【秘密の遊宴】・前編
2013年02月21日 (木) | 編集 |
【設定】

夫婦設定

【注意事項】

此方の作品は、『そして一つの可能性』のラストの
ホンの少し前の話となります。

かなり昔に書いた作品ですので、
現在の本誌の夫婦寄りとは、かなり違うモノになっています。
しかも、夕鈴は正妃になってますので、
何でもOKな方のみお進み下さい。







「はぁ~~~~~」
「何ですか、陛下・・・・随分と深い溜息ですね。
その溜息の訳は訊かなくとも分かるので敢えては訊きませんが。
兎に角、お早く書簡を山を減らして下さい」
「訊かなくとも分かる?では、言ってみろ!!」

筆を置き完全に執務放棄している黎翔を横目で睨みつつ、
李順は『またか』と言う顔で悠然と答える。

「どうせ、正妃様に『陛下なんて大嫌い』とでも言われたんでしょう」
「お前、夕鈴から聞いたのか?」
「聞いてませんよ」

やっぱりそうなのかと自分の当てずっぽうが当たっていても、
さほど驚きもせずに李順は淡々と書簡の仕分けを行っている。
それに引き換え、黎翔は机に突っ伏して何度も溜息を繰り返す。

溜め息を吐きたいのは、此方のほうですよ。
これで、今日はまた書簡の山が減らないんでしょうね・・・・・。

李順はこの事態の先・・・そう、また政務が滞るという事が読めるからか、
早く黎翔の憂い事を晴らそうと声を掛けてみる。

「陛下・・・・・正妃様が『嫌い』と仰ってもそれは真(まこと)ではない筈。
だから今宵は早く後宮にお戻りに為られて、
夫婦で睦ましく過ごされたら如何ですか?
それには、ほら!まずこの書簡を片して下さい」
「そうだね~~~夕鈴が僕を嫌いになる筈はないよね・・・・・。
では、サッサと片付けるとするか」

本気モードに突入した黎翔の処理能力は、いつもの3倍はUPする。
そうして夕闇が迫りくる頃、卓上に積まれていた書簡たちはキレイさっぱり消え失せた。

「では、後宮の夕鈴のもとへ参る」

これから愛する妻の元に行くと言うのに、何故か緊張の面持ちで向かおうとする主君の姿がどうも似つかわしくなく、李順はそっと声を掛けた。

「陛下・・・・これは私の経験上申し上げますと。
正妃様は初めての懐妊と言う事で、情緒不安定になっておられるのですよ。
だから『嫌い』と仰られたのも少し機嫌を損なったくらいですから、
あまりお気に為さらずに・・・ウチの細君もそうでしたから」
「あの大人しく、いつも慎ましやかな奥方がか?」
「そうですよ、始めはビックリ致しましたがね」
「そうか・・・・・・・・・夕鈴もそうなのか」
「だから、『こうしろ、ああしろ』はあまり仰らない方がいいですよ」

珍しく李順は夫婦間の事にアドバイスしてくる。
黎翔は腕を組みつつ、最近の夕鈴の様子を思い返していた。

そう言えば・・・食事が余り入らない様子に、
自分が『お腹の子の為に食べた方がイイ』と言えば、涙目になっていた様な。

アレがイケなかったのか???
確かにあれからムクれていたような・・・。

「如何すれば、夕鈴が愉しく過ごせるのだろうか??」
「そうですね・・・」

二人が思案している処に、第3者の声があり。

「それはじゃの、ズバリ!ぱーていをするのじゃ!!」

黎翔が後ろを振り返ると、顎鬚を撫でつつ自信たっぷりに言い切った張老師の姿が。

「パーティ?」
「そうじゃ!!懐妊中はどうしても行動の制限も増えてきて、普通の妊婦でさえ気鬱になるものじゃ!
それにも増して王の子を宿しているあの娘っ子は、更にお腹の子の為に・・・とあれじゃこれじゃと制限されるからのぉ。
だから、ここはパァ~とぱーていでもして楽しませるとかがいいと思うんじゃが」
「まぁ確かに、あの働き者の夕鈴殿ですからね・・・・。
動くな!大人しく!!と言われれてもそれを甘受出来無いでしょうし」

三人は、夕鈴の以前の働きぶりを思い出していた。
確かに正妃に為っても、お掃除バイトはしていた・・・・それも、正妃としての責務を果たしながら。
あれだけ立ち動いていたのを、制限されてはご機嫌斜めになっても仕方が無いというもの。

「そうだな。パーティを内輪で開くとするか。
では、それぞれ夕鈴には内緒ということで準備して驚かそう。
何か名目がないとな・・・・・夕鈴の誕生日はまだだし、何か適当なものがないか」

「それじゃあ~~~懐妊祝いっていうのはどう???」

割り込んできたのは、窓枠に足を掛けニヤニヤ笑って観察していた浩大だった。

「お前、そういえば夕鈴の護衛は?」
「それは、他の奴に任せて来たっ!お妃ちゃんがさぁ~~」
「夕鈴に何かあったのか???」

黎翔は急に緊迫した声で、浩大に詰め寄る。

「ちょっ、ちょい待って!!何もないから。
ただ、今日は一日落ち込んでいてさ、どうも陛下に『大嫌い』って言ったことが気に為っていたみたい。
だから、今日は早目に会いに行ってやった方がイイよって伝えに来てやったの!!!」
「そうか・・・・・・」

『落ち込んでいた』という浩大の言葉に、黎翔までも気落ちしてくる。
そこにすかさず、老師が茶々を入れる。

「陛下!ここはドド~~ンと愉しくぱーていをしようじゃないかの!!」
「老師・・・一つ言っておくが、『ぱーてい』ではなくて『パーティ』だ」
「・・・・・・どうでもいいですが、まだ財政的には十分潤ってはいないのですから、あまりお金を掛けないで下さいよ」

そうして四人は頭を寄せて、ヒソヒソと詳しく宴の内容を相談し始めたのであった。
気がつけばすっかりと遅く為っており、黎翔は慌てて夕鈴の待つ後宮へと足を向けた。



「夕鈴、今帰ったが。今日は一日・・・・・・」

言い終わる前に夕鈴に抱きつかれ予想もしていなかった黎翔は、
抱き留めながら後ろにひっくり返りそうになる。
そこを寸での所で踏ん張って、両手で夕鈴を抱きしめ返した。
そして耳元に二人だけにしか聞えない声で話し始めた。

「夕鈴、ビックリしたんだけど、どうしたの?」
「だって・・・・・・・今日はお戻りに為らないのでは?と思ってしまって」
「それは朝の件のせい?」
「はい・・・・・・・・。ゴメンナサイ、私・・・大嫌いだなんて言って」
「いいんだよ・・・・僕ももっと夕鈴の事を考えてあげるべきだったよ。
君がどうしたいのかを」

二人が仲睦ましく内緒話をしている様子から、
侍女達は安堵したようで音も無く下がって行った。

「へいか・・・・・・」
「二人きりの時には名前で呼んでよ」
「でも、二人では無い・・・ですよ・・・って?
あれ?誰もいない」
「侍女達だったら、先程出て行ったよ。
ほら、だから夕鈴・・・キチンと呼んでよ」
「はい・・・・黎翔さま、おかえりなさいませ」
「ただいま、僕の奥さん」

そして二人は朝のわだかまりも消え失せ、おかえりなさいの熱い口づけを交わした。



続く。






2013.02.03 SNS初載


関連記事
スポンサーサイト


コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック