【七夕宵の巡り逢い・後編】
2017年07月07日 (金) | 編集 |
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臨時妃 ・ 原作寄り

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前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』からの再録です。









やっと終った祭事にホッとしたのか・・・そのまま自身の腕の中で眠ってしまった夕鈴を、
愛おしそうな眼差しで見詰める黎翔。

「よく頑張ったね、夕鈴」
「そうですね、確かに良くやり遂げたと思いますよ」

傍に歩み出て来た李順が、珍しく夕鈴を褒める。
李順とて、あれだけの書物を渡しただけで、
これほどの出来だとは思ってはなかったのであろう。

「まぁ、七夕祭事なんて・・・所詮、カタチだけ」
「確かにそうですが・・・」
「いつだったかの王が美しい妃を見せびらかしたいがために始めたバカバカしい祭事で、
意味なんて大したことないからな。
確か、建前上は夏の恵みを天より頂くだったか・・・大体、こんなのはこじつけなんだし。
ふん、こんな事に夕鈴は出したくはなかったのだが」

黎翔は大臣たちの視線が気に入らなかった様で、
不機嫌さを隠さず舌打ちまでする始末。

「仕方ないでしょう・・・。
また最近大臣たちによる縁談話が持ち上がりだしたのですから。
ここは、夕鈴殿に祭事でもしていただいて・・・・唯一だと知らしめておかないと」
「ふん、勝手にしろ!!!
まぁ、いいさ・・・これで色々持ちかけてくる愚か者もいなくなるだろうし」

黎翔の腕の中で眠っている間にこんな裏話をされているとは露知らず、
夕鈴は熟睡していた____。

「さて、後の処理は任せておくからな。
私は、夕鈴を後宮まで届けてくる」
「それはよろしいですが、書簡が陛下を待っています故・・・・お早いお戻りを」
「解っている!!」

李順に釘をさされて少し不機嫌になりながらも夕鈴を抱きかかえたままスクッと立ち上がって、
スタスタ大股で祭殿から出ていった。

「いよいよ、暑い夏が始まりますね」

祭殿の外では眩しい太陽が照りつけており、
空を見上げ李順は人知れず溜め息を吐き出した。


***


夕鈴を抱きかかえたまま後宮に戻った黎翔に出迎えた侍女たちは、
何事があったのかと驚愕の表情を一瞬浮かべ拱手した。

「お妃様に・・・・・・・何かございましたか?」

控えめながらも主人である夕鈴を気遣う侍女たち。

「大丈夫、眠っているだけだ」

黎翔は侍女達を安心させるように呟くと、
夕鈴の寝顔に視線を落とす。

「直ぐに寝所を設えます」
「ああ、頼む」

俄かにバタバタ動き出す侍女たち。
直ぐに寝所は整えられ黎翔に設えた旨、報告した。

黎翔は夕鈴の温もりを感じつつ寝室の奥へと入って行った。
夕鈴を寝台にそっと横たわらせ刺さった簪をスルリと抜くと、
結いあげられた薄茶色の髪がハラリと解け寝台に広がる。

黎翔は徐に寝台の端に腰掛け、一房手に取ると自分の口もとに運んだ。
軽く口付けをして静かに手離すと、ハラハラと寝台へ落ちた。

「夕鈴・・・・おやすみ」

起こさないように、一言甘く囁き__________________寝室を後にした。

「妃が起きるまで、このままでよい」
「畏まりました」

後は侍女達に託し、黎翔はそのまま執務室に戻る。





―――ゆらゆらしてる。
すっごく気持ちいい。
そして、この香りは・・・・誰のもの?
とても安心するの。

「ううん・・・・ここは???
って、寝台の上。
なんで???」

上半身を起こしてみて、自分の姿にギョッとする。

「な、なに??このヒラヒラの服!!!
うん?・・・・・いや、待てよ・・・・あっ、思い出した。
今日は祭事だった!!!今から??
いや違う、終ったんだわ。
じゃあ、なんで寝台で寝てるのよ」

この置かれた状況が飲み込めず、ブツブツと自問自答する夕鈴。
しかし、自分が寝ている間の事なんて分かるはずも無く、
侍女たちに聞く事にする。
夕鈴は跳ね起きて寝所から出てみると、侍女さん達の心配げな顔。

「お妃様、大丈夫で御座いますか?」
「ええ・・・・」
「陛下がお妃様を抱きかかえられてお連れになった時は、
お妃さまの身に何事か起きたのかと肝が冷えましたわ」
「陛下が私を・・・・・ですか?」
「はい、それは大事そうに抱きかかえられていらっしゃいましたわ」

その言葉で夕鈴は瞬時に身体中の体温が上昇し、
火照り上がってのぼせそうになる。

あのゆらゆらした感覚は陛下に運ばれていた時のものなんだわ。
そして、あのいい香りは陛下の衣から香ったものだったのね。
それにしても、陛下に運ばれてきたですって?!
どうしよう・・・・・それって結構マズイんじゃないの?
イケナイ!侍女さん達の前だったわ!!此処は平常心!平常心と。

一気にグルグルと考え込んだ夕鈴に、侍女たちは怪訝な表情を見せる。
それを消し去る様に、夕鈴は優美な微笑を見せる。

「夕刻は過ぎてしまって、辺りがもう暗いのですね」
「はい、陛下がそのままで良いと仰られましたので・・・・お起こし致しませんでした。
しかし、随分とお疲れが溜まってらっしゃったようですね。
長く眠られておいででしたので」
「そうですか・・・それは皆さんに心配を掛けてしまった様ですね。
有り難うございます、もう大丈夫です」

その言葉に安堵した様で、直ぐに食事と湯殿の用意を始める侍女たち。
夕鈴は直ぐにでもこの衣装をどうにかしたかったのだが、
昼餉も食してないことからまずはそのまま食事という事になった。


食事を済ませたその後は直ぐにでも湯殿へ・・・とも思ったものの、
折角の七夕の宵であるから少し散歩に出る事にした。
侍女達には一人でいいと供を断り、一人そぞろ歩いてみる。
丁度少し歩いた回廊から少し外れた所にある、小さな川の畔にある四阿に入る。

夜空を見上げると、満天の星が煌めいていて。
競い合う様に星と月の瞬きで、辺りは結構明るい。
夕鈴は侍女に借りうけてきた水盤に川の水を汲み入れた。
そしてある星が反射して見える場所に置いてみる。

そこに映るのは・・・・天上で、一際眩い二つの星。
揺れる水面に映った星はキラキラと瞬き、幻想的な光りを放つ。
その星は、今宵の逢瀬を楽しむ彦星と織姫星。
周りの星を従える様に、優しく瞬いている。

「きれい・・・・・・・・」
「天の星よりも、君の方が美しいと思うのだが」

一人きりの筈なのに、後方から声が掛かり一瞬身構える。
が、それは無用な事で・・・・・・。

「へ、へいか!!!」
「驚かせたようだね、ごめんね。
それより、大丈夫だった?侍女達に聞いたら、随分長く寝ていたみたいだったけど」
「す、すみません!!
あの、その、陛下が運んで下さったみたいで・・・ご迷惑をお掛けしました!」

立ち上がって頭を深々と下げる夕鈴の頭上に感じる視線。
それは・・・・・・・この衣装に視線を向ける黎翔の紅い瞳。

「なっ、なにか・・・?」
「イヤ・・・月の光りに照らさせて映し出された夕鈴の姿が、織姫みたいだなと。
それに折しも今日は七夕だし・・・・もっと見せてよ」

その言葉にガタピシに固まる夕鈴。

しまった~~~~。
起きた時、直ぐにでも着替えておくべきだった!!!

「お見せするほどのものでも・・・・ないです」
「天の織姫は一年に一度の逢瀬の為に、それはそれは着飾るみたいだよ。
それは愛しい夫である彦星の為にね。
だから、夕鈴も夫である僕の為に」
「いや、私たちは・・・・・」

夕鈴は黎翔の言に最後まで言葉を繋げないまま、口を閉ざす。

いや・・・・私達は偽夫婦ですから。
それに織姫と彦星は一年に一度でしょう?
私は陛下にお逢いするのは、一年に一度っきりではないですから・・・・。

「ねぇ、夕鈴・・・見せてよ。
僕にだけにさ」

夕鈴の顔を覗き込んで、低く響く甘い声で誘ってくる。
抗えない・・・・・この声、この瞳には。

「はい・・・・・」

俯いていた顔を上げて、両手を広げて披露する。

「このまま、くるりと回って見せてくれる?」

更に注文をつけてくる。
仕方無いとくるりと回りかけたその時―――。

「あっっ!!」

足元にあった石につまづいて、体勢がよろめき地面に落ちる______________瞬間に、
黎翔の腕の中に納められた。
抱きしめられる形になる。

「キャッ!!」

慌てて離れようとしたが、力強い腕に阻まれ叶わなかった。

「ねぇ、僕の麗しき織姫様。
このままで・・・・・・いて」
「?」
「僕が、星に願いを懸けるまで」

暖かい体温に包まれその衣の香りに誘われ、
夕鈴はそのまま時を止めた。

これっていつか見た様な・・・・・・・・・・そう言えば、夢だった。
それってこの事を差していたの?
あの時の夢って、実は――――。

「ねぇ、夕鈴?」
「はい・・・・・・」
「僕がどんな願いを懸けたと思う?」
「えっ?それは・・・・わかりませんよ」
「それは、ね。
来年も夕鈴と七夕の宵を過ごしたい・・・・と」
「・・・・」

何も答えられなかった。
是とも否とも。

バイトの身で有る以上、いつまでここにいられるかなんて、自分には分からない。
でも、でも私の願いが叶うのならば・・・・・・過ぎた願いで無いというならば、
今宵の星に願いを懸ける。

来年のこの宵は陛下と共に過ごしたい____________________と。


その時・・・・星が一瞬激しく瞬き、闇夜を照らしたのだった。
それは天で瞬く恋人たちが、夕鈴の切なる願いを聞き入れたものだったのか?
それともただの瞬きだったのか?

誰にも分らない。
でも、今宵は七夕。
数多の願いが聞き入れられる奇跡の一夜。
だからこそ、未来は――――きっと。








2013.07.09 ブログ初載




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2017/07/08(土) 20:08:58 | | #[ 編集]
ますたぬ様

こんばんは!
コメント、有り難うございました~
本当に返信が遅くなりまして、申し訳ありません


福岡の朝倉や東峰村の方は、ホントに被害が大きくて。
情報番組やニュースで、今でもかなり取り上げられていまして
早く復興すればいいけれど。。。と見るたびに思います。



七夕ネタは、今年は少なかったみたいですね~~
私は再録だったので、何とかUp出来ましたけれど。
楽しんでいただけたようで、良かったです~~~。

陛下の独占欲は、臨時妃の時からだと思います!
だから、夕鈴にはあまり着飾らせるのは良しとしなかったかと・・・。
ふふふ、独占欲な陛下は美味しいですよね~~
うまうま。



2017/08/24(木) 17:30:36 | URL | 瓔悠 #-[ 編集]
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