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【設定】

夫婦設定

【注意事項】

此方の作品は、『そして一つの可能性』のラストの
ホンの少し前の話となります。

かなり昔に書いた作品ですので、
現在の本誌の夫婦寄りとは、かなり違うモノになっています。
しかも、夕鈴は正妃になってますので、
何でもOKな方のみお進み下さい。






さすがに掃除婦の恰好のままではマズイと黎翔を説き伏せて待ってもらい、
着替えを済ませて連れて行かれた先はいつもの執務室の戸口の前だった。

「連れていきたい所って、ここですか?」

ここだったらいつもくるところだから、
ワザワザ『行ってからのお楽しみ』と内緒にして連れてくる事も無かったのに・・・・。

黎翔を見上げ小首を傾げて訊ねる夕鈴に、
黎翔は無言のまま妖艶に微笑み執務室の戸口を明け放つ。

「お妃ちゃん!!懐妊おめでと~~~~」

中側の戸口脇に待機していた浩大が、
籠の中にギッシリと入ってる小花を夕鈴の頭上にフンワリと何度も降らせる。
それは天からふわふわ舞い降りる花のわた雪の様で。
やがて夕鈴の立っている足元には色とりどりの花が散らばり、
そこはさながら春の花畑。

「きれい・・・・・・・・」

夕鈴はただその一言のみを発し、後はその光景に見惚れていた。
その顔には頬笑みが浮かんでおり、喜びが溢れている。

「お妃ちゃん!!まずは、この花がオレからの贈り物だよ」
「えっ??これって浩大が用意したの?」
「そうだよ~~~全てオレが捜してきた花だよ~~気に入ってくれた??」
「ええっっ!」

もう春は近いとはいえ、まだ冬の最中。
これだけの種類の花を捜すのはかなり骨が折れたはず・・・。
それを私とお腹のこの子の為に。

「浩大・・・・・こんなに綺麗な花々を、本当に有難う」

夕鈴は浩大にキチンと向き合い満面の笑みを浮かべて、
感謝の言葉を唇に乗せた。
黎翔は隣りに静かに佇んでいたが、夕鈴がその花を満喫しただろう頃を見計らってそっと腰に手を添え、奥へと進むように誘導していく。
黎翔に連れられ着いた先は執務室でも一番奥にある談話室。
卓を囲むように四方に長椅子が置かれている会議室のようなところであり、
そこには李順と張老師が待っていた。

「おう、遅かったのぅ~待ちくたびれたわい!!」
「さ、さ・・・夕鈴殿は此方に」

四方の長椅子の内、外からの暖かい陽の光りが降り注ぐ背もたれや敷物の置いてある長椅子を勧められた。
夕鈴は黎翔とともにゆっくりと腰掛けて卓をみると、
卓上には果物やあっさりめの料理が所狭しと並んでいる。

「夕鈴殿・・・最近あまり食が進まないと陛下より聞き及びまして、
こちらの料理を用意させました。
これは私事に為りますが細君が懐妊した際に好んで食していたものでして。
実は細君に相談しましたところ、この様な料理が食し易かったと申しましたもので」
「まぁ、李順さんの奥様が・・・・あっさりしていそうでこれなら食せそうです!!
有難うございます」

夕鈴はニッコリ微笑む。
そして折角用意して下さっているのだからと、
傍に置いてあったお皿にとりわけ一口食べてみた。

「わぁ~~これ、とっても美味しいです。
あっさりしてて・・・これなら結構入りそう。
それに、この飲み物は果物の絞ったモノですね・・・・。
スッゴク瑞々しい香りがして美味しそう!!」

このところでは珍しく嬉しそうに食べている夕鈴を見て、
知らぬ間に黎翔の表情も明るいモノになっていく。

「夕鈴、美味しい?」
「はいっっ。とっても美味しいです!!」

夕鈴の明るい声に、周りの李順達も安堵する。

「では、美味しそうに食べているところ悪いがの~~。
これはワシからの贈りものじゃ!!」

張老師はその身体に対しては大きな荷物を抱え持ち、
夕鈴に差し出した。

「なんですか?これは・・・」
「まぁ、開けてみるのじゃな!!」

受け取った包みを開いてみると、そこに入っていたモノは・・・・。
下町の妊婦が好んで着ている妊婦の為の服。

でもこの王宮ではキチンとお抱えの仕立て人がいて、
妊婦服はもう何着も作られているので取り立てては必要はない。
夕鈴は訳が解らず、目が真ん丸になる。

「あの・・・・有難うございます。
この服はとっても嬉しいのですが、一体いつ着ればいいのでしょうか?」
「それは、その眼鏡に聞く事じゃ!!
ワシの贈り物はここまでじゃからな」

老師は訳知り顔で顎鬚を撫でながら、李順を見ている。
益々訳が解らない夕鈴はポカンとした表情に変っていた。

「では、僕が説明するよ・・夕鈴」
「陛下がですか?」
「そうだよ!!これは僕も関係している事だからね。
これは、王宮で着る為のモノでは無いよ!!
これは・・・・・下町に帰省した時のものだよ」
「??」
「夕鈴、僕と一緒に帰省しよう!!」
「えっ???でも・・・・そんな事は出来ませんよ」

夕鈴は分かっていた・・・もうバイトの身分では無くれっきとした王妃で有るから、おいそれとは帰省など出来無い事を。
それを寂しいとは思った事はあれど、でも自分が選んだ路だから仕方ないと我慢していた。

「夕鈴殿・・・私からの贈り物は、陛下と一緒に帰省して頂く事です。
その為に陛下にはこの処、詰めて書簡を処理して頂いていたのです」

だから夜も遅くなっていたり朝も会話もそこそこに執務室に行っていたのか・・・と、最近の黎翔の行動に納得がいった。
考え込んでいる夕鈴に、黎翔は下から覗き込んで囁いた。

「夕鈴!ゆっくりと下町を満喫しよう」
「はっ、はい!!有難うございます」

夕鈴は頬を薔薇色に染め、嬉しさを体現する。

「じゃあ、贈り物も無事に渡せたのですから、後はゆっくり料理でも・・・」

李順の仕切りで、乾杯の合図となり賑やかな食事となった。
この日の夕鈴はこのところでは一番の食欲となり、
その様子に黎翔の心配事も何処かに吹き飛んでいっていた。
やがて卓上の料理も全て無くなり、賑やかな『ぱーてぃ』もお開きとなった。


そしてその夜・・・・・・後宮正妃の間の長椅子で寛ぐ二人。
その表情は穏やかで、ここが二人にとっての癒しの空間であるという事が分かる。

夕鈴はこのところの気鬱も何処かに消え去り、
想いはもうすでに下町に飛んでいるようで。
そんな夕鈴を見詰める紅い瞳はゆったりとしており、
その指は愛しい妃の指に絡ませていた。

「夕鈴・・・・今まで気がついてあげられなくてゴメンね」
「えっ?何をですか?」
「本当は初めての懐妊と言う事もあって不安で一杯だったのに、
こんな窮屈な後宮に閉じ込めていて」
「そんな事は有りません・・・だってここには黎翔さまもいらっしゃいますし。
でも帰省出来るなんて思ってもみなかったから、本当に嬉しいです」

黎翔を見詰める茶色の瞳は、幸せに満ち満ちていた。
そしてそのまま嬉しさを体現すべく、
身を乗り出し黎翔の唇に自身の柔らかい唇をそっと優しく重ね合わせた。


そして、仲睦ましい国王夫妻の夜は更けていく・・・・・・・。
一晩開ければ二人が下町に帰省する日。
夕鈴は期待に胸を膨らませ、いとしい腕に抱かれて眠るのだった。




終。



2013.02.19 SNS初載


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瓔悠

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