【小犬の手も借りたい??・4】
2016年06月25日 (土) | 編集 |
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臨時妃 ・ 原作寄り


【注意事項】

こちらの作品は、前ブログ『遥か悠遠の朱空へ』にて公開していた作品です。
今回こちらへ移行するに伴い少しだけ手直ししておりますが、
書いた当時の陛下と夕鈴の関係が浅いものでありましたので、
当時の雰囲気を残すべく糖度はあまりありません。
そのことを踏まえた上でお読みいただけます様、宜しくお願いいたします。   

なお、この話は【初夏の一日 前・中・後編】の後日談となります。

【初夏の一日 前編】
【初夏の一日 中編】
【初夏の一日 後編】 











市場への道すがら。
夕鈴は、黎翔が一緒にいることなんて忘れているかのように、
頭の中で買い物リストのおさらいをしていた。

今日の特売は何だろう。
出来るなら、何日か分を作り置きして帰りたいから、
効率よく店を回って・・・・。

夕鈴は、先程の事なんてすっかりと頭の中から締め出し、
下町主婦ライフを満喫し始めていた。


買い物籠を持ち僕の前を歩く夕鈴は、足取りも軽く何とも楽しそうだ。
ここが本来の夕鈴の居場所なのかもしれない・・・いつも後宮で窮屈な思いをさせているから。

黎翔はウキウキしながら歩いている夕鈴の様子を見て、少し自嘲気味になる。
そして更に考え込む・・・。

でも例え窮屈でここへ帰りたいと懇願されたとしても、もう僕は夕鈴を離せそうにない。
こんなに一人を深く想う恋心があるなどと、昔の自分からは想像なんて到底出来ないが・・・。

前を歩く夕鈴に、見るからに人の良さそうな中年女性が声を掛ける。

「あら夕鈴ちゃん、買い物かい?
近頃見掛けないと思ったら、王宮に住み込みで働いているんだってね」
「八百屋のおばさん!おじさんも元気です?後でお店に寄ろうと思っていたの。
私の仕事ですか・・・ええまぁ、掃除婦としてですけどね」

まさか狼陛下の臨時花嫁として、後宮でお務めしています・・・なんてことは、口が裂けても言えず曖昧に誤魔化す。
しかし本当に掃除婦のバイトも掛け持ちなのだから、あながちウソでもない。
そしてその女性は更に続ける。

「でも夕鈴ちゃん、王宮務めなんか辞めて帰っておいでよ。
下町にも仕事はいくらでもあるじゃないか?
王宮には冷酷非情の狼陛下もいらっしゃるんだろ・・・そんなおっかない方に会って粗相なんかしたら大変だからさ」
「おばさん、大丈夫よ。ほら掃除する場所も、陛下には会ったりしない隅っこを掃除しているから!!心配してくれてありがとう」
「そうかい、くれぐれも気を付けるんだよ。
あらいけない、そろそろ店に戻らないとね。じゃあまた後でね」

手を大きく振りながら、その女性は大股で去って行く。
夕鈴は振り返って李翔に、にっこりと極上の笑みを見せる。

「李翔さん、王宮にはおっかない方がいるんですって!!
粗相したらお手打ちに合うのかしら?」
「しないよ~~夕鈴には。全く下町では、王はそんな風に認識されているんだ」
「みたいですね~王宮にいる国王陛下なんて、まぁ会う事なんてない雲の上の方ですから。
皆、聞こえてくる噂しか信じないんですよ。さてと買い物、買い物」

夕鈴は先程のご婦人の話など意に介さないと言うように、スタスタとお目当ての店へと向かって先に歩いて行く。
恰幅の良い主人が経営する肉屋、先程のご婦人の八百屋、お喋り好きそうな老女が店番をしている醤油屋など、次々に必要な店にだけ寄り必要なものだけ購入して行く。
黎翔は夕鈴の買い物の手際の良さに、惚れ惚れとした眼差しで眺めているだけで何も手伝う事が出来なかった。

「よう、もう家の事は終わったのかよ。それよりまだアンタいたのか?
早く帰れと言ったじゃないか。わかんないヤツだな」

二人並んで歩いているところに、敵愾心むき出しの几鍔が近寄ってきた。

「几鍔、こんなところで何しているの?
それよりも、この人はアンタが突っ掛かってもいい人じゃないんだから、ほっといて!!」
「お前はお人好しだから、また変なヤツに騙されているんじゃないかと心配になるんだよ」
「な、なんでアンタなんかに心配されなきゃならないのよ。
私の心配よりも自分の心配でもしたら?
アンタも好い女性(ひと)はいないでしょ!!」
「ホントに可愛げの無いヤツだな。あーーー、もういいよ!めんどくせーーー」

几鍔は言い放つと夕鈴の買い物籠の中を覗き込み、中身を確かめる。

「お前、今日の夕飯何にするつもりかは知らんが、角の豆腐屋が特売してたぞ」

『特売』と聞いて、夕鈴の瞳はキラキラ輝きを放ち、
両眼には特売の文字が浮かび上がる。

「几鍔、角の豆腐屋さんだよね♪
李翔さん、スミマセンが待ってて頂けますか?走って行ってきますので!!」

夕鈴は言い終わる前には、走り出していた。
そんな夕鈴の背を見つめながら可笑しくて堪らないと言わんばかりに、
黎翔はクスクスと口元に笑みを浮かべる。
そして紅玉の双眸には、愛しさを乗せて。

ホントに夕鈴は退屈しないよね、見てるだけで愉しいよ。

夕鈴はそんな事を思われていたとは露知らず、一目散に角の豆腐屋を目指していた。

「やっと邪魔なヤツを追い出したからっと・・・おい、お前はまだ夕鈴に付き纏っているのかよ!
早く自分ん家に帰りなと言った筈だがな。大体お前みたいな王宮務めのお坊ちゃん役人は女なんか選り取りみどりだろうに、なんでこんな下町に住んでいるような庶民の女に手を出すんだよ!
アイツは遊び慣れてる女じゃねえから、さっさと手を引きな!!」

几鍔は黎翔に向って一気に捲し立てる。
けれど当の黎翔はというと涼しい顔で飄々としていた。
まるで几鍔が言っている事など聞こえていないかのように・・・。

「金貸し君が言いたい事はそれだけなのかな。
じゃあ次は僕が言わせてもらうとしようか・・・大体、君は夕鈴をどう思っているのかな?」

黎翔は、まず几鍔の本意が何処にあるかを確かめたかったのである。

「はぁ?オレがアイツをどう思っているのかって?
そんな事どうでもいいじゃないかよ。それが何か関係があるのかよ!!」
「そりゃ、大いに関係あるよ・・・君の考えを聞いておかないと僕も答えようがないし、少なくとも君が夕鈴をどうしようとしているかによっては対応を考えないといけないしね」

几鍔の事なんかそっちのけで、聞こえよがしに自分の考えをぶちまけていた。

「アイツは、ただの幼馴染だよ!それ以上でもそれ以下でもねえよ」
「ふうん。そうなんだ・・・」

一応納得した様に返事はしたが、黎翔が几鍔の言葉を全て鵜呑みにしたかどうかは置いといてなのだが。

「じゃあ、お前はどうなんだよ!アイツのことは!!」
「そうだね・・・僕にとって夕鈴は必要な(まぁ僕だけの奥さんだけどね・・・)人かな!?」
「必要?やっぱ利用しているだけなのかよ!
だから役人ってヤツは信用ならないんだよ!
アイツを泣かせるようなことがあれば、承知しないんだからなっっ。
兎に角、それだけは覚えておけよ」
「そうだね、覚えておくとするよ。じゃあね、僕は夕鈴を探しに行くからまたね・・・金貸し君」

黎翔は手を振り振り、早々に立ち去ろうとする。
その背中に几鍔は大きな声で怒鳴る。

「オイ、金貸し君じゃあねえよ、几鍔という立派な名前があるんだよ。覚えとけ」
「あっ、そうだね・・・じゃあ、几鍔君失礼するよ」

その場を立ち去りながら、黎翔は几鍔の本意が少し分かった様な気がしていた。

自分と同じ気持ちなんだと。
大切に守りたいと・・・・ただ大事に守りたいだけなんだと。
手段や意味が違っているとしても____。

その頃、話題にされていた夕鈴はというと、豆腐屋で特売の厚揚げを買えてホクホク顔をして軽い足取りで通りを歩いていた。
几鍔のお陰であるのは癪に障るが・・・兎に角夜のおかずが一品増えたのである、これ以上の喜びはない。
そして夕鈴は角を曲がった所で、丁度歩いて来た黎翔と出会ったのであった。

「李翔さん、大丈夫でしたか?几鍔が何か言ってきたんじゃないですか??
スミマセン・・・几鍔は根っからのワルではないのですが、口が悪くて。
だからかいつも騒動に巻き込まれて更に騒動を大きくするんですよね。
結構面倒見はいいので、沢山手下というか慕って付いていく子分がいるんですが。
まぁ、ウチにも私がいないので、見に来てくれている様なんですが・・・(来なくていいんだけど!!)でも、青慎は頼っちゃっているみたいなんですよね・・・」
「そうなんだ・・・」

夕鈴はフゥと息を吐きだしながら、無意識に几鍔の弁護をする。
それに対して、黎翔が良い感情を持つはずはない。

目の前の黎翔を見ると何だか尻尾と耳が垂れて、置いてけぼりをくらった元気のない小犬のような。
夕鈴は思わず目を擦って確認をすると、黎翔はシュンと肩を落としているみたいだった。

えーなんで?何か悪い事言った??几鍔の事言っただけだし。
でもアイツを褒めたつもりはないんだけど・・・でもまずかったかな?
どうも陛下と几鍔は気が合いそうにないしね・・・。
これ以降はこの話題は避けた方がいいわよね。

夕鈴は黎翔の様子を見て、瞬時に几鍔と何かあったのだと察しが付いた。
それが何かは分からなかったけれど。
このまま気落ちされておく訳にはいかず、黎翔を浮上させる手立てを首を傾げながら考える。

何がいいかしら??私に出来る事・・・う~~ん、家事くらいしか取り柄がないのはイタイわよねぇ。
まぁいいわ!夕ご飯前に王宮に帰ろうと思っていたけど、青慎と3人でご飯を食べてから帰る事にしましょうか。
暖かいご飯を食べる機会はほとんどないのだから。
珠には庶民料理もいいでしょ!!!

夕鈴は『我ながらいい案だ』と首と上下に振りながら、納得していた。




続く。




2012.06.04、06、08、16 ・ 2012.07.03、11 SNS初載




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コメント
この記事へのコメント
夕鈴のたまにはいいでしょ、<暖かい庶民料理も>は陛下にとっては極上の出来事。
何かあったのだと察した夕鈴なんですけど、沿い言うところは察することができるのに陛下の気持ちには疎い(笑)
陛下も悪いのですが・・・・。

今日は良いお天気です。
お洗濯日和でウキウキ。
では!
2016/06/26(日) 06:39:38 | URL | ママ #-[ 編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2016/06/28(火) 21:56:29 | | #[ 編集]
ママ様

おはようございます~コメント有り難うございます
返信お待たせしました!!

確かに・・・・ここじゃなければ、味わえないもので。
一番のご馳走だよね。

まぁ、夕鈴としては
余り関わりたくないという気持ちも少しあるもかも?!


こちら今日は久々のお天気。
洗濯物が外に干せそうなので、ウキウキです。
やっぱ、洗濯物は外のお日様で乾かしたいよね~~~


2016/07/02(土) 09:01:34 | URL | 瓔悠 #-[ 編集]
タイフーン様

おはようございます~コメント有り難うございます
返信お待たせしました!!

お久しぶりで~~す。
何処にもタイフーンさんのコメントが無かったから
多分リアの方が忙しいのだろうなぁ~と察しはついていたのですが。

体調不良になっていないか?!が心配でした~~
でも元気そうで良かった~~~

そこそこお話増えてますが。
私もここのところ忙しくて、ご無沙汰でした。
これから頑張って書いていきますので
宜しくお願いしま~~す💛


2016/07/02(土) 09:16:02 | URL | 瓔悠 #-[ 編集]
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