【カボチャの降る日】
2015年12月01日 (火) | 編集 |
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臨時妃 ・ 原作寄り

【注意事項】

こちらは、ハロウィンネタです。
私の大好きな絵師のダリ子様に
素敵なハロウィンイラストをいただいたんです。

それで、やっと私が僭越ながらSSをつけさせて頂き、
UPさせていただくことに~~~

もう兎に角、イラスト素敵です。
イラストをご堪能下さいませ。



********************





暑い夏も何処かへ過ぎ去り、涼しい風が吹き抜けてくる頃の事。
それはやって来る。

『ハロウィン』

狼陛下が治める、この白陽国にも・・・。


*************




「お妃様、こちらの飾りは何処に?」
「ああ、それでしたら、窓枠に飾って下さい」
「では、こちらの置物は?」
「そのカボチャの燈火でしたら、回廊脇に並べて下さい」

後宮が賑やかに準備に追われている頃、
王宮では官吏たちがそわそわし始めていた。

万聖節・・・・ある宗教の諸聖人の日の前夜に行われる祭りらしいのだが、
古くは秋の収穫感謝祭に起源があるという。
そんな白陽国には馴染みが無いような祭りも、
数年前に遠い西の国からの使者たちがもたらしたものが庶民の間に広がり、
今では王宮までもその祭りを楽しむようになっていた。

更には、普段は交流の無い官吏と女官たちの唯一の交流の場となっている為、
女官たちも準備に余念がない。

女官たちのお楽しみと言えば、目当ての官吏たちとペアになって探す『カボチャ探し』である。
この『カボチャ探し』とは、至る所に隠されたお化けカボチャの中の宝物を探す催し。

宝物を見つけることが大前提であるが、女官や官吏たちにとって大切なのはその過程。
誰と見つけに行くかが、最も重要な鍵でなのある。
その後の人生に大いに影響することすらあるのだから。

それは・・・・・・・・言うなれば、集団お見合いみたいなもの。
出会いの少ない女官たちにとっては、張り切らざる負えないものなのであった。

まぁ、夕鈴はそんなことには正直参加する意思もなく、資格も無い。
後宮唯一の寵妃がそんなものに参加したとあっては、大問題である。

ところが準備をする中で宝物の中身を知ると、夕鈴も参加したい気持ちが芽生えてきた。
夢見がちな宝物で有れば全く見向きもしない。
が、金券・宝石・紙幣となってくると借金を背負った身の上の夕鈴にとって、それは甘味な誘惑となる。

それにホントの所、こんな楽しそうな企画・・・・お祭り好きな夕鈴は、黎翔と参加したい気持ちも少しはある。

「はぁ~~いいわよね。皆、楽しそうで・・・・・」
「何が楽しそうなのだ?」

ボンヤリ一人で寛いでいる所に、急に振ってくる甘い声。

「へ、へ、へへ、へいかっっ!!」

夕鈴はいきなりの声掛けにビックリして、長椅子からスッ転んでしまった。
自分のあまりの醜態に、真っ赤に首筋まで染める。
転んだまま回りをキョロキョロしてみるが、
先程まで控えていたはずの侍女達は煙のように消え失せていた。

「夕鈴、大丈夫?」

夕鈴は自分に伸ばされた腕を、首をもたげて下から上に向かって視線を動かした。
そこにはニッコリ笑って、優し気な視線を送る黎翔がいた。

「はっ、はい!大丈夫です!!」

その腕を取ることを躊躇われ、夕鈴は自分の力で立ち上がろうとした。
けれど、それは黎翔が許さず、そのまま両手で抱きかかえられた。

「あの・・・・恥ずかしいですから、放してください」
「どうして?僕たち、夫婦なのに?」
「それは、侍女さんたちがいるときだけで良いですから。
陛下言っておきますが、私たちは『偽』夫婦ですからね」

夕鈴は、殊更『偽』と強調する。
それに対して、黎翔は少しだけムッとした。

「僕はいつだって、君と夫婦でいたいんだ!」
「・・・・・それを、バイトに言わないでくださいね」

夕鈴は放してもらおうと、黎翔の腕の中で必死でもがく。
黎翔はそれを阻止しようと、腕の力は更に帯びる。

「君はホントに強情なんだから・・・・・。
それより、さっき言ってた『楽しそう』って何のこと?」
「いや、誤魔化さないでくださいっっ!!!お、ろ、し、て~~~」
「もう、仕方ないな」

黎翔は不満タラタラという表情を浮かべながら、夕鈴を降ろして長椅子へと座らせた。
そして自分も当然の様に隣へと腰掛ける。

「で、楽しそうって?」
「ああ、あれは『カボチャ探し』のことですよ」
「『カボチャ探し』ね~~~確かに楽しそうだよね。若い官吏たちはかなり楽しみにしてるようだもんね」
「そうなのですね」
「楽しみにし過ぎてて政務中にボンヤリする官吏たちが続出で、李順がかなり困っているようだが」
「・・・・・・それは、マズいですね」

夕鈴は、頭から湯気を出している李順を思い浮かべて苦笑する。

「まぁね、それはいいとして、夕鈴も参加したいの?」
「・・・・・・・・・妃である私は、やっぱり参加する資格はないですし」
「え~~どうして?」
「だって、一緒に参加してくれる人はいませんよ」
「いるよ」
「どこにですか?それは有難いです!私、カボチャの中の品物が欲しくて!!
陛下、参加してくれる人を紹介して下さい!!」
「紹介って・・・・・・ここにいるではないか!」
「ここって・・・・・・っっ、陛下、ですか???」
「そう」

ニッコリと微笑んでいる黎翔に、夕鈴は項垂れる。

いや、陛下自ら参加なさるなんて・・・・それはさすがにマズいでしょ。
いくらなんでも。

「いえ、それは、だから、ご遠慮します」
「どうして?ねぇ、参加しようよ、一緒にさ!!
よ~し、参加しようね!ゆーりん」

黎翔に強引に押し切られ、夕鈴は大きなため息を吐き出した。
そして気が付けば、夕鈴は参加する運びとなっていた。




***************

晴れ渡った秋空の下。
その日はやってきた。

女官・官吏たちは、後宮と王宮内の庭園を連れ立ってお化けカボチャを探す。

木の茂みの内。
小川の畔。
花畑の中。
回廊の端。
四阿の石椅子の下。

ありとあらゆる場所に、自然に或いは不自然にお化けカボチャがあった。
そこらかしこで、見つかった歓喜の声が上がり庭園は実に賑やかしい。

「夕鈴、あちこちで見つかっているようだね。
僕たちも早く見つけよう!!」
「はい!陛下!!!!頑張りましょう」

夕鈴の瞳は力強さが漲り、ランランと輝いていた。
あちこちを首を回してキョロキョロしつつ、お化けカボチャを探す。

ところが官吏や女官たちが既に見つけた後で、
お化けカボチャを見つけても中身は『空』なんてことばかり。

「はぁ~~~中々見つかりませんね」

夕鈴はため息をついて、肩をガックリと落とす。
それを見ると、黎翔は俄然やる気が出てきた。

「夕鈴、私に任せておくのだ!すぐに見つけてやろうぞ」
「陛下、お願いします」

黎翔に向かって、夕鈴は微笑んでみせる。
陽に当たり、夕鈴の笑顔はキラリと輝いて見えた。
それを見た黎翔は、夕鈴への愛しい想いが胸を騒がす。
そんな想いを募らせていると、隣で弾んだ声が聞こえてきた。

「陛下、ありましたよ!!!お化けカボチャっっ!!!」
「そうか、それは何処だ?」
「・・・・但し、木の上ですが」
「木の上?」
「ほら、あそこです」

夕鈴の差し示した先には、小高い木。
お化けカボチャは、その木の途中の枝の根元に置いてある。
そこは黎翔が手を伸ばしても届きそうにない場所。

「どうしましょう・・・・ここはダメですね」
「どうして?」
「だって、あんなに高い場所にあるんですよ」
「でも、あんな所だからこそ、誰も手にしてないと思うが」
「陛下も届きませんし、私が木に登ってもいいんですが・・・・それを李順さんにでも知られたら大目玉ですものね」
「なら、こうすればいい!!」

黎翔はヒョイと夕鈴の身体を抱き上げた。
それこそ、お姫様抱っこ。

「えっ、え~~~~~~~~」

夕鈴は急に自分の身体が宙に浮き、アタフタと慌てる。

「ほら、暴れると危ないが・・・・・」
「そっ、そんな!!陛下、これはいけません!!」
「夕鈴、私がこのままでいるから、早く取るがいい」
「・・・・・・・・・・・はい」

夕鈴はそう返事するしか術はなく、黎翔に抱き上げられたまま枝の根元に手を伸ばした。


1023.jpg


「う~~~ん、もう少しなのよね」
「夕鈴、頑張れ!」

お化けカボチャの下側に指先が触れる。
コロリと動き、お化けカボチャが落ちてきた。

「キャッ」

夕鈴が小さな悲鳴を上げる。
すかさず黎翔はカボチャが当たらないように、自分の胸に夕鈴の身体を押し当てて守った。

『ドサッ』

カボチャが落ちた後も、黎翔は夕鈴を放さなかった。
ギュッと抱き締め、その香しい花のような匂いを感じていた。

「陛下、苦しいですっ!」
「あっ、ゴメン・・・・・でも、放したくない」

もがきながらも夕鈴も離れがたく、少しすると黎翔の思うがままにされていた。
広くて大きい胸。
凄く安心する。

夕鈴は、黎翔を慕う恋心がはじけそうになった。

イケナイ、イケナイ。
私はバイト!

寸でのところで、夕鈴の理性が戻る。
自分の立場を忘れそうになった。

「陛下、有り難うございます。
カボチャ取れましたね」
「そうだね」

黎翔が、すんなりと放してくれたことで、夕鈴は自由になりカボチャ回収へと向かう。
カボチャの中には、封書があった。

その封書に書かれていたものは、たった一行。
『自分の想い人と、一日過ごせる権利』と。

「え~~~~~~~~こんなのいらない!!!
私は、金券か紙幣が良かったのよっっ!!!」

夕鈴が叫んだが、それを聞く黎翔はほくそ笑む。
その封書に書かれた手は、黎翔のモノ。

こんな木の上、誰が取るというのだ。
それは、お転婆妃だけだと踏んだ黎翔が仕組んだモノ。

「夕鈴、ほら、いつがいい?
それに何処に行きたい?
何をする?」

黎翔にせっつかれ、夕鈴はしぶしぶ返答する。

「陛下のお好きなように」


そうして、後日。
国王夫婦が仲睦ましく庭園を散策する姿が、官吏や女官に目撃されたのである。


終。


**********


ダリちゃん、素敵なイラスト
有り難うございました~~~~

また是非コラボしてね~~💛


瓔悠。




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