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【小犬の手も借りたい??・3】 

【設定】

臨時妃 ・ 原作寄り


【注意事項】

こちらの作品は、前ブログ『遥か悠遠の朱空へ』にて公開していた作品です。
今回こちらへ移行するに伴い少しだけ手直ししておりますが、
書いた当時の陛下と夕鈴の関係が浅いものでありましたので、
当時の雰囲気を残すべく糖度はあまりありません。
そのことを踏まえた上でお読みいただけます様、宜しくお願いいたします。   

なお、この話は【初夏の一日 前・中・後編】の後日談となります。

【初夏の一日 前編】
【初夏の一日 中編】
【初夏の一日 後編】 









「その藍色と若草色の物を此方にください。
あっ、その後ろの鶯色の物も一緒に・・・」
「これで、いいの?」
「ハイ、これでこの行李(こおり)は空っぽになりましたよね。
次はここにある冬衣を入れますので行李をください」

手渡された夏衣を夕鈴は手早く、箪笥に整然と並べていく。
その様子を眺めながら、黎翔は今更ながら夕鈴の家事能力の高さに見惚れていた。

「どうかしましたか?」

夕鈴は、ボーとしている黎翔の表情を覗き見ながら尋ねる。

「いや、夕鈴はテキパキしているなと感心していたんだよ」
「そんなことないですよ。ウチは母親がいないから、必然的に私がしないといけないから・・・毎年の事だし、慣れているだけです」

会話しながらも夕鈴の手は止まることなく動いている。
本当に働き者の兎さんだ・・・。

「あっ李翔さん、誠に申し訳ありませんがこの行李にはもう冬衣を入れましたので、
押入れの右側に入れて頂けますか?」
「いいよ、これだね」

夕鈴が行李の上に置いている手の上に、黎翔の一回り以上も大きな掌が重なる。

「あっっ・・・」

夕鈴は、小さく声を上げた。
その声は上ずっていて、普段よりも少し高い。
眼を大きく見開き、じぃーと見つめる夕鈴。

こんな状況・・・・確かに王宮では幾度となくあった。
それは、バイト妃としての事で・・・ある意味、お仕事であって。
恥ずかしいけれど、それはそれで仕事だと割り切れもする。

でも今は、お仕事中じゃない。
だから素の私であって、タダの庶民娘で。
・・・・・平常心でいられない。

夕鈴は自分の顔が徐々に火照っていくのが分かり、気恥しさから俯き加減になった。
兎に角、逃げたい・・・その思いが胸を占める。
夕鈴は耐えきれず手を外そうとしたが、黎翔は重ねた掌に更に力を込め外せないように・・・。

「あの・・・・放し・・・くだ・・・さい」

夕鈴は小さく小さく呟くものの、肝心の黎翔は聞こえてなく、否、聞こえないふりをしていた。


そのまま時が止まったかの様に、二人は掌を通じてお互いの熱を感じていた。
しばし、時の流れがゆっくりとなった・・・・・・・・。
外で大きな歓声をあげながら、通りを過ぎて行く近所の子供たちの声で二人ハッとなる。


「夕鈴、右側だったよね」

黎翔は何もなかったかの様に重ねた掌を外す。
そのまま離れ際に、夕鈴の頬に軽く口づけた。
夕鈴が目を白黒させた時には、黎翔はもう立ち上がり行李を持ち押入れへと向かっていた。

どうして・・・・こんな事するの?
私はただのバイトなのに。
でも訊いてどうするの?
もし『ただの戯れ』なんて言われたら、どう答えていいか分かんないじゃないっっ。

夕鈴は黎翔に訊ねたい気持ちを押し込めて、
自分の後ろを通りすぎる黎翔に努めて平静を装って答えた。

「そうですね、お願いします」

しかしその声は少し震えていた。
そんな夕鈴を押入れの前で見つめる紅い瞳はしてやったりと、したり顔だった。



「イヤ~~仲がよい事で!!見てるこっちが恥ずかしくなってくるよ、全く・・・」

木の上から呑気に二人の様子を眺めていた浩大が、
もう観てられないとばかりに声を掛けてくる。

「衣替えを手伝ってもらってるだけでしょ!!何言っているのよっっ。
それならそこで見ていないで、降りてきて一緒に手伝ってよ!!」

浩大もいれば、気まずい雰囲気から逃げ出せるし・・・・。

夕鈴の強気な発言の中に、懇願する顔がのぞいていた。
それに気がつかない浩大じゃない。
夕鈴の思惑は分かっていたけれど、自分の身の可愛らしさから首を横に振る。

「オレの仕事は、ここから警護する事だからね。遠慮しとくよ」

冗談!手伝いなんかしようもんなら、陛下の剣の錆に為りかねない。
近寄らないに越したことはない。

密かにクワバラクワバラと唱える浩大だった。
夕鈴の背後から無言で『王宮へ帰れ』と圧力をかけてくる黎翔に恐れをなし、
木からシュッタッと飛び降りてオーバーに夕鈴に手を振る。

「お妃ちゃん、またね。
まぁ、頑張ってっっ!!!」

そのまま浩大は、王宮へいそいそと帰って行った。


*****

これで完全な二人きり。
もうこうなったら、さっさと終わらせるっきゃない。
それが一番いい。


夕鈴は先程よりもテキパキとスピードアップして片づけ始めた。
それこそ、一心不乱に。
そして黎翔も手伝ってくれたお陰で思ったより早く青慎と父の分は終り、
後は夕鈴の衣裳のみとなった。

で、一息ついて隣にいる黎翔を見ると、なんだかウキウキしているように見受けられる。

一体、こんな変哲もない衣替えの何処がそんなに楽しいのかしら??
こんな庶民的な衣替えなんて経験した事がないから楽しんでいるのね・・・と。

黎翔は衣替えの手伝いにそこまで意義を持ち合わせてはなった。
ただ、普段の夕鈴の姿を見たかっただけ。
妃としてでなく、素の夕鈴と過ごしたいだけで。

夕鈴の衣裳か・・・普段はどんな衣裳なんだろうか。
妃の夕鈴はもちろん色香があっていいけれど、普段着の夕鈴も可愛らしいのだろうな。

一人想像している黎翔は、思わず顔が綻んでくるのが自分でも分かった。
そんな黎翔の様子を見て夕鈴は首を傾げながらも、
夕鈴は自室を見渡し、さぁ始めようかなとした時・・・ふと、思い至った。

ほとんど帰省する機会が無いのだから今衣替えをする必要性があるのかしら?
帰省の度に必要なものを取り出せば事足りるはず・・・そうしよう、今日はあまり時間もないのだし。

後ろを振り返り、嬉々としている黎翔に告げる。

「私の分は、またの機会にしますから今日は止めておきます」

何だか肩を窄めてがっかりしているような黎翔を感じたのだが、夕鈴は続ける。

「この後青慎達に夕ご飯を作ってから帰りたいので、市場に出向きますがご一緒しますか?」

途端にまたウキウキし始めた黎翔は『ウンウン』と首を縦に振っていた。
茶色い尻尾もパタパタしている様にもみえるが・・・それは気のせいであろう。

「じゃあ、行きましょうか」
「そうだね、夕鈴とデートっっ」
「デ、デ、デート??
そんなんじゃありませんっ。
タダの買い出し、です」
「そんな~~~折角だから、デートにしようよ」
「私は買い出しだけで、結構です!!!」
「デート!デート!!夕鈴とデート~~」

プンプン、頬を膨らませる夕鈴。
全く意に返さず、ニンマリ微笑む黎翔。

フゥ―と息を吐き出して、買い物籠を持って夕鈴は家を後にした。





続く。




2012.06.04、06、08、16 ・ 2012.07.03、11 SNS初載



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この記事へのコメント

こんばんは^^

続きのUPだぁ!
欠片に行ったらやっぱり反映されてないみたいで新コメ残しました~。

こんにちは~コメント有り難うございます
返信お待たせしました!!

あちらの再度のコメ、有り難う~~~
読んだよ~~~


そして、こちらも続きUPです。
どうぞお付き合い、宜しくお願いいたします~~~~

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瓔悠

Author:瓔悠

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