【そして一つの可能性・5】
2014年12月08日 (月) | 編集 |
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臨時妃 ・ 原作寄り ・ オリキャラ有り 








夕鈴が気の進まない見合い話の為に実家に帰省して、父に事の成り行きの説明をさせていた丁度その頃・・・・黎翔は気の進まない粛清劇へと向かっている最中であった。

「まだ、着かないのか?」

隊列の最後尾についている黎翔は、傍にいるであろう浩大に向かって言葉を投げる。

「陛下、もしかしてへばったの?もうすぐだとは思うけどね~~」

姿は見せないものの浩大は、殊更に『軟弱モノ!』と云わんばかりの軽い口調で黎翔に返す。

「バカ言え!疲れてなぞいない。ただ、早く済ませて夕鈴を迎えに行きたいだけだ。」
「ふうん。」

ただ、あんまり早く迎えに行かれても困るんだよ、お妃ちゃんは!! 
だからオレっちも苦労しそうなんだよね。

兎に角李順さんから頼まれたのは、最低でも明日の昼過ぎまでは陛下をこの粛清劇に掛かりっきりしておくことだった。
でも、この陛下が一緒だから結構難しいんだよね~~。

「あ~~陛下、見えてきたよ。先発隊はついている様だね。」

先発隊は基本的にオレの存在は知られていないから、姿を見せる訳にはいかない。
さてと、おっぱじめる前に下調べと行こうかな。

気配が消え失せ、浩大が此処を離れたことを黎翔は瞬時に感知した。

浩大は、下調べに行ったようだな・・・・。
相変わらず仕事の早いヤツだ。

黎翔は、愛馬の腹を蹴って早駆けし先発隊と合流した。

「陛下、お着きですか。まずは下見隊として4,5人を先行させておりますが・・・。」
「方淵、御苦労。下見が戻り次第、会議をするとしよう。それまではそのまま待機。」
「はっ。」

そこは、かの官吏の治める先祖代々の領地が見える小高い丘の上。
黎翔は愛馬から降り立ち、その領地を食い入るように見つめていた。
紅い瞳は愉悦に光り、そして昏い笑みを浮かべながら・・・。

さぁ、始めようか・・・私をたばかった罪をその身で思い知るがいい。


「陛下、下見隊が戻りました。」
「そうか、では会議を始めようか。」

そうして始まったその会議での決定事項は、周りを固める為に敢えて今日は決行せず明日の早朝まで待つ事と、問題の官吏以外には手を出さない事だった。
黎翔としては逸る気持ちが溢れ出そうだったが戦略的に早朝の方が成果に期待できる事もあり、ジッと耐えることにした。

そして今晩はこのまま、この丘にて野営することとなった。

夜も更け、風も吹きつける中。
天幕から抜け出て野営地を一人そぞろ歩く黎翔は孤高の王の気質が醸し出されており、
他の天幕からちらりと覗く兵士たちの畏怖の対象であった。
そして、明日押し入る予定の領地が良く見える丘で足を止め、
その領地を二つの紅玉が全てを見透かすように鋭い光彩を放つ・・・・眼下の光景すべてを覆い尽くすように。

黎翔がこんな夜更けに出歩いているのも、些末な粛清の為に大切な妃を帰省させた事に対して腹を立てており、歩き回ることにより自身の怒気を少しでも抑えようとしているのである。
でなければ、今からでも押し入ってしまいそうだから。

夕鈴・・・今頃何をしているのであろうか?
弟君の夜食でも作っているのだろうか・・・早く逢いたいものだな。

考える事といえば明日決行の手順等でなく、あくまで愛しい彼女の事のみ。

そんな一人の女性への想いが心のほとんどを占めている事が可笑しくもあり、
少し前までの自分ではありえない事で自嘲気味に笑ってみる。
黎翔の乾いた笑いが風に飛ばされる中、その笑いは闇から眺めていた一人の男のからかう声によって掻き消された。

「陛下~~~~~何、黄昏てんのさ。」

背後に広がる闇の中から聴こえて来た声は、黎翔が全幅の信頼を寄せている隠密のモノである。

「煩いぞ、それで何か解ったのか?」
「まぁ、二つほどね。まず一つが、あの官吏だけどさぁ居館の一番奥に引き籠っているよ。
あれは、こうして粛清に来られる事を想定してじゃないかな?
二つ目は、あの狸じじぃ・・・・この地ではかなり領民に対しては寛容な領主らしくてね。
どうも、昔の奉公制度が残っている感じでさぁ。」

浩大は云い出しにくいのか、切れの悪い云い方で報告する。

「何が云いたいんだ、浩大。ハッキリと報告しろ!!。」

黎翔のかなりの不機嫌さに浩大も、一瞬ピリッと身体に電気が走る。

うわぁ~~~これはかなりの機嫌の悪さだな。
これは、オレの力を以てしてでも昼過ぎまで足止めするのはムリだよ。
ゴメンね~~~お妃ちゃん、せめて見合いが終わった後で陛下と逢えればいいけど・・・・もし最中だったら、血の雨が降るかも?!
あんま考えたくもねぇけどな~~~~~。


「浩大・・・・・何が云いたいのかと聞いているのだが。」
「ヘイヘイ。あのさ・・・・奉公制度って、領民に自分の領地を無償で与える代わりに領主に何か有る時、全員で領主を守るってもんだろ・・・・それがここには根強く残ってんのさ。
だから、恐らくこの地の領民が邪魔をしてくるぜ、きっと!!」
「そうか、面白いものだな。だからこの地に逃げ込んだと言う訳か・・・・全くもって下らん奴だ。」

領地を直視する黎翔は、そんな事はどうでもいいと云わんばかりに鼻で笑っている。
そんな光景を間の当たりにした浩大は、やっぱりこの人は『狼陛下』なのだと再認識する。

「ふんっ、勝手にするがいいさ。どちらにしろ、ヤツの行きつく先はもうすでに決まっている。
それを領民に邪魔立てはさせるものか!こちらとしても、キッチリ対処させてもらおう。
浩大・・・・お前もキリキリ働けよ。」
「どうせ、こき使うつもりなんだろっっ、解っているよ。それよりも陛下、月がもう東空から見えているよ。」
「そうだな、今宵は下弦の月だな。南空に沈みゆく前に一眠りとしようか。」
「じゃあね~。」

浩大は一迅の風と共に姿を消し、その辺りの闇は深く濃くなるばかり。
黎翔は空を仰ぎ見て、瞬く星と白くぼんやりと浮かぶ月に彼の人への想いを重ね、一瞬昏く微笑んでみた。


そして、夜が明ける。
東の空に、真っ赤に燃えいずる太陽が昇り始めた。

兵士たちの前に堂々と立った黎翔は、威厳を持って兵士たちに豪語する。

「いよいよだな。報告では、領民がゆく手を阻んでくると予想されているが、
あくまで目的は件の官吏のみ!!くれぐれも領民には手を出すな、いいな!!」
「承知いたしました。」

兵士たちの先頭に立った方淵が、直ぐに呼応する。
その返事に満足したのか黎翔はくるりと領地に身体を向けて剣を高々と上げ、『開始』を無言で合図した。

その合図と同時に方淵達は静かに丘を下って行く。
その列の最後尾に付け馬を走らす黎翔は、近くに浩大の気配に気付き即座に止る。

「如何した・・・。」

気配がする方向に低い声を飛ばした。

「さすがだね~~オレっちのいるところが解るなんてね。え~~と報告!!
官吏の居場所だけど領館の奥って報告してたけど、それが奥の奥・・・隠し部屋にいるみたいだよ。
気をつけてよ~~~仕掛けが有るらしいから。」
「仕掛け??ワザワザ私が来るのを恐れて作ったのか?」
「いや・・・さすがにそれはないよ。どうやら昔からあるものらしい。」
「ふうん、そうか。」

一言呟き、ジッと前を見据える黎翔の紅い瞳は愉悦で揺らめいており、
その瞳は見たものを「生きた心地がしない」 と思わせるものであった。
愛馬の腹を一蹴りし列に追いついた黎翔は方淵を呼び寄せ、
先程浩大がもたらした情報を伝え一応注意喚起をして置いた。

案の定、領館へと続く門の所には鍬を持った若い男性4人が立ち塞がっていた。

「そこをどいてもらおうか。さもなければ、我々は強硬突破するしか無くなるのだが。」

方淵が一応警告する。

「此処を退くと、領主様が取り押さえられてしまうから出来ないんだ。」
「見逃してくれ。」
「ここの領主様は優しいお方だ。何をしたって云うんだ。」

その男たちは口々に領主を守ろうと、王の御前だというのに云いたい放題な事を大声で喚き立てている。
彼らが、王自らやって来ているのを全く知らないから出来るのだろうが。

「聞けっっ!お前たちの領主は不正を働いて、ここに逃げ込んでいるのだ。
さっさと引き渡して、法の前に粛々と裁かれなければならないのだ。
それが我らの陛下が御望みである。」

方淵は此方が手が出せない事に苛立ちを覚えながら相対する。
領民を苦々しく睨みつつも、それでも説得を試みていた。

「そんな事を言っても、我々にとってはお優しい領主様なんだよ。」
「そうだそうだ・・・・それに引き渡してしまったら、それこそ恐ろしい狼陛下にその場で切り殺されてしまうに決っている。」
「本当に恐ろしい方だ。」

領民たちは、一歩も引く様子が見えない。
それどころか、応戦しようと鍬を高々と上げて臨戦態勢に入っていた。
仕方がないと方淵は最後尾の黎翔の元に馳せ参じ、この状況を打破する一つの方法の許可を取りに行く。

「方淵・・・・くれぐれも領民には手荒な事はするなよ。」
「はい、承知いたしております。」

素早く隊に引き戻ると6人ほどの者に他の入り口に回らせ、残った者には素早く指示を出し領民の目の前に立たせた。
その場を立ち去っていくほかの兵に気を取られ領民たちが一瞬鍬を下げた隙を狙って、
鍬の持ち手を剣で叩き落とし戦意を喪失させたのである。
そしてそのまま剣を眼前に突きつけ、殊更に『そこをどけ』と威嚇する。
此方は傷つける気は更々ないのだが、切りつける様に見せかけ諦めさせるのである。

騙すのはハッキリ云って本意ではないのだが、この領民は梃でも動かないことからこの様な方策を取るしかないと判断したのである。
そうすることで、領民たちはさすがに命は惜しいと道を開けてくれたのであった。

「では、入るぞ。」

方淵は兵に鋭い声で指示して、自らを先頭に門をくぐっていく。
そして黎翔は後ろから方淵の手並みを黙って見詰めると深く頷いて、そのまま兵たちに続いて門をくぐったのであった。


門から玄関までの道のりは大した距離ではなくその間は誰もおらず直ぐに玄関に辿りついたのだが、
今度は女性が数人佇んでいた。
これには方淵もさずがに剣を突き付けるのは得策ではないと判断して、大きな溜息を醸したあと静かに話しかけた。

「そこの女人(にょにん)、私たちはここの領主に用があって参った。そこを開けてはくれまいか。
私たちとて、女人に手荒な事をしようとは思わないのだが。」

方淵の言葉に女性達はザワザワと話し合いを始め、その中の一番落ち着き払った女性が代表となり怖々と回答する。

「あの・・・・・領主様は何をなさったのでしょうか?本当にここの領主様はとても慈悲深くて、私たちによくして下さいます。だから王宮の兵士に追われる様な事をなさったとはとても思えないんです。」
「深くは語れないのだが、そこの奥にいる領主は法に触れる事をした。だから御縄に掛けるためにこうしてやってきたのだ。」
「何かの間違いじゃ・・・・。」
「いや、キチンと調べた結果だ。」
「でもでも・・・。」

女人達はそれでも認めたくはないとかぶりを振る。
こうしていても埒が明かない。
・・・でも策が見当たらない。
その時頭上から声が降ってきた。

「危ない!!避けて~~~~~」

その掛け声と共に女人達が集まっている場所へ、大小色々な大きさの籠が幾つ幾つも落ちてきたというより降ってきた。

「キャ~~~~~~。」

悲鳴が幾重にも重なり、蜘蛛の子を散らすように女人達は散り散りに逃げていく。
その後には玄関から人はm人っ子一人いなくなってしまっていた。

方淵はこの出来事を不思議に思いつつも、この期を逃すまいと突入の指示を出し自分も続いたのであった。

全ての兵が領館に入ったのを確認すると、黎翔は苦笑いをしつつ木の上を見上げた。
そこには有能な隠密・浩大がニヤリと口角をあげ『してやったり』と得意顔で笑っていた。

「おい、やり過ぎなのではないか?」
「でも、女性に剣を向けたりはしたくなかったんでしょう。」
「まぁな。」
「じゃ、オレっちに感謝してよね。じゃあ、他の入口を見てくるよ。」

ヒラリと隣の木に飛び移り、更にその隣の木に・・・・・そうして直ぐに姿が見えなくなっていった。
一人になった黎翔も方淵に続くべく、愛馬から降り玄関へと入って行った。


玄関に入ると報告通り奥へと続いているのであろう長い廊下があり、
そのままヒタヒタと歩いていくと一つの大きな部屋についた。
ここまで人に逢わなかったのか・・・・いや廊下には如何にも人相の悪い男共が気絶されられ、
端に転がっていた。
どの男も刺し傷・切り傷一つなくすべて刀背打ち(みねうち)でやられており、
これは兵たちの技量が男たちよりも数段上だった事を物語っていた。
黎翔は、その男たちを一瞥するとそのまま捨ておいた。


そして奥の部屋では方淵たち兵士が揃っており、皆で頑丈な扉の前で押したり引いたり試行錯誤していた。
それというのもこの扉の奥に件の官吏が引き籠っているらしく、家族の者がこの扉の前で守っていたのであったからだ。
ところが方淵が「この場には陛下もおいでになっている。」と伝えると、家族は陛下の御威光にこれ以上は逆らえないと観念して、扉の前からさぁ~と退いたのであった。

ただ扉の解除法は教える事は出来ないと頑なに口を閉ざしているため、
方淵は成りゆきを部屋の隅から見ていることしかできないでいた。
そんな状況下に黎翔が現れたのだった。


しかし黎翔が現れてから半刻経てども、扉が開く気配は一向にない。
それでも兵士たちは色々な方法を試している。
剣を隙間にはめ込んでみたり、何処から出してきたのか鉄鎚で扉を叩いてみたり・・・・考えられる策は全て試していた。
それを見ている黎翔も我慢の限界が訪れようとしており、内包から溢れだしそうな怒気を必死で鎮めようとしていた。

黎翔はチラリと家族の方を見てみると、皆小刻みに震えながらただただ見ているだけだった。
そんな家族の行為に苛立ちが更に加速し、ついには行動を起こすことにした。

ツカツカと妻の前に進み出た黎翔は、妻を一睨みすると一言云い放った。

「扉の解除法は、如何に?」
「云えません。」

妻は気丈にも、黎翔が国王陛下であると解っていながら拒否した。
ただ、恐ろしさにへたり込んではいたが。

「ほう・・・云えぬと申すのか。」
「はい。」

妻は座り込んだまま、小声で返す。

「私はやると云えば必ずやり遂げる事を旨としている。どういう手段を使おうとこの扉は開ける。
これ以上そち達が云わぬとなれば、その後そちの夫がどうなるのか?想像してみる事だ。」

鋭く光る瞳は普段よりも激しい光彩で妻を見降ろしていた。

この様な私を夕鈴には到底見せられるものではないな。
こんな状況下でも思うのは、ただ唯一の妃(仮ではあるが)の事だけ。

先程の黎翔の非情な言葉に、官吏の母親が震えながら黎翔の前に進み出た。
そして妻の背中を擦りながら、涙声になりつつも妻を諭す。

「もう、これ以上は息子の為にもならない様だから・・・・開けようではないかの。」

義母の言葉を聞いた途端、妻は堰を切ったかのように泣き崩れた。
そしてその泣き声は部屋中を覆う様に響き、それに呼応するかの様に娘たちもすすり泣きを始めたのであった。

方淵たち兵士も一旦手を止め、陛下と家族とのやり取りを息を殺して見ていた――――。


「解りました・・・・・解除いたします。ただ畏れ多くも、陛下にお願いの儀が有ります。」
「願いとは?」
「どうかどうか・・・・・・・夫の・・・・・夫の命だけはお助け下さいませ。」

小声から段々大きくハッキリと夫の命乞いをしてのける妻の瞳は先程の様な弱弱しく怯えたものではなく、凛としたものが感じ取れた。

その真摯な瞳に黎翔も何故か夕鈴を彷彿とさせ、意外な言葉を発していた。

「わかった・・・・・犯した罪にはそれ相応の罰を与えねばならぬが、命だけは保障しよう。」

王者の風格を醸し出しながら、ハッキリと云い述べた黎翔を、家族たちは拝むように床に額を擦りつけ口々に
「有難うございます。」と繰り返していた。
そして妻と義母・・・跡取りであるらしき息子が進み出て、扉に掘ってある窪みに3人同時に右手をはめ込んだ。

『ゴ~~~~』

音が鳴り響き、先程から何をしてもウンともスンとも云わず閉ざされていた扉が嘘の様に呆気なく開いた。

「突入~~~官吏を確保しろ。」

方淵の声に、兵士数人が扉の奥へと進んで行った。
遅れながら入った方淵と黎翔は、奥の部屋の隅で震えながら眼を閉じ耳を両手で塞いでいる官吏の姿を眼にする。

「引っ立てよ。」

方淵はその官吏の情けない姿をこれ以上見たくはなく、その場にいた兵士に命じて外に連れ出させた。
それは黎翔とて同じことで、黎翔の眼を盗み横領という大それたことまでやってのけた官吏の末路が、暗い部屋で震えているのみだとは何んとも情けなくお粗末な結果に、官吏を一瞥もする事無くただ昏い笑みを浮かべるだけだった。

こうして件の官吏は確保され方淵は兵士と共に外へと出て行き、
残されたのは家族と黎翔のみでなんとも気まずい空気が漂っている。
しかし静寂を壊したのは官吏の娘で、黎翔の前におずおずと進み寄り質問した。

「あの・・・・・・・陛下、父上とはもう逢えないのでしょうか?」

年のころは10歳くらい・・・・まだ父親が恋しい年頃なのだろう。
どうしても父親の今後が気に為るらしい。

「いや、二度と逢えぬ事はない。ただそれは父親次第だ。」
「有難うございます。」

ニコヤカに母親の元に駆け寄り、そこでまた黎翔にお辞儀をした。
家族肩を寄せ合い喜んでいる光景が家族を持たぬ黎翔には余りにも眩しく見え、
なんとも云えない感情が胸の奥で疼き、無言のまま部屋を後にした。

玄関先では官吏に縄をかけ粛々と連れて行かれる様を、領民たちは息を飲みつつ見守っているだけで、
「領主さま。我々一同はお帰りをお待ちしています。」
時折大きな声が聞こえてくるのみ。

方淵の兵士に指示を出している事務的な声が、対照的に聞こえてくる。
そんな最中黎翔はこれで全てが終わったと確信し、方淵・兵士そして少し離れた所にいるであろう浩大に声を掛ける。

「私はこれより王都へ先に戻る事にする。あとは柳方淵に全て任せるゆえ、頼むぞ。
戻り次第、李順に引き渡し指示を仰ぐように。」

それだけを云い付けると、愛馬に風の様に飛び乗り単騎駆けて行った。

「あ~~~あ、行っちまった・・・ゴメン、まだ昼前だよ。オレの力不足かなぁ~~。お妃ちゃん、幸運を祈るよ。」

浩大はそれだけを呟くと、風の中に気配を溶かしそのまま静かに消えていった。


夕鈴はお見合いの真っ最中・・・・・・黎翔とばったり会うことになるのだろうか??
それは運命の赤い糸を司る神ともいうべき存在の思い一つであった。





続。
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コメント
この記事へのコメント
No title
夕鈴の赤い糸はどちらとお方とつながってるんでしょう・・って二択かよ(笑)
陛下にしたら、
「夕鈴の赤い糸の運命の人は僕しかいないでしょ!?何言ってるの?!」と、言われてしまいそうですよね(笑)
子犬なのに狼。恐ろしい・・・。
陛下がいくよーゆうりーん。大丈夫か知らん・・・。
2014/12/09(火) 01:02:01 | URL | ママ #-[ 編集]
ママ様
こんにちわ~コメント有難うございます
ホント、2者択一は辛いもんだ。
でも選ぶのも、人生。
究極の選択かもしれませんね~~
自分の気持ちを優先するのか、それとも望まれた方にするのか??
難しい選択かもしれません・・・・・。
でも夕鈴なら、迷わず、『エイッ』って決めるんでしょうが。
私なら出来ないなぁ~~優柔不断だから。
陛下がそこまでの強い言葉を云ってくれたら、全く迷う必要なんてないのに~~
もうっっ、陛下!!!
しかし、この粛清の話の回は、結構手こずったような思い出があるような。
頭の中の映像を文章にするって、本当に難しい・・・・。
語彙が足りなくて・・・もどかしさを感じることが多々。
もっともっと勉強が必要だなぁ~と思うよ。
さぁ、陛下が下町へ行きます!!!
夕鈴、ご覚悟を!!!!
2014/12/09(火) 12:49:22 | URL | 瓔悠 #-[ 編集]
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