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【添い寝の代償】
【設定】 

臨時妃 ・ 原作寄り

【注意事項】

前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』からの再録です。





「夕鈴、起きてる?」

帳の外から、優しく話掛けてみる。
まだ眠ってはいない筈だ。
今宵は、風が強く吹き付けていて、かなり騒がしいから。

「はい、起きて・・・・・いますけど」
「風が強いから様子を見に来たけど、大丈夫そうだね。
「ええ・・・大丈夫です」

中から聞こえてくるのは、擦れた声なのに気丈に答える気の強い妃の声。

「では、おやすみ」

カッカッと音高く靴音を響かせ、僕は戸口の方へと4、5歩足を進めた。

「陛下・・・・・・あの・・・・」

言いづらそうに呼びとめる可愛い声に、つい人の悪い笑みがこぼれてしまう。

フフッ、夕鈴・・・ホントは心細いんだな。

「どうしたの?」

ホントは分かっているのに、少し意地悪く聞いてみた。
決定的な言葉を聞きたくて・・・いつも強がってばかりの君にささやかな意趣返し。

「い、いえ・・・何でもないです」
「何でもないなら、おやすみ」
「・・・・・・・・・陛下、実はあの、その今日は風が強くて、その音が不安で・・・・眠れないんです」

途切れ途切れになりながら、胸の内を語ってくる。
その声すらも、可愛いと感じてしまう自分がいたりする。

作戦成功だな!!

「夕鈴、添い寝してあげようか?」

帳の向こうガバッと起き上がる音が響き、即座に慌てふためく夕鈴の様子が伺い知れた。

「添い寝なんて、と、と、とんでもないですっっ!!!」
「では、如何してほしいの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」

如何してほしいかが分らないらしく、沈黙という返答が戻ってきた。

「じゃあ、夕鈴・・・君が安らかに眠れるまで、僕とお喋りしていよう。
其方に行ってもいいかい?」
「はい」

はみかみながら答える君の可愛らしさが僕の中で愛しさに変わり、
僕の心の中を満たしていく。

さて、どんな話をしようか。
夜は長いのだから昔話でもしようか・・・。

帳を上げながら、満面の笑みがこぼれていくのを止める事が出来なかった。
掛け布団を立てた膝にふんわりと掛け、帳から入ってきた僕を見つめる薄茶色の大きな瞳は、何処か恥ずかしさをひた隠すように宙を彷徨っているようだった。

「座ってもいい?」

一応断わりを入れてから、寝台の淵に軽く腰かけニッコリと微笑む僕に安心したのか、強張っていたであろう頬が緩んでフゥと短く息を吐いている。

かなり、風の音が気になって眠れなかったんだろうな。

いつもは強がっている夕鈴からは想像だにしない様子が新鮮で、僕の心を打つ。

「夕鈴、僕は眠るまで傍に居るから、眠くなるまで話をしてようよ」
「話ですか?そうですね・・・・・・・では、何を??」

話だけならいいけど、このまま陛下が此処で眠るなんて事は無いわよね。
いっそ聞いてみるのもいいかもしれないけど、
さすがに怖がっている私を気遣って来てくれたのにそんな失礼な事を聞くのはマズイわよね。

このまま、朝まで居座るのも、添い寝が出来る良い手だよね。
只、あの顔は何かを躊躇しているときにする表情だ。

まぁ僕に何を聞きたいかくらいわかるけど、あえて何も言わないでおこうっと。

何ともまぁ・・・策士である。
もうあわよくばと考えているのが見え見えで。
気が付かないのは、鈍感な夕鈴くらいである。

そんな二人の思惑と別の所では、別の方々が頭を抱えていた。

「一体、いつになったら戻ってこられるのでしょうか?」
「予言しましょう、今宵はこちらには現れませんでしょう。
そしてこの案件はきっと不吉な物となるでしょう・・・」
「宰相殿・・・・・予言されずとも陛下の行動は予想が付きますし、
恐らく朝には清々しい顔で現れる事くらい、私にもわかりますよ・・・まったくもぅ」

そう、今宵も政務を放ったらかしにして『寵妃の様子を見て来る』と一言だけ告げ、飛び出したのである。
先程から数えて何度目になるのか分からない溜息をつく李順なのであった。

「夕鈴、じゃ僕から話そうか・・・」
「そうですね、ではおねがいします」
「何の話しをしようかな・・・・・・・そうだ!5代前のこの国の王の話でもしようかな。
まぁ王様と言うより、その寵愛された妃の話だけどね」
「はい」
「では・・・・・・僕から数えて100年程前のこの国を統治していた珀 彩禮という王がいてね。
その頃のこの国は安定していて諸外国とも貿易が盛んで、国民も豊かに暮らしていたんだ。そ
の王は、色々な功績を立てたのだけれども、中でも人々に称賛を浴びたのは・・・・生涯、妃は正妃のたった一人だけだった事なんだ。
その王は、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

僕がツトツトと話し始めた昔話を夕鈴は興味を持ったらしく、身を乗り出し聞き入っていた。

陛下の低い声って心地いいのよね~~甘くて気持ちいいっていうか。
何だか眠くなってきた・・・話をしてくださっているのに寝てしまうのは失礼よね。

夕鈴・・・・・眠いようだな。
もう一息。

「夕鈴・・・眠いの?このまま僕の話を聞きながら眠ってもいいんだよ」
「いえ・・・・・・・・・申し訳・・・・・・・ないです・・・・から」

夕鈴は瞼が重力に従い下にさがって来るのを止められず、自然に任せてウトウトし始めた。
完全に眠ってしまった夕鈴を静かに寝台に横たえ、その寝顔を眺めてクスクスと微笑んだ。

「おやすみ・・・夕鈴」

おでこにチュと口づけて傍を離れようするが、僕の服の裾が何かに引っかかったのか反対の方向に引っ張られる。
後ろを振り返ると、夕鈴が僕の服をかわいい手で引っ張っていた。

これは、上げ膳ってやつか?
ならば、上げ善は食わねば!!

僕は昏い笑みを浮かべ、夕鈴の隣に滑り込んだ。
滑り込んだ褥の隣には、スヤスヤ眠る僕だけの眠り姫。
広がった薄茶の長い髪を一房手に取り、掌の中でその柔らかさを確かめ握りしめた。

「う~~~ん」

微かに声をあげながら、寝がえりを打って僕の方へ身体を向けた。
僕の目の前・・・そうお互いの息が頬に掛かるくらいの至近距離に、
さすがの僕もビックリする。

これは、襲ってもいいよっていう合図・・・・なんてことはないよね。
夕鈴はすっかり夢の中だしね。

自制しつつも眼に入る美味しそうな唇。
少し開いた唇の間からは甘い吐息が漏れており、僕の理性を試してくる。

でもこんな機会はまたとないよね。
きっと朝起きたら夕鈴は添い寝について烈火のごとく怒るだろうし。
それなら少しぐらい先にいい事があってもいいじゃないのか?
いや・・・・でも不意打ちみたいだからやめといた方が。

黎翔の中で天使と悪魔がお互いを牽制して鬩ぎ合っている。
それくらい魅了される罪作りな寝顔なのである。

全くこんなに僕の心を乱すとは・・・・な。
傾国の美女なんて言葉は聞いたことが有るが、傾国するなんてことはないが僕を陥落させる大した女性だよ。

フフッ・・・・。
暗闇に響く、自嘲的な笑い。

えいっ、ままよ。

隣で眠る夕鈴の頬に口づけ、そのまま位置をかえ夕鈴の柔らかく膨らんだ唇に口づけを落とした。
時間にして1秒・・・・・。
それでも黎翔は至福を感じ、そのまま夢の世界へと旅立った。

風がまだ強いらしく、時折ゴーーーーと激しく吹きつける。
そして、木々はザワザワ騒いでいた。



******



チュンチュン。
小鳥のさえずりで、朝が来た事を教えてくれる。

パチパチ・・・何度か瞬きをしてから眼をゆっくり開けた。

「う~~ん、昨晩は風が強かったわよね」

独り言を呟き、起き上がって大きく伸びをする。

「そうだね・・・いつに無く激しい風だったよね
「えっ、なっなんでぇ~~~~~~~~~~~~~~」

絶叫と共に寝台から飛び降り・・・・文字通り跳ね起きた。
余りの絶叫で喉が詰まり、ゴホゴホと咳がでる。

「ど、ど、ど、どうして陛下がいるんですか?」

激しく動揺し、どもりながらも一番肝心な事をシッカリと訊いていた。

「なぜって?
だって君が怖がっていたんじゃないか!」
「でも・・・・・・私が眠るまで話をしてくださるって。
それが何故今の今まで陛下が此処にいらっしゃるのでしょうか?
訳が有るようでしたらお聞かせ下さいませ!!」

段々落ち着きを取り戻してきたのであろう・・・夕鈴はキッチリ昨晩の記憶を辿りつつ、黎翔ににじり寄ってきた。
血圧が今にも急上昇してプツンと切れそうなそんな夕鈴。
そしてそんな様子を見ても、全くと言っていいほど慌てた様子を見せない黎翔。
対照的な二人が、同じ寝所で相対する。

「だって、僕が折角話していると言うのに夕鈴寝ちゃうんだもん。
僕が寝台に横たえてあげたんだよ。
そして自室へ戻ろうとしていたのに、僕の裾を握って引っ張ったのは誰だい?」

まぁホントのことなのだが、全然自分は悪くないと主張する。

「えっ・・・・・裾を引っ張った?」

まさかそんなはしたない事はしない・・・・・と羞恥に染まる頬を隠すように両の手で覆う。

あっ、自分が無意識にしたことを思って恥ずかしさにうち震えているんだよね。
夕鈴って、かっわいい。

微かに震えている夕鈴を見て、黎翔は無実を確信する。

「陛下!!!!百歩譲って、私が裾を引っ張ったことにしましょう。
でも離して自室に戻る事ができた筈です。
一緒の寝台で眠る事なんてしなくても良かったと思います。
こんな事が李順さんに知られたら、どんなお小言が私に降って来る事か。
大体陛下はどの様なお考えから、そっ、そ、添い寝など・・・・・・・・・」

恥ずかしくて震えていたのではないらしい・・・・怒りで震えているのだ。
夕鈴の怒りは直ぐには収まりそうもなく、一気に言いたい事をぶちまけている。

結構いい思いさせて貰ったのだから、夕鈴の怒りは受け止めないといけないだろうな。

僕に怒りをぶつけているその可愛らしい口元を見詰め、
昨晩の口づけを思い出すと思わずニンマリしてしまっていた。

「陛下!!!聴いているんですか????」

おっとイケナイ・・・夕鈴のお小言中だったんだ。
夕鈴・・・昨晩の君の柔らかい唇、ご馳走様!!

黎翔は、ただただ胸の中で感謝を述べる。
しかし口づけの事がバレた時の事の顛末を思い描く。

きっと、そのままニッコリ笑って済ますなんて事はないだろうなぁ。
そうなると、頬を染め詰め寄って来るくらいするのかも?
それとも・・・余りの恥ずかしさに倒れてしまったりして!


黎翔は様々な事を想像して、ニヤリと口角を上げる。
どんな夕鈴も可愛くて堪らないというように。
しかし、口付けの事がバレることは無かった。
だが、夕鈴が怒りを収めてくれたのは実に2日後のことであった。

それまでは、政務室に来てくれないどころか部屋にも入れてくれないという徹底ぶりで黎翔を困惑させていた。


もう、黙って添い寝するのは辞めよう!!
出来れば、夕鈴の了承を得てからに・・・・。
そう、反省せざるおえなかった。




終。




2012.08.27,28,29 SNS初載



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