張る事にします!!!


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