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【国王陛下の子守り】
【設定】

夫婦設定

【注意事項】

此方の作品は、『二人の宝珠』の後の話となります。

かなり昔に書いた作品ですので、
現在の本誌の夫婦寄りとは、かなり違うモノになっています。
しかも、夕鈴は正妃になってますので、
何でもOKな方のみお進み下さい。







夕鈴が僕に与えてくれた幸せや贈り物は数多くあれど、
一番の贈り物は今僕の腕の中でスヤスヤと寝息を立てて眠っているこの娘だと思う。


*********


温かな太陽が中天で眩しく輝く頃・・・李順から昼休憩をもぎ取り、
愛しい家族に会うために後宮へと足を運んでみた。

夕鈴の部屋付近まで来ると、賑やかな声が回廊まで響いてくる。
そしてその声に交じって赤ん坊の大きな泣き声までも・・・・・・・・。
黎翔は逸る気持ちで部屋へと飛び込んだ。

案の定、夕鈴の腕の中で真っ赤な顔で泣いているのは、可愛い愛の結晶。
夕鈴の傍では侍女2人程がガラガラや鈴でご機嫌を直してもらおうと躍起になっていた。
それが功をそうしたのか、少しするとウトウトし始めた様で泣き声も治まった。

「夕鈴、大丈夫か?」
「あ、陛下・・・・どうなさいましたか?こんな時間に。
まだ執務中なのでは?」
「いや、休憩を取ったので、君たちに会いに来たのだが」
「左様ですか・・・・有難うございます」

そして黎翔は二人きり・・・・いや家族三人だけにして欲しいと手を上げ、
侍女を下げさせた。

「夕鈴、何だか疲れているみたいだよ。
僕がこの子の面倒みているから、少し休んだ方がいいよ。
倒れたりでもしたら大変だからさ」
「いえ、でも陛下もお忙しい身なのですから、申し訳ないです」
「大丈夫だよ。先程山の様に訂正書簡や再検討事項を李順に叩きつけてきたから、
当分は僕を捜しに来る事なんてないからさ。
大体僕に仕事をさせ過ぎなんだよ・・・・そのせいでこの子ともゆっくり向き合う時間すらない。
そして夕鈴ともね」

黎翔はブツブツと不満を漏す。
そんな黎翔に夕鈴はゆったりと微笑みながら、シッカリと聞いていた。
その様子を見て、黎翔も微笑み返した。

きっとこんな何でもない時間が、幸せと言うモノなのだろうな。
夕鈴を妃に迎えるまで分からなかったが、これが本当の意味での安らぎ。
老師が言っていたものなのだろう・・・・・。

「夕鈴!ほら、たまには夫の言う事も聞く!!!」
「分かりました・・・では一刻程、お願いしても宜しいでしょうか?」
「いいよ、任せて!!!」

夕鈴は黎翔の腕に娘を預けて微笑み掛けると、
そのまま寝室へとゆったりと歩いて行く。

あれは・・・・・寝台に倒れ込むパターンだな。

黎翔はただ『お疲れ様』と、疲れ切った夕鈴の背中に囁いた。
そして自身の腕の中でスヤスヤ眠る娘に『あまり母上を困らせたら駄目だぞ』と言いつつ、
夕鈴と同じ薄茶の髪を優しく撫でた。

黎翔は窓際までそっと揺らしながらゆっくりと歩いて行き外の気持ちの良い風に当てると、
少し赤ん坊には涼し過ぎるのかブルブルと微かに震えていた。

ちょっと寒かったかな・・・・。
赤ん坊って僕たちと体感温度が違うんだ。

新しい発見に嬉しくなりながら、腕の中の宝物に笑ってみた。
こんな軟らかい笑顔をむけるのは、夕鈴以外ではこの子にだけ。
未だに官吏を始め、国民には非情な狼陛下で通している。
まだ、完全には国が安定していないからだ。

この子が大きくなるまでには、この国を平和で豊かにしておかなければ・・・・。

黎翔は、その決意でいつも政務に励んでいる。
これは夕鈴という伴侶を得てから、変わったことで。
以前はイヤイヤながらのところもあったのだが、今は違う・・・明確な意思で取り組んでいるのだ。
まぁ、たまに息抜きと称して抜け出してはいるのだが。


黎翔は周りに誰もいない事を確認したうえで、柔らかそうな桃色の頬をつっついてみた。
でもそれだけでは満足できずに、今度はほっぺに頬ずりしてみた。

こんなところは、臣下の誰にも見せられないな。
黎翔はふっと笑みを浮かべた。

そんな黎翔とは対照的に、『ほえ~~~~ん』とフルフルと身震いして、
か細い声で泣き始める我が子。
そしてそれが段々声高になり、本格的な泣き声になってしまった。

もう、こうなると黎翔の手には負えなくなってくる。
それでもあやしてみようと試みてみた。
隣の部屋で疲れきって眠っているこの子の母の為に・・・・・・。

「お願いだから泣かないでよ。
よしよし・・・・」

黎翔は少し弱り顔になりながらも、軽く左右に揺らして泣くのを止めようと必死になる。
なのに一向に泣きやんでくれそうにない。

我が腕の中でむずがる娘は、全くもって僕の意のままになんかならない・・・・。
たとえ自分がこの国の王であっても。

「泣き止んでくれないと、お前の母が起きてしまうんだ。
もうしばらく寝かせてやりたいから、お願いだから協力してくれよ」

黎翔の吐き出す言葉は、もう赤ん坊に言う台詞ではなくなっている。
それでも腕の中で泣き続けている。
もう自分には手立てはない・・・・・。

その時、おずおずと侍女が傍に寄って来て拱手しながらこう言った。
「陛下恐れながら、おそらくおむつが濡れておいでではないでしょうか?」と・・・・・・。

「そうなのか?」
「はい。では、私どもが替えさせて頂きますので、公主様をお渡し頂けますでしょうか?」

黎翔はその申し出に助かった~~~~と内心で思いつつも、
そんな事はおくびにも出さないで威厳を持って侍女に手渡した。

侍女たちはいつもの事だと手際よくおむつを替えていた。
その手早さに感心しつつ、次は自分が替えてやるんだと興味津津で見ている黎翔に侍女たちが奇異な視線を向けている事には気が付かなかった。
そうして我が子の泣き声はいつしか笑い声に変わっていき、
その後また黎翔の腕の中に返された。

腕の中で上機嫌の我が子。
もうしばらくは大丈夫かな?と回廊傍に建てられた静かな四阿に抱いていき長椅子に腰掛けて、秋真っ最中で紅葉している木々を一緒に眺め堪能してみた。

ニコニコ微笑む我が子の笑顔に癒されながら、秋の昼下がりを楽しんだ。

「そろそろ母上は起きている頃かな?」

立ち上がり部屋へと戻った二人を待っていたのは、温かいお茶と夕鈴の母乳だった。
夕鈴にそっと手渡すと、即座に母乳を美味しそうに飲み始めた。
その光景を夕鈴の隣で目の当たりにすると、母親には到底敵わないなぁ~と思う。

「ところで陛下・・・・大丈夫でしたか?
私がお休みさせて戴いていた間は・・・」
「勿論!!と言いたいところだけど、母の偉大さと大変さが身にしみて分かったよ」
「そうですか・・・・・」
「あっ、でも有意義だったよ。また僕が面倒をみるからね」

目の前の夕鈴が嬉しそうに微笑み、僕へのご褒美に優しい口づけをくれた。


こうして或る日の午後はゆっくりと過ぎていく。
こんな何でも無い日常が一番の幸せなのだと知ったのは、
夕鈴とこの子のお蔭だと 黎翔は心の奥底で感謝していた。



終。





2012.11.02 SNS初載

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