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【設定】

夫婦設定 ・ 原作寄り 




「大好き、です」
「・・・・・・・・・・・・・・・何、それ?」

浩大の突然の言に、夕鈴はポカンと口を開けて問うた。

「何って、愛の告白の言葉だけど?!」
「はぁ」
「・・・『はぁ』は無いんじゃね?」
「だって、今更でしょ」


夕鈴は手を止めずに、そこかしこを掃いていく。
本物の妃になっても今だ続けている、立ち入り禁止区域の掃除バイト。
それは未だ返し切れていない借金返済の為の貴重な財源である。

黎翔に言わせれば、『もう夫婦になったのだから、借金は完済されたも同然』なのらしいが、
『それはそれで、借金は別なのだ』と律儀な夕鈴はキチンとしないと気が済まないのだ。

なので、今は李順のお妃修行の間のわずかな時間を使って掃除バイトをしている。
確かに大変ではあるものの、それは適度に気持ちの切り替えになって夕鈴としても都合がいい。
いつも近くに浩大が張り付いて警護をされながらの掃除で、
こうして自然に浩大と会話をしつつになるのだ。

それで、今日は素直に『愛』を伝える!について談義しているのである。

夫婦なのに、今更そんな言葉を伝えることに意味があるのかしら?
そんな事、恥ずかしくて言える訳無いじゃないの。
お酒にでも酔っているのなら、話は別だけど・・・・・。

夕鈴はダンマリを決め込み、さっさと作業を進めていく。
もう浩大の話には乗らないという意志を見せつける様に。

「お妃ちゃん、これは夫婦円満の秘訣なんだってよ」
「・・・・・・」
「きっとさ、へーかもお妃ちゃんから言われたら、
一日の疲れも吹っ飛ぶと思うんだけどなぁ~~」
「・・・・・・」
「ねぇ、聞いてる?」
「・・・・・・」

完璧に無視を決め込む。
こうなると浩大もお手上げ状態で、それ以上は何も言えず黙り込んだ。

ハハハ・・・・。
へーか、やっぱりお妃ちゃんは手強いよ。
オレでも無理っっ!!

そう、これは実の所・・・・黎翔のささやかな願いで。
恥ずかしがりのお嫁さんから欲しい『愛』の告白。
普段言ってくれないからこその、貴重な言葉。
その言葉を夕鈴から引き出す為に、浩大を一等酒で懐柔したのだ。
しかし黎翔が思うほど、そう簡単にはいかなかった。

そうこうしているうちに、あらかた掃除も終わったらしく夕鈴は水の入った桶を片付け始めた。

「さぁ~~て、今日はここまでにしておくわ。
浩大、今日も護衛ありがとうね。
私、部屋に戻るわ・・・じきに陛下もお戻りでしょうから」

そう言うと、夕鈴は浩大にニッコリと微笑んでその場を後にした。


******


「夕鈴、ただいま~~」
「陛下、お疲れ様でした。
こちらへどうぞ、すぐにお茶の準備を致しますから」

夕鈴は、ゆったりとした微笑みと共に黎翔を招き入れた。
そしていつもの定位置の長椅子へと、黎翔をいざなう。

「ありがとう・・・・・・ところで、夕鈴」
「はい?陛下、どうかしましたか?」
「僕に言いたいことは無い?」
「?」
「いや、いいんだ・・・・今のは忘れて」
「あっ、はい」

夕鈴は首を捻って、考え込む。
今の噛み合わない会話は何なのか?と。
でも陛下は『忘れて』と言ったのだ、きっと大した意味は無いのだろう・・・・。

そう、夕鈴はすっかり忘れていたのだ。
昼間交わした浩大との会話の内容を・・・・。
そうして夕鈴は黎翔にとっておきのお茶を振舞うべく、
手際良くお茶を入れ始めた。

浩大に頼んでいたのに、アイツは役には立たなかったらしいな。
後で締め上げておかないと。

黎翔は腕を組んで、夕鈴には見えない様に苦々しい表情を浮かべる。

『好き』・・・・・だと。
あの可愛い鈴が鳴る様な声で言って欲しい。
『好き』を奏でる、夕鈴の薄桃色の唇が形作るのを見たい―――。
黎翔の純粋な願い。

コトリ。
茶杯が卓上に置かれた音で、黎翔は我に返った。
見上げた先には、頬を染める愛しの夕鈴がいた。
その夕鈴が、恥ずかし気に言葉を紡いできた。

「陛下・・・・・」
「何だい?」
「あの・・・・・・・・」
「うん」
「その・・・・・・」
「どうしたの?夕鈴」
「私、恥ずかしくて・・・・言葉には、出来ないんですけど」

そう言うと、そのまま夕鈴はフワリと黎翔に抱きついてきた。
突然の夕鈴の行為に、黎翔はビックリして深紅の瞳を見開く。

「ゆ、ゆうりん?」

夕鈴は黙ったまま、黎翔の唇にそっと自身の柔らかい唇を乗せた。
恥ずかし気に揺れる薄茶の瞳を瞑って―――。

しばし室内に流れる、静寂の時。
二人の吐息だけが、聴こえてくるだけ。

ゆっくりと離れた唇から、零れ落ちた夕鈴の言。
それは黎翔を驚かせるモノだった。

「あの・・・・・・・陛下、今日もお疲れ様でした。
これは、私からのせめてもの気持ちです」
「夕鈴、ありがとう。
どんな言葉も・・・そう、『好き』の言葉なんて要らないね。
こっちの方が、とても・・・・・とても嬉しいよ」

言葉よりも。
もっと確かな愛情表現。

キス。
それは甘美なご褒美―――。
訪れる一日の終りのご褒美に、
黎翔はただただ心の奥底が暖かくなるのを感じ入っていた。



終。


**************


今日は『キスの日』らしく。
朝、小学校に行くのにエンジンを掛けると
『今日は5月23日、キスの日です』と、
抑揚の無い音声が自家用車のナビから聴こえてきて、
思わずプッと吹き出した私がいました・・・・・。
ハハハ。
今日はキスの日なんだ~~~ふぅん。
何かSSSでも書ければいいなぁ。

そんなかんなで出来たSSSです。


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瓔悠

Author:瓔悠

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