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【設定】

臨時妃 ・ 原作寄り ・ オリキャラ有り 












黎翔が夕鈴に逢いたさ一心で、愛馬の背に跨りこの下町に駆けつけている頃・・・夕鈴は見合い相手の秀偉と共に、下町を散策していた。

「夕鈴ちゃん、いつもこんなに賑わっているの?」

繁華街に来てからというもの、秀お兄ちゃんはキョロキョロを辺りを見回しては驚いてばかりだ。

「え~~と今日は月初めの一日(ついたち)ですから、一の市が立っていていつもよりは賑やかなんですよ。」
「フウン~~~でも昔はなかったよね。いつからなの?」
「そうですね・・・・・これは現在の王様に代替わりをしてから、始められたので結構最近ですよ。」
「ふうん、今の王様がね・・・・。」

秀偉は少し不機嫌そうな声音で返事をしたのち、これ以上は何も聞かずにまた露店に視線を移した。

私、何かイケナイコト、言ったの??

自分の中に疑問は生まれるものの秀お兄ちゃんはもう完全に忘れていて、
他のものに目移りしてしまっていたので、そのままにしておいた。

そして、また2人並んで目的地もないままにそぞろ歩く

「あら、夕鈴ちゃんじゃないのかい?」

後ろから声を掛けてきたのは、いつもお世話になっていた肉屋のおかみさんだ。

「こんにちは。」
「今日は休暇かい?最近は買い物に来てくれないから寂しいよ。
なんだって、あんな王宮なんかに勤めに出てるんだよ。あの恐い狼陛下の所になんざ。」
「いやだわ、おばさん。いつも言ってますけど狼陛下って言ったって、
全く逢いもしないのだから大丈夫だってば!!それに色々な改革も行っていて立派な王様だと思うわよ!!
(あの人は決して怖いだけのヒトではないし、優しいところも寂しがりなところも持っているのよ)」

最後の言葉は心の中だけに押し留めていたが、夕鈴は一生懸命に黎翔への誤解を解こうとしていた。

「そうなんだね・・・まぁ大丈夫ならいいんだけだね。ところでイイ男を連れて・・・これかい?」

親指を立ててニヤニヤ笑うおかみさんに、夕鈴は首を目一杯振りながら『違う』と否定する。

「違うわよ、おばさん・・・・幼馴染の董 秀偉さん。几鍔と同じ歳の・・・・。」
「あ~~~~思い出したよ。董さん家の秀君かい。まぁ立派になったじゃないか!」
「はい、有難うございます。」

秀お兄ちゃんは礼をして、おかみさんに優しく微笑んだ。

「でも、夕鈴ちゃんと二人で何か買い物かい??」
「いえ、親同士の決めたお見合いをしていたんですよ。」
「ちっ、ちょっと、秀お兄ちゃん!!!。」

夕鈴は真っ赤になって、秀偉の背中をポンポンたたく。

「いや~~~いいね。夕鈴ちゃんはいい奥さんに為るだろうから、お買い得だよ。」

おかみさんは片目を瞑って、秀お兄ちゃんを煽るような事を云う。

「ええ、私は求婚したんですが、色良い返事が頂けなくて保留って所なんですよ。」

ニッコリと笑って秀お兄ちゃんまでもが、おかみさんの話に乗ってこんな事を云い出した。

「そうかい・・・・夕鈴ちゃん、女は望まれて結婚するのが一番の幸せだよ。このヒトに決めちゃいなよ。」

全く無責任な事を、おかみさんはポンポン云う。
これには夕鈴も閉口して、もう苦笑いと大きな溜息しか出てこない。


そのとき、真後ろからどす黒いオーラみたいなものがサァ~~~と通り抜けた感じがした後、
誰かの腕が自分の腰に巻きつきそのまま後ろに引きずられて抱きすくめられた。

「誰?」

夕鈴は、咄嗟に叫んだ。

「僕だよ、夕鈴。僕が預かり知らないところで一体誰と歩いているんだろうね。」

なんで、陛下なのよ!!
『夕刻までは此処には来させない』って浩大云っていたじゃないの~~~~。
浩大の嘘つき~~~~~!!!

耳元で囁かれる言葉は、明らかに不機嫌なモノであり自分を責めていると云う事ぐらいはニブチンの夕鈴でも解った。
でもいくらなんでもこんな往来で抱きすくめられているのは、人目もありハッキリ云って勘弁して欲しい。

離してもらおうとジタバタしてみるものの、一向に腕を緩めてくれそうにない。
それどころか絡めた腕は更にきつくなる。

これは明らかに秀偉に対する牽制である。
そこに秀偉が大きな溜息を一つ吐き、呆れ顔で黎翔に対しモノ申す。

「アナタが夕鈴ちゃんのどういった関係の方かは存じませんが、離してあげてもいいのでは?夕鈴ちゃんから聞きましたが、彼女にはイイ人はいないとのこと・・・となると、夕鈴ちゃんを自分の所有物みたいに扱うのはどうかと思いますがね。」

秀お兄ちゃん・・・・この方・・・・国王陛下なんです。
そして私のバイトの・・・・直接ではないけれど、雇い主なんです。

なんてことは云えるはずもなく、夕鈴は固唾を飲んで二人の成り行きをジッと見守る。

「ほう~~~夕鈴がそんな事を云っていたのか・・・。
(これは後でたっぷりとお仕置きが必要だな!)
それならば、君は一体夕鈴のどういう関係だというのだろうね。」

黎翔は眉毛をピクピクさせながら、秀偉に対してまで不機嫌を露わにする。

「う~~ん、自分は幼馴染兼求婚者ですよ。」
「求婚者だと?」

怒りに震えながらも静かに問い返す黎翔と、得意気に答える秀偉。

「ええ、今日は彼女とのお見合いだったんですよ。
親同士が知り合いでして・・・親父達の昔からの約束でしてね。」

秀偉は殊更に自分と夕鈴は深い関係だと強調する。
そのモノ云いが黎翔の癇に障り、怒りは頂点に達しようとしていた。
更に、黎翔から夕鈴を実力行使で引き離そうとしているものだから、一触即発の状態である。

「あのっっ!!皆が見てますけど!!」

夕鈴は、この場に流れる不穏な空気を察知し声を掛けた。

「では、まだ話も終わっていない事だし・・・まずは通りから離れるとしようか。
まだ聞きたい事も沢山あるし。」

黎翔は秀偉に渡さない為に夕鈴の腕は離さないまま、通りから1本入った裏路地を抜け適当な空き地を見つけ、そこで再び対時することになった。
夕鈴はもうどうしていいのか解らず、ただただオロオロするのみ。


空き地に着くと黎翔は絡めた腕をようやく緩めてくれ解放してくれたが、
そのまま隣に置いておいたのは云うまでもない。
そして夕鈴が落ち着かなくしているのをよそに、男性二人は対峙したまま一言も話さない。
どうやら、お互いに相手が話すのをジッと待っている様である。

「あの・・・・・・・。」

この沈黙をぶち壊すかの様に、夕鈴が堪らず声を掛けた。
どちらに向けたものかは判断が付かなかったのだが。

「どうしたの?夕鈴ちゃん」
「夕鈴。どうした?」

同時に返事をして夕鈴にニッコリと微笑む。

この二人の微笑み・・・・何だか怖い。
この状況に夕鈴の頬はピクピク引き攣ってくる。

「いえ・・・・・何でもないです。」

夕鈴は自分は関わらない方がいいみたいだと察知して口を噤んだ。
それが合図となったようで、秀偉が徐に話し始めた。

「先程、自分の事を聞いていたが、まずはご自分のことを話してから相手のことを聞くべきではないのでしょうか?」

秀お兄ちゃん、知らないでしょうがこの方は国王陛下です。
下手したら、不敬罪として処罰されてしまいます・・・・・・・云えないけど、云えないんだけど!!

夕鈴は、冷や汗が背中をツゥーと流れていくのを感じていた。

「確かにそれはそうであるかも。では、僕が一方的に話してもなんだから、何を聞きたいか云って欲しい。」
「そうですね・・・・やはり自分に聞いてきたことと同じことでも。」

紅と黒・・・・・・・・・・対照的な二人の瞳は真剣なモノで、お互いをジッと見据えていた。
夕鈴はこの異様な雰囲気に目が離せなくなり、ただ固唾を飲んで成り行きを見ていた。

「じゃあ、夕鈴との関係は、仕事の上司かな。(今は取り敢えずそうだけど!!まぁその内・・・)」
「ワザワザ、王宮のおエライさんはただの掃除婦が帰省しているのを監視しに来るんですかね。」
「監視ではない!!!迎えに来たんだ。」
「なんのために!」
「君には関係ないと思うが。」
「関係なくはないと思うよ。なぜなら、自分は夕鈴ちゃんと下町散策を楽しんでいた所を邪魔されたのだからね。」
「・・・・・・・・・。」

確かに割り込んだのは自分なのだ・・・・これ以上は何も云えない。
でも、夕鈴が別の男と親しげに歩いてたのが気に入らなかった。
だから思わず奪い取る様な事をしてしまったのだ。

黎翔の後悔と自責の念が、身体中を駆け巡る――――。

奥歯をグッと噛み締め、力いっぱい握りしめた掌には爪が食い込み少し血が滲んでいた。

「夕鈴・・・ごめん。」

黎翔は一言告げると、そのまま踵を返しその場を立ち去ろうとした。
夕鈴はこのまま帰してはイケナイという危機感が旋律の様に頭を駆け抜け、
気が付けば立ち去る黎翔の腕を無意識に掴んでいた。

「あの・・・・・・一人で帰らないでください。」

聞こえるか聞こえないかの囁く様な優しい声で、夕鈴は引き留めていた。
黎翔は無言のまま何も答えてはくれない。
夕鈴は再度自分の想いを伝えてみた。

「私を迎えにワザワザ来て下さったんでしょう?だったら一人で帰らないで・・・・。」

夕鈴の声は涙声になっていた。
そう自分はいくら秀お兄ちゃんがいい人であろうと自分を熱望してくれたとしても、
自分の気持ちは誰に向っているのかハッキリしている以上、受ける事なんて出来ないのだ。

そして後ろを振り返り、自分を求めてくれた優しい秀お兄ちゃんに向き合った。

「ごめんなさい・・・・・私はまだ誰とも結婚する気はありません。
(この恋は実る事は無いので、この先ずっと)だから、ごめんなさい。」

夕鈴は申し訳ないと云う気持ちを体現するかのように、深々と頭を下げたまま一向に上げようとはしなかった。

「もういいよ。頭を上げてよ、夕鈴ちゃん・・・・・・そんなに謝らなくてもいいんだよ。
奥さんは無理でも幼馴染ではいてくれるんでしょう?」
「はい、勿論です。」
「ありがとう。夕鈴ちゃん、ちょっと此処においで。」

秀偉は、夕鈴を呼び寄せ二人にしか聞こえないように内緒話をした。

「夕鈴ちゃん・・・あの人が好きなんだね。
ムリかも!!って思っても、決して諦めたりしちゃ駄目だよ。」
「そうですね・・・・・・・。」

夕鈴は曖昧な返事をして、もう一度礼をすると先に歩いている黎翔を追いかけるベく小走りで駆けて行った。

「時は残酷だな・・・・・・・昔は元気がいいだけの可愛い女の子だったのに、
恋をしてあんな艶っぽい表情を見せるんだもんな。もう女の子ではないんだね、
もう女性と云うべきなんだろうな。まぁ・・・・・いいか、あの事に関わらせないで済むから。」

一人取り残された秀偉は溜息を吐き、時が経つのも忘れすっと青い空を見上げていた。






続。
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瓔悠

Author:瓔悠

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