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【設定】

臨時妃 ・ 原作寄り


【注意事項】

こちらの作品は、前ブログ『遥か悠遠の朱空へ』にて公開していた作品です。
今回こちらへ移行するに伴い少しだけ手直ししておりますが、
書いた当時の陛下と夕鈴の関係が浅いものでありましたので、
当時の雰囲気を残すべく糖度はあまりありません。
そのことを踏まえた上でお読みいただけます様、宜しくお願いいたします。   

なお、この話は【初夏の一日 前・中・後編】の後日談となります。

【初夏の一日 前編】
【初夏の一日 中編】
【初夏の一日 後編】 







夕鈴は無言のまま家に入り、居間に案内し椅子を勧める。
座ってもらうとすぐさま目の前の李翔である黎翔に問いかける。

「陛下!どうしてここにいるんでしょう?王宮で執務中ではないでしょうか?」
「夕鈴、落ち着いてよ~~僕、今李翔だし・・・この前李順と秘密の相談事していたでしょ。
実は偶然だけど、聞いていたんだよ。で、今日も偶然だけど王宮を出て行こうとする夕鈴を見かけたから、先回りして馭者に代わってもらったんだ。
そしたら夕鈴、気づかなかったから可笑しくて・・・」

偶然?
そんなに偶然ってあるの?
で?
だから?
どうしてついてきたの?

李翔である黎翔の、のほほんとした言葉に夕鈴はイラッとしていた。
自分の様子とは真逆のいたずらっ子の様に悪びれない黎翔に、
夕鈴はハァーーーと深い溜息さえ出てくる。

でも馬車から降りる時、馭者さんの肩が上下に揺れていた理由が今やっと理解出来た事だけは良かったが。

「分かりました、では早く王宮にお戻りください。
王宮では、多分李順さんや宰相さんが怒ってますよ」

兎に角、早く帰って下さい!
後で私が李順さんに後で何て言われるのか、たまったもんじゃないっっ!

「いいよ、気にしなくても・・・二人には私がいない間、しっかり政務を取り仕切ってもらおう」

いえ、私は気にします!!ええ、すごく気にします!!
どうして陛下はそんなに飄々としているんですか・・・。

「でも、陛下でないとダメな案件もきっとあると思うんです・・・・だから、戻りましょ」

夕鈴は本音をグッと堪えて、今は黎翔に穏便に帰ってもらおうと促す。
ところが何故か、いきなり黎翔は小犬から狼陛下に変わっていた。
下町にはそぐわない空気を纏って・・・。

夕鈴は本当に他の人の事ばかり気にする。
もっと僕の事を気にして欲しい。
ここは、きちんと夕鈴に分からせておく必要がありそうだ。

「君はどこにいても私の妃であるし、王である私が自分の妃の行動を気にするのは当然だ。
ましてや、妃の行くところに私がついて行ってはいけないということもあるまい」

これで、少しは分かってくれるのだろうか。

「私は、今、妃でも何でもないタダの庶民なんですよ。
それに、ここは下町であって王宮ではないのだから、演技はいらないと思いますが・・・」

ダメだ、やっぱり分かってくれそうもない!
ここは違う言い方でと。

「僕はいつでも夕鈴の傍にいたいし、帰省するのなら護衛する人もいるからね。
それに衣替えをするための休みは今日一日しかないのだから、
その休みを有効に使うには誰か手伝いが必要だろう。
だから付いて行くことにしたんだよ。執務は帰ったらきちんとこなすから」

夕鈴は目をゴシゴシとこすってみた。
だって、自分の目がおかしいのか?陛下のお尻に茶色いフサフサしたしっぽが大きく左右に揺れているのが見える気がするから。
どうも納得はいかないがここで問答を繰り返すのも時間の無駄だし、
王宮関連の不用意な発言は避けた方がいいと判断した夕鈴は、
お客である黎翔の為にお茶を出すことにした。

「分かりました、李翔さんはそこに座っていて下さいね」

一言告げると台所に向かった。
そしていつも通り手際よくお茶の用意をしつつ、夕鈴は考え込んでいた。

どうして狼陛下がでてくるのよ・・・・全く。
それに護衛だって、浩大がついて来ているとばかり思っていたし、陛下がついてくる必要なんてないのよね。
手伝いって、何を手伝ってくれると言うの?
几鍔にあれ以上問い詰められる前に陛下には家に入ってもらったけど、
あのまま几鍔同様帰ってもらった方が良かったのではないのかしら・・・。

考えてみても黎翔の行動の意味が分からず、夕鈴は気がつくと人知れず大きな溜息をついていた。

そんな様子を開け放たれた窓の外から、ニヤニヤしながら見ている人物がいた。
そう、夕鈴が護衛として来ているのでは?と予想していた浩大である。

「お妃ちゃん、陛下が来てるみたいだね。
まぁ、イロイロと陛下にでも手伝ってもらえば!!愉しいと思うよ」
「浩大!!急に声を掛けないでよっっ!!
ビックリしてお茶がこぼれそうになったじゃない、全く人事だと思って」

そのまま浩大は、アハハと笑いながら外の木に軽々と登っていく。
どうやら木の上から警護するようである。
台所から出た夕鈴は、居間で椅子に座って周囲をキョロキョロ見回している黎翔にお茶を差し出す。

「あのう・・・私はこれから衣替えとか、片付けとかしますので、ゆっくりお茶でも飲んでいて下さいね」
「えーーーさっきも言ったけど、僕は手伝いにも来ているんだから、一緒に衣替えしようよ」
「いえ、そんな李翔さんに手伝っていただく程の事でもないですし・・・」
「早く終わらせて、下町に出ようよ」

気がつけば、黎翔は本音をポロっと出していた。
ここに来た本当の目的は、夕鈴とゆっくり下町をぶらぶら歩こうと目論んでいたのである。
黎翔の言葉が聞こえたのか、聞こえなかったのかサラっと流した夕鈴は、
そのまま居間を出て青慎の部屋へと入って行こうとしていた。

部屋の奥にある押入れに近づき、夏衣の入っている行李(こおり)を二、三個まとめて降ろそうと腕を伸ばす。
しかしその伸ばした腕の更に上を、鍛え上げた腕が伸びてきて先に行李を掴んでいた。
夕鈴は驚いて後ろを振り返ると、真後ろに腕まくりをした黎翔が立っていて正に行李を降ろそうとしていた。

「李翔さ・・」
「夕鈴、手伝うよって言ったじゃない。
それにこんな重たいものを一度に降ろそうなんて無理だよ。僕に任せてよ」
「すみません・・・・手伝ってもらうなんて畏れ多くて」
「気にしないでよ。実は僕、衣替えなんてしたことがなくて・・・いつも執務中に女官達がしてしまっているからね」
「そうですよね・・・王様が衣替えをするなんて、有り得ませんものね。
では、お願いします」

夕鈴は仕方がないなぁ~~という顔をした後、ニッコリ微笑んで黎翔の申し出を了承した。



続く。
 



2012.06.04、06、08、16 ・ 2012.07.03、11 SNS初載




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瓔悠

Author:瓔悠

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