【精悍な狼は何を想う?】(未来家族設定)
2016年10月08日 (土) | 編集 |
【設定】

未来家族設定 ・  オリキャラ有り ・ 原作外設定有り

【注意事項】

こちらの話は、前々ブログからの移行分を手直ししたものです。
移行忘れを見つけたのでUPしてみました。








今宵の月は満月に近いが、ほんの少しだけ欠けた小望月。
一人執務室に残り、残務に追われる黎翔。

正妃も迎え、子も為し・・・この国も磐石となった。
きっと今が充実した日々なのだとは思う・・・・が。
心の奥底のモヤモヤが消えない。


「へーか、一人月見酒はつまらないからさ、付き合ってよ」
「私は、忙しいのだが」
「よく言うよ、さっきから筆は全く動いてないぜ」
「うるさい!!!」

痛い所を突かれてしまい、黎翔は不機嫌な表情を向ける。
長年仕えている隠密は・・・・・何もかもお見通し。
遠慮も何も無い。

「はぁ、では、付き合ってやる」

短く嘆息を吐きだし、卓を離れる黎翔。

「じゃあ、外で待ってるからさ~~」

窓からヒョイと出ていった隠密を恨めしげに見やる。
自分は窓からなんて、出来る筈はなく・・・・戸口から外へと出た。


先に行った浩大は月がよく見える四阿で、酒を杯に並々に注いでいた。

「はい、どーぞ!」

やって来た黎翔に杯を勧め、自分の為にも杯へと注ぐ。
黎翔は受取った杯を見つめ、一気に煽った。

「おっ、イイ飲みっぷり!!!」

浩大は冷やかし声を上げながらも、空になった黎翔の杯にお代りを淹れる。

「・・・・・ホント、彼女がいないと静かすぎるね」

浩大は徐に、話し始めた。

「そうだな」
「あんな、破天荒な妃なんて前代未聞だったけど、
生き生きしててスッゴク愉しかった」
「そうだな」
「オレ、護衛につけてスッゴクやりがいがあったんだよな」
「そうだな」

杯を片手に、黎翔は曖昧な返事をするだけ。
そして大きな嘆息と共に、空になった杯を浩大に突き出す。

―――夕鈴・・・・・夕鈴・・・夕鈴。

黎翔の心の中には、愛しい女性が一人住まう。
その彼女以外の女性は決して入り込む事なんて出来無いだろう。
彼女が居なくなったとしても。


愛しくて愛しくて・・・・・離せなくて正妃にした。
それがどれだけ、彼女にとって大変な事を意味するのかも薄々感じながら。

彼女はスッゴク頑張ってくれた。
生来の勤勉さで以て。
周りの心ない者どもの陰口も、自分には一言も言わずに一人耐えていた。

もっと気遣いしてあげていれば・・・・・。
後悔ばかりが頭をよぎる。



「アンタ、今、王さまの顔じゃないな。
只のオトコの顔だよ」

不意に言われた浩大の言葉。
反論なんて出来無かった。

それくらい情けない顔しているんだろうな。

「・・・・私は、夕鈴がいないと夜も明けない」

ぽつりと口に付いて出た本音。

「じゃあ、行動に移せばいいじゃん!!!」

さらっと言う浩大に、黎翔は瞳を見開いた。

「確かにそうだな」

黎翔は杯を卓上に置くと、一気に駆けだした。


「正妃ちゃんに宜しくね~~~待ってるって伝えてよね!!!」

駈け出した黎翔の背中に、浩大の言葉が届く。
そして黎翔の姿が見えなくなると、浩大は大きな嘆息を漏らした。

「全く・・・・何があったか知らないけどさ。
家出は程々にしないと・・・この国が潰れるよ、正妃ちゃん」

誰もいない四阿で一人呟く。

「ホントだよ・・・お疲れさん、浩大」

自分の背後からから声がした。
この気配は―――公子だ。

「なんだ、公子かよ。こんな役回りは金輪際、ゴメンだからね」
「ハイハイ、でも一等酒渡しただろ!!!」
「まぁね~~~確かに美味しかったよん」
「それにしても。
母上も強情だし、父上もだから・・・・喧嘩の仲裁も一苦労するよ」
「まぁ、公子・・・これも世間勉強だよ」

二人で、月を見上げる。
明日の満月は、きっとあの二人はまぁるくなっているんだろうなぁ~と同じ事を考えていた。



終。


2013.08.20 初出



*************

この話の夕鈴side
【優美な兎は何見て跳ねる??】は、この後UPします。



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