【そして一つの可能性・4】
2014年12月07日 (日) | 編集 |
【設定】

臨時妃 ・ 原作寄り ・ オリキャラ有り 











一通り疑問に思っていた事は解決したことで、夕鈴は満足気に微笑む。
しかし思い出していない事に変わりはないのだが・・・。

ひと息つく為に、出されてある茶菓子を摘まんで口に運んだ。
一口大の饅頭は口の中で程良い甘さが広がり、生地のもっちりとした感が食べ応えがありとても美味しい。

この菓子はどうやって作られているのかしら?
真似出来ないかしらね・・・・これなら陛下も喜んでくれそう。

夕鈴は何気にここには居ない陛下の事を思い出し、フフッと微笑んだ。
その笑みを秀偉は見逃しはしなかった。

夕鈴ちゃんってあんなに可愛く笑うんだな、何を想って笑っているのやら・・・・。
あの笑顔を僕だけのものにしたい。


秀偉の欲望が目覚め始める――――それにはまずは自分を知って貰わないと。


「夕鈴ちゃん、もう自分への質問は大丈夫かい?」
「ゴメンナサイ、私ばかり質問していましたね。
はい、大丈夫です。」
「じゃあ、今度は自分の番でいいのかな。」

いたずらっぽく笑う目の前の男性が誰かと重なって見えたのは、目の錯覚なのだろうか?
誰か・・・・・そう、いつも孤独の中にいる強いけれど、弱さも合わせ持った仮初めの夫。
夕鈴は此処に居ない筈の男性の影を追いかけており、遠い眼をする。
そんな夕鈴の注意を自分に向けたくて、秀偉は質問を畳みこんだ。

「夕鈴ちゃん、恋人はいるの?王宮にいい人がいたりしないよね?
そして王宮で何しているの?そして鍔とはどうなっているの?」

矢継ぎ早に質問されるので夕鈴も何処から答えていいのかわからなくなり、
先程からチラチラと脳裏に浮かんでいた陛下の影は、後片もなく消え失せていた。

「そんなにいっぺんに質問されても、答えようがありませんよ。」
「あはは、そうだね。ごめんごめん・・・。一つづつ答えてくれればいいよ。」
「では・・・・まず、恋人がいたら?でしたっけ。いたら此処には来ていませんよ。」
「そうだよね。」

秀偉は安堵した。
恋人が居ないのなら、十分自分にもチャンスはあるというもの。

「あと、なんでしたっけ?几鍔の事ですよね。
アイツとはどうにもなってませんし、この先もどうもなりません。
大体私は金貸しは信用しない事にしているんですから・・・・。」

夕鈴はハッキリと言い切った後も、金貸しとだなんて全くもってあり得ないと繰り返す。

「え~~と後は・・・・。う~~んとなんでしたか?
余りにも一度に沢山質問されたので、あと忘れちゃいましたよ。」
「あははは~~~~そうだよね、あははは、夕鈴ちゃん可愛い。」

小さく声を立てて笑う顔を見ていると、夕鈴は幼いころの記憶の断片が甦ってきた。

あの眩しく笑うのは・・・・3つ年上の小さな子達の面倒みがよくて、
曲がった事が嫌いで意地悪な年上にも勇猛果敢に挑んでいた、秀お兄ちゃん・・・・・。


「あの、もしかして・・・・・秀お兄ちゃん、だったり?」
「正解。そうだよ、夕鈴ちゃん。」

夕鈴は心のつかえが取れた気がした。
思い出せなくて、もどかしくて、申し訳なくて・・・・そんな感情が今、雲ひとつない晴れ渡った空の様に変わっていく。

いつも間にか夕鈴は、微笑んでいた・・・・・・・・・・艶然で優美な微笑みで。
秀偉はハッとして、息を飲んだ。

目の前に居るのは一体誰だろうか?先程までの夕鈴ちゃんとはまるで違う雰囲気。
そして何処かの令嬢のような仕草。

秀偉は知りもしなかった・・・・夕鈴が狼陛下と呼ばれる珀 黎翔の唯一のお妃である事を。
そして夕鈴はお見合いの相手が幼馴染の秀お兄ちゃんであったことから、
始めの頃の様な警戒心は消え失せていた。

「じゃあ、夕鈴ちゃん質問の続き・・・・答えてくれるかな?」
「エッ?何でしたっけ?」
「え~~とね、夕鈴ちゃんは王宮でなんの仕事をしてるの?そしてそれって王宮の陛下の近くだったりする?」

先程の質問と少し違っている様な気がする。
まぁ、いいけど・・・ただバイトで狼陛下の妃をやってます。だなんて言えないけどね!!

「王宮では掃除婦をしていますよ・・・家事はお手のものですからね。でも王宮ではなくて、後宮の隅っこをですが。」
「へぇ~~~後宮なんだ。それじゃあ噂に高い、陛下ご執心のお妃様に会った事があるんじゃないの?」

夕鈴は思わず、口に含んだお茶を噴き出しそうになった。

え~~~噂は地方まで届いていると云うの???もうなんなのよ!!

「後宮と云っても使ってない部屋の掃除だから、そんな高貴の方とは逢うことないんてナイナイ!!」

殊更に否定するように、目の前で大きく手をブンブン振る。

「そうなんだね・・・・ふうん。」

秀お兄ちゃんは、一人納得したそうに頷いてもうそれ以上の事は聞かなかった。
そしてそのままお茶を飲み干して、秀お兄ちゃんは背中をまっすぐして居ず舞いを正した。
その様子をみた夕鈴は、何事かと自分も居ず舞いをキチンと正してみた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・。」

何も云わずに、ただ夕鈴を見詰めている秀偉に居たたまれなくなって、
夕鈴は首を傾げおずおずと訊いてみる。

「あの・・・・・どうかしたんですか?」

この言葉に秀偉も緊張の糸が切れたみたいに、ふんわりと笑った。
そして・・・・・・・・・・決定的な一言を口にした。

「夕鈴ちゃん、僕と一生を共に過ごして欲しい。」
「???????」

夕鈴は一体何を言われたのか解らずに目をまん丸にしてキョトンとなった。
・・・・・・これを鳩が豆鉄砲をくらうと云うのであろう。

「あの・・・・・・・・私たち、久し振りに逢って・・・・そうなると初対面にも近いと思うのですが。」
「そんな事はないよ。だって僕は幼い頃の夕鈴ちゃんをよく知っている。
そして今此処で話していて感じたんだ。君は全く変わってなんかないと。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

ここで自分には心に思う人がいると言えばいいのだろう。
でも決してあの人とは結ばれる事なんて、例え天地が逆さに為ったとしてもあり得ない。
だったら・・・・此処まで望んでくれるのなら。

段々、秀偉の言葉に傾いていく自分が心の隅に生まれている事を何となく感じていた。

この男性(ヒト)は優しい・・・きっと自分を大切にしてくれるだろう。
このヒトと一緒になったら平凡だけど穏やかな生活は出来る。
でも、でも、あの人はこれからも誰にも理解されずに孤独に生きていくの?
私はあの人の味方に為るって云ったのに?

夕鈴はどうしてよいのか解らずに、悶々と黙って考え込んでいた。
その様子に秀偉が助け船を出してくれた。

「夕鈴ちゃん・・・・今すぐに答えを出す事なんてないよ。僕はもうこの下町に帰って来ているのだから、逢おうと思えば明日も明後日も逢えるんだからさ。自分はいつまでも待つつもりはあるんだからね。」

ニッコリと微笑んでいる秀偉に、夕鈴は心底助かったと思った。
『是』とも『否』とも云わない夕鈴に対して無理やり聞き出す事はしない秀偉の大人の行動に、夕鈴は取り敢えず甘えることにしてその件は保留とさせて貰った。

「じゃあ、そろそろ店を出ることにしようか・・・久し振りに下町をブラブラしたいし。夕鈴ちゃん付き合ってくれるかな?」
「はい、いいですよ。私も久し振りに帰省したので下町をゆっくり歩きたいと思っていたので。」

二人はその店を後にして下町の喧騒の中に消えていった。






続。
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コメント
この記事へのコメント
No title
コメしたあと直ぐ読んだよー^^
そりゃね・・・秀偉さんの真剣な求婚の言葉に傾いていくのは仕方ないかと思うよ?陛下。
いつまでも将来のやくそくをしない・・というか出来ない?
それどころか心も交せていない状況。
そりゃね・・・交わるとはおもえない未来より・・・と、思ってしまうものですよね・・夕鈴の苦しい恋心が陛下に届く日は来るのかしら?
早く粛清して帰ってこないと可愛い愛しい兎さんはほかの人の手の内に落ちちゃうかもね~←陛下を煽ってみる(笑)
2014/12/08(月) 00:18:37 | URL | ママ #-[ 編集]
ママ様
こんにちわ~コメント有難うございます
返信が遅くなって、ごめんね~~
まぁっっ!!!早く寝ないと駄目だよ~~
少し嬉しいけど・・・・。
久々に私も手直ししながら読んでるけど、秀お兄様はハッキリしてていいなぁ~とか思ってしまったりします。
普通なら、グラッと来るよね~~私なら、望まれている方がいいのかもしれないと思うもの~。
追いかけるよりも追いかけられる方がいい!!とね。(私にはそう云う経験がないから羨ましいのかも・・・)
マジで陛下、これでいいの???と心配になりますよ~~
女心と秋の空とは云わないけれど・・・しっかりと意思表示しないとさぁ~~。
まぁ、そんな感じで久々に読むと中々感傷に浸れたりしますね~~
2014/12/09(火) 12:28:43 | URL | 瓔悠 #-[ 編集]
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