【月の光、満ち満ちて】
2016年08月22日 (月) | 編集 |
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夫婦設定 ・ 原作寄り


****

こちらのお話しは、以前にこのブログにて『宝探し企画』を実施した時に
見事探し当てられた方へご褒美にリク権をお渡ししていました。

その中のお一人から先月リクを頂戴いたしまして、
大変お待たせしてしまいましたが、
ようやく本日書き上がりましたので、リク主様に差し上げたモノです。

そのリク主さまからのご厚意でこちらにもUPさせて頂きます。
りこ様、誠に有り難うございます。


それでは
リク・・・・・『お誕生日ネタで』
ということでしたので、夕鈴の誕生日のお話を。















暦を見て・・・・・夕鈴はあることに気がついた。
今日は、自分の生誕日だということを。

「ここにいると、自分の事なんて忘れてしまうのよね」

そう、私は今や、狼陛下の唯一の妃。
陛下のお嫁さんなのだ。

正妃でも無いのに唯一の妃だということも有ってか、
近頃は公式行事にも参加させられている。

行事についての勉強なんかもさせられて、毎日がフル回転で忙しい。
だから自分の事なんて後回しで。

まぁ、ここにいれば、自分の年が一つ増える事なんて些末なことなんだけど。
昔の事を思うと・・・少し感傷的になる。


*****

「ほらっ、今日はお前の生誕日だからさ」
「えっ、私に?」
「そうだよ!!ほら、早く受け取れよ!!」
「あっ、うん・・・・・・・・・あのさ、ありがと」
「おう」

綺麗に包装された包みを、ぶっきらぼうに私の胸に押し付ける几鍔。
いつもなら『アンタなんかから貰ったら、後が怖いからいらない!』なんて憎まれ口を叩くところだけど、その日だけは素直に受け取っていたっけ。

やっぱり、生誕の贈り物は特別なモノで。
自分だけに贈られるとあってか、嬉しいものだった。

明玉からも毎年貰っていた。
一番近い生誕の贈り物は、淡い淡い桃色の口紅だった。
年頃になっても、口紅一つ持っていない私を心配して贈ってくれた。
嬉しかったけど、なんだか照れくさくて引き出しにしまい込んだままだ。


青慎からは、いつも同じモノ。
手荒れのクリームだったな・・・・。
毎年、冬になると手荒れがひどくなるのを心配してくれていたっけ。
あちこちでリサーチするみたいで、毎年効能が上がっているのは青慎の優しい気遣いの現れ。
それは、ここに来るときも持ってきた。
掃除婦のバイトの時には重宝していた・・・・。



************


戻らない刻。
いろんな人に祝ってもらってあんな賑やかな生誕日は、ここでは叶えられない。

それでもいい。
だってそれ以上に、私は一生分の贈り物を貰ったから。
初めての、たった一つの恋の成就。
大切な大切な想い。
生涯、命尽きるまで一緒に生きていきたいと思える愛しい人がいる・・・・。
それだけで私は幸せで。
だから、もう何もいらない。


「夕鈴?ぼぉ~としてるみたいだけど、疲れたの?」
「ほぇ??・・・・・って、陛下っっ!!お戻りだったのですか??
申し訳有りません!!!」
「いいよ、夕鈴の珍しい表情を見れたから」
「??」
「何かを考え込んでいる物憂げな表情を・・・ね。
色っぽくてそそられたよ」
「そそられたって・・・・・・」

恥ずかしくて頬を赤らめる夕鈴。
そこにすかさず、色づいた頬に唇を落とす黎翔。
二人きりの至福の刻。

「で、何を考えていたのかな?僕のお嫁さんは」
「いえ、特には・・・・」
「え?本当??何も考えていなかった訳では無いでしょ。
あんなに考え込んでいるみたいだったのに」
「ホントに何もないですよ。
そうですね~~今日はかなり李順さんにしごかれたから、疲れたなぁ~ってくらいですよ」
「そうなの?」
「はい」
「ふぅ~~ん、まぁいいや。
夕鈴、今から散歩しない?」

黎翔は、にこやかに夕鈴の手を引く。
一瞬、目を見開いたけれど、夕鈴も微笑んで黎翔の手を握り返した。

「はい、行きましょう」

二人で回廊から庭園へ降り立つ。
天を見上げると、光輝く満月。

今日は白く輝いて、いつもよりも眩しい。
見ていると目がチカチカしてくる感じで・・・。
でも注がれる光は、太陽のギラギラした光に反して柔らかく優しい。

「ふぅ~~~」

夕鈴は見上げたまま息を吐き、右手の掌を上にして天へと掲げた。

「ふふ、お月様には手が届きませんね」
「欲しいの?」
「あんなに綺麗に輝いているから、触ってみたいです」
「じゃあ、僕が夕鈴にあげるよ」
「えっ??」


黎翔は、夕鈴をいざなって近くの四阿へと連れて行く。
そして目の前に見える四阿の入口には、結構深めの青磁の水盤が卓と共に置かれてある。
その水盤に近寄ると、その容器の淵スレスレまで水が張っているのが見えた。

「これは・・・・・・・・・」

夕鈴は言葉を失った。
その水盤の水面に映し出されていたのは、天上で輝く月だった。

白くて、丸くて。
燦然と盤上に優美な姿を湛えている。

「綺麗ですね」
「うん、これなら夕鈴・・・・・月を触ることが出来るよ」
「でも、これは水面に映し出されているから、触ろうとするとさざ波が立って消えてしまいますよ」
「そうかな?」
「はい・・・・・これは、見ているだけが良いんだと思います」
「じゃあ、僕が取ってあげるよ。
あの月を」

そう言うと、黎翔は水盤に手を伸ばし、そっと手を差し入れた。
やはり手を差し入れたところからさざ波が立って、丸い月の形が崩れていく。

「ふふ、やっぱり崩れてしまいましたね」
「ううん、僕は今、月を手にしてるよ」
「え?」

そう言って、水からゆっくりと出した手の形は握られている。

「今、握りしめた掌の中に月があるんだけど。
夕鈴、もらってくれるかな?」
「ふふ、はい、では頂きましょう」

黎翔の方便だと思った夕鈴は微笑みながら、黎翔の握られた拳に両手を添えた。

「じゃあ、夕鈴に月を」

そう言って黎翔は夕鈴の両手の掌に、自分の拳の中のモノを落とした。

「こ、これは・・・・・・・・・・・・」
「夕鈴、生誕おめでとう」
「えっっ??陛下、ご存じだったのですか?
今日が私の生誕の日だと」
「もちろんだよ、だって夕鈴は僕の大切なお嫁さんなんだよ。
お嫁さんの生誕の日くらい覚えておかないと、夫失格だからね」
「・・・・・・・・・・・・・あ、ありがとうございます」

両手の掌の上にあるのは、白く輝く大きな真珠玉の首飾り。
艶々で丸くて、まるで優美に鎮座する天上の月の様。

「ほら、夕鈴。
僕が付けてあげるから、ジッとしていてね」

黎翔は夕鈴の後ろに回って、優しくその首飾りを付けた。
水に浸かっていた真珠玉は、夕鈴の胸元にひんやりと吸い付いた。

「綺麗だよ、夕鈴。
純真な君にぴったりだ」
「そうですか?有り難うございます」
「夕鈴・・・・・・生まれてきてくれて、有り難う。
僕は君がいるだけで満足だよ。
だから、これから先の生誕の日も祝わせてほしい」
「はい・・・・・・・私こそ、いつまでも黎翔様のお傍に置いて下さいね」

二人は月の光の中で、抱き締め合った。
夕鈴の胸元の月は、黎翔の身体にも密着して、光を放つ。
今、まさに二人は、月をも抱き締めた。


月の光、満ち満ちて。
二人の愛も、満ち満ちる。



終。

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