【優美な兎は何見て跳ねる??・2】(未来家族設定)
2016年11月13日 (日) | 編集 |
【設定】

未来家族設定 ・  オリキャラ有り ・ 原作外設定有り

【注意事項】

こちらの話は、前々ブログからの移行分を手直ししたものです。
移行忘れを見つけたのでUPしてみました。

そして、この作品は、【精悍な狼は何を想う?】の夕鈴sideとなります。




シーンと静まり返った後宮。
そこにいるはずの兎妃は、何処へやら。
優美な兎は、自慢の足と度胸で駆け去った。
後に残るは子兎のみ………。

「兄さま~~~姉さま~~何処にいるの??」

後宮内に響き渡る子兎の声。
これは一番末の嘩鈴である。
まだまだ母親が恋しい年頃で…夕鈴がいなくなったことを一番先に察知して、
上の姉兄を探して回っているのである。

「嘩鈴、どうしたの?」

妹の声を聞きつけてやって来た姉兎。
余りの妹の慌て様に、何かあったと感じて考え込んだ。

「姉さま!!どうしよう~母さまが「いなくなった!でしょ?!」」
「どうして分かるの?」
「だって、嘩鈴のその慌て様を見れば分かるわよ」
「何処に行ったの、母さま?」
「そうねぇ~~何処かしら」

「恐らく、下町」

夕鈴の行先を考えている二人の会話に割り込んできたのは、
真ん中の兄兎の遥翔公子。
冷静沈着な彼らしく、淡々と話し始めた。

「どうも、父上とやりやったらしくて後宮の一室に籠城していたみたいだけど……。
それすら我慢ならなくなったんだろうね、下町へと本格的な家出に移行したみたいだよ」
「………ねぇ、帰ってくる?」

不安げな嘩鈴は、目に涙を浮かべている。
それを見て遥翔は優しく頭を撫でてやりながら、安心させる様に言葉を掛けた。

「大丈夫、どうせ2、3日で帰ってくるよ。
だって母上にとっての家はここだから。
僕達のいるここしかないって、知っているからね」
「ふぅ……なら、良かった」

安心した嘩鈴は、姉兄に向ってニッコリと笑ってみせた。
一番上である秦鈴も安堵した様で、苦笑いを零す。

「それにしても、お父様は何をやらかしたのかしらね」
「さぁ、僕もそれは知らないんだけど……よっぽどの事じゃないかな?
母上が家出するくらいだからさ」
「全く、世話の焼ける両親よね……」
「いいよ、二人の事は放っておいてさ」
「そうね」

上の二人は今までの経験上、両親の喧嘩なんて構わないでおくのが一番だと知っており、
そのままその場を離れようとした。
ところが、一番下の嘩鈴は納得がいかないらしく二人に向けて抗議した。

「でも姉さま、兄さま!それでいいの?
早く父さまに母さまを迎えに行ってもらわないと!!」
「嘩鈴……お父様は、今政務中よ。
そんなの、李順が行かせてくれるわけが無いわ。
それに、たまにはお母様も休暇があってもいいと思うから」
「そう……なのね。分かった!じゃあ、もう嘩鈴は知らない振りをするっっ!」
「じゃあ、私と刺繍でもしましょうか?」
「うん!!姉さま、行こう~」

ご機嫌の治った嘩鈴は足取りも軽やかに、その場を去った。
それを物陰から見守る浩大は、ニヤリと微笑んだ。


********

はてさて、ここは執務室。
ご機嫌斜めの黎翔は、卓上に積み上がった書簡を手に取りながら先程のやり取りを考える。

ああなった夕鈴は、梃子でも動かぬだろう。
しばらくはここで大人しく政務を片づけねば、夕鈴の所にも行けやしない。

筆の動きも俊敏に、書簡を片っ端から片づけていった。
そうしてようやく、李順に文句を言わせないだけの書簡を片付けて、
後宮の夕鈴の籠城部屋前に戻った黎翔。
戸口の前で、中にいるであろう夕鈴に声を掛けた。

「ねぇ、夕鈴。キチンとお仕事して来たからさ~~ここ、開けてくれない??」

籠城部屋は静まり返っていて、待てども返事はない。
黎翔は怪訝に思い、戸を開け広げてると中にいる筈の夕鈴はいなかった。
そう………そこは、もぬけの殻。

___________時、既に遅し。


その部屋にいた筈の夕鈴は、本格的な家出を決行した後だった。

「夕鈴………一体何処に??」
「決ってるじゃん!!!正妃ちゃんの行き先は、ただ一つ!
下町だよ」

天井裏から聞えてくるのは、いつまでも昔のままの風貌の浩大の声だ。

「お前が付いて行ったのか??」
「送り届けはしたけど、後は任せてきたよ他のヤツにさっ。
お子ちゃまたちが今回は付いて行かなかったから、こっちも護衛が必要でしょ!!!
(って、こっちでアンタの様子が見たかったから、他のヤツに頼んだんだけどね~)」

黎翔はおちゃらけた浩大の声に、何だかイラッときた。
どうも面白おかしく傍観してやろうという浩大のもくろみが、見え隠れするからだ。

―――夕鈴がいなくても、私はジタバタうろたえたりしないからな!!!
お前の思い通りになると思うなよ!!

何故か、浩大に臨戦態勢になる黎翔。

「ふんっ、あそこに行ったのならそれでいい」
「あっ、そうそう!正妃ちゃんの居場所、教えとこうか?」
「いや、いい。
ちゃんと無事であれば、それでいい」
「ふぅん~」
「但し、護衛だけは抜かるなよ!!」

一言、言い置いて政務室に戻ろうとする黎翔の背中に浩大の声が届く。

「今からさ、正妃ちゃんの様子を見てくるけど、なんか伝言は有る???」
「ない!!!!」

冷たく言い放つ黎翔。
だが……肩は少し落ちている様にも見える。

―――全く素直じゃねえな、あの人も……難儀なお人だよ。

浩大は取り敢えず、もう一人の難儀な御仁の様子を見に行く事にした。




続く。



2013.09.01 初出


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