【七夕宵の巡り逢い・前編】
2017年07月07日 (金) | 編集 |
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臨時妃 ・ 原作寄り

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前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』からの再録です。




 

夕鈴はその日後宮立ち入り禁止区域の中でも、
珍しい場所をせっせと掃除に勤しんでいた。

ここは、後宮に収められた書物が一同に介す後宮書庫。
本来ならば、張老師の管理下であるはずだが・・・高齢故に掃除も儘ならないとお願いされた場所である。

一歩内に入ると、其処には沢山の書物。
過去この後宮にいた数多のお妃さまへと寄贈された書物が、ここに並ぶ。
そして此処に有る書物は、寄贈されたお妃さまが後宮を辞する時、
または死した時に此処に集められるのだ。
だから・・・・此処は過去の栄光や威光が集められた特別で特殊な場所。

古い時代からおいてある書物もあり、少しカビ臭く埃がたまっている。
夕鈴は格子窓を開け広げ、埃を落としていく。

そうしていると・・・・・・一冊の書物の背表紙が目に入ってきた。

―――それは、『伝承織女談』と書かれてあった。
このお話は恐らく『七夕』に関するものだろう。
ほんの幼い頃、夏本番前のこの時期に寝物語として母さんからよく聞かされていたが、キチンと書物で読んだ事なんて無かった。

だから、見つけた時には何故か心惹かれた。

「老師、これお借りしてもいいですか?」
「よいがのぉ~~。
ただし、それはただの言い伝えを集めただけのものじゃが」
「それでもいいです」

掃除を素早く済ませると、少し埃被った書物を抱え自室へ。
窓際の椅子に腰かけ、その書物を早速開いてみる。
流麗な文字で書かれてあり、スンナリ読み進められた。

「はぁ~~~、七夕にも色々な言い伝えがあるのね。
でもこれって結構祭事にも通ずる記述があるみたいだけど、
もしかして・・・・・・王宮でも、七夕には祭事が執り行われていたり?」
「当たりだよ、夕鈴」

気がつけば、黎翔が椅子の真後ろに佇んでいた。

「きゃ!す、すみませんっっ!!
陛下がいらしていただなんて・・・気がつきもせず」

夕鈴は慌てて、椅子から立ち上がり礼を取る。

「いいよ。夕鈴、なんだか真剣に読んでいたみたいだったからね」
「すみません」

回りを見渡すと侍女さえも居ない。
きっと黎翔が早々に下げてしまったのだろう。

「こんな時間に陛下がいらっしゃるだなんて、珍しいですね」
「実は、小煩い李順から逃げて来たんだよ」
「逃げて・・・・ですか?」
「まぁね~~だって、『祭事、祭事!!』と煩いから」
「祭事・・・ですか」
「僕がするんじゃないんだけどね」
「陛下では無いのですか?
それって、もしかして・・・私ですか?」
「夕鈴というか、後宮の祭事らしいよ」
「そ、それなら、私が執り行わないといけないんじゃ??」

急に自分に振られてきた事で、夕鈴は目を白黒させて慌てる。
それをみて、黎翔はクックッと笑う。

「あっ、でも安心して。
夕鈴にこれ以上負担はかけたくないから、
そんな祭事は僕が『しない』と言い切ってきたから大丈夫だよ!」
「そう言う訳には、いかないんじゃ・・・・」
「いいんだよ!」


「いい訳がないでしょう~~」

戸口から第3の声が上がる。

「李順さんっっ!」
「見つけましたよ、陛下!!!
陛下が何と言おうと、祭事は執り行いますからね」
「え~~~~。
めんどくさいし、夕鈴にはこれ以上負担はかけられないからさぁ~、
やめておこうよ~~」

黎翔は全くと言ってヤル気なし!とばかりに、
呑気に夕鈴の淹れたお茶を飲み干す。
その様子に、眉間に皺を寄せながら李順は力説した。

「何を言っているんですか!これはれっきとした後宮行事なんですよ!!
今までは後宮に妃がいなかったのだから『しない』で済んでいましたが、
今は夕鈴殿という妃もいるのですから、しない訳にはいかないでしょ」
「はぁ~~~めんどくさいし」

本当に黎翔はヤル気無しで嘆息を吐き出す。
その様子に、更に激怒して眉間に皺を何重も寄せる李順がそこにいた。

「陛下っっ、祭事にめんどくさいもないでしょ!!」

二人のやり取りに口を噤んでいた夕鈴だが、
ここで初めて二人の会話に参戦する。

「あの・・・・李順さん、私はどんなことをすればいいのですか?」
「これは、夕鈴殿。あなたがやってくれるんですね!!」

―――いえ、まだやると言った覚えは有りませんが。

そんな夕鈴の心の声なんて届くはずもなく、
李順は祭事の手順なんかをツトツト説明を始める・・・・。
こうなった李順を止める事なんて、王である黎翔にすら出来っこ無い。
結局、夕鈴は祭事を執り行うことに。
李順はひとしきり説明をして、喜び勇んで『準備が有りますから』とさっさと出て行ってしまった。

「夕鈴、大丈夫そう?」
「・・・・・・・だと、思います」
「僕はする必要はないと思ったんだけど」
「でも、李順さんは必ずするんです!!って感じでしたよ」
「まぁ・・・・それは・・・・・色々とね」

黎翔は奥歯に何か挟まったように口ごもる。

「何か有ったんですか?」
「実はね・・・大臣共が煩いんだよ。
『今年はさぞかし、艶やかな祭事が執り行われるんでしょう』ってさ、騒いでいてね」
「?」

夕鈴はどうして大臣たちが、後宮の一祭事にここまで関心を持っているのかが理解出来なかった。

「まぁ、いいよ。
夕鈴・・・無理しなくてもいいから、気楽にやってよ」

それだけ言うと、黎翔は『政務があるから』と出て行ってしまった。

―――陛下、ホントは何か云いたかったんじゃ・・・・・・。
もしかして祭事って、ものすご~~~く結構大変なんじゃないの??

その夕鈴の予感は____________現実のものへ。

程なくして・・・・王宮女官が李順からのお届モノだと、
両手で抱えきれないくらいの書簡を運んできた。

それには一通の料紙が付いている。
どうやら、李順からのモノである様だ。

『__________お妃様、此方は祭事を執り行うにあたり、読んで戴く書物になります。
熟読為さって下さいます様、お願い致します____________』

―――はぁ?!
なんなの?この書物の山はっっ!!

夕鈴は目の前が暗くなった気がしてきたがこれも妃の役目と諦め、
取り敢えず1冊目に手を伸ばしたのだった。



続く。


2013.07.08 ブログ初載


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