≪ 2017 07                                                2017 09 ≫
 - - 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 - -


【設定】

夫婦設定 ・ 原作寄り 







こんな事が起こるなんて、思いもしなかった―――。

なぁ~~んて。
そんな事を思うのは、自分の立場では都合が良いのだろう。
いつ何が起こるのか分からないのが『白陽国の狼陛下』と言う立場であって、
それが例え甘受出来ないことであっても平然とした表情で受け入れ無ければならないのだろう。

黎翔は、今日の政務を一気に終わらせたところで天井を見上げる。
折角早く政務を終わらせたって、意味なんて無い。
だって、ここには愛しい人がいないのだから。

「はぁ・・・・・・・・」

吐きたくもないため息が自然と出てくる。

―――ため息を吐くと、幸せが逃げるんですよ。

鈴を鳴らすような声が、耳に届いた気がした。
これは、空耳だ。
黎翔はキチンと理解している。
けれど・・・それは理性が理解していることであって、感情はそれについていけない。

「陛下、今いい?」

遠慮気味に、外窓から声が掛かる。
外に放っている浩大だ。

「ああ」
「今日も、変わりなし・・・・だよ」
「そうか」
「まぁね~~元気に働いてた」
「そうか」
「それで、あの例の金貸し君が甲斐甲斐しく面倒見てくれてるみたい」
「そうか」
「へーか、大丈夫?」
「道具に心配されるとはな、私も落ちたものだな」

自虐めいた言が、黎翔の口から放たれた。
それを浩大は聞こえない振りをしてクルリと黎翔に背を向ける。
そしてそのまま去り際に、一言だけ声を掛ける。

「それじゃあ、また明日」
「ああ」

黎翔は、浩大が消えた後も卓上に肘をついて何をする訳でもなく呆けていた。
今日の分の政務も終わった今、何もする気が起きない。

夕鈴がここから下町に帰って、既に半月。
何も事態が変わらない事に、黎翔は正直イライラしていた。
直ぐに、帰って来てくれると思っていた。
しかし、それはただの幻想であって。
現実はそう甘くは無かった。
未だ、夕鈴は記憶を取り戻す気配もなく。
下町の生活に何の違和感も無く、溶け込んでいるみたいで。


ねぇ、君の夫はここに居るんだよ。
夕鈴は寂しいって思わないのかい?
僕は、夕鈴のいない後宮は見たくないんだ。
だから、そこにはあれから行っていないんだよ。

逢いたいんだ、夕鈴。
君の笑顔が見たい。
君を抱きしめたい。
君の香りを感じたい。


黎翔は再度ため息を吐き出す。
自分が下町まで出向いて夕鈴の記憶を取り戻す為に働き掛けたいけれど。
自らが動くわけにはいかず、ここで浩大の報告を待つだけで・・・・。
それももう限界の域に達しようとしていた。

でも、黎翔は動かない―――いや、動けないのだ。
それには実は理由があった。

それは夕鈴の記憶が無くなって下町に帰して、少ししてからの出来事だった。



続く。











関連記事
スポンサーサイト


このコメントは管理者の承認待ちです
この記事へコメントする















瓔悠

Author:瓔悠

現在の閲覧者数:
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -