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【初夏の一日・中編】
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臨時妃 ・ 原作寄り

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前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』の再録です。






その頃、後宮夕鈴の部屋では衣替えも終りがみえてきていた。

元来働き者である夕鈴は、この時期の天気の良い日に一斉に家族分を一人で衣替えをしていたので、
自分自身でやりたいのをじっと我慢して侍女さんがクルクルと働いているのを置物の様に動かず見ていた。

はぁ、バイト妃の為に皆さんでして頂いて申し訳ないったらありゃしない。
ホントは私も参加したいけど、普通妃は手伝ったりしないものよね。
なら、終わったら皆さんにお茶をお出しするくらいなら、してもいいかしら。
それくらいなら大丈夫よね。
そういえば・・・・家の衣替えはきっとまだしていないはず。
近いうちに李順さんにお願いして実家に帰省させて頂かないと・・・。
でも、陛下には内緒にしないとまたついて来かねないし、
そうなると上司の怒りの矛先が私にやってくるぅ。

手持ち無沙汰である夕鈴は、そんなことを考えつつ椅子から静かに立ち上がると、
お茶道具のある卓におもむろに近づきいつもの手慣れた様子でお茶を入れ始めた。

しかし侍女さんがいる前だからって、さっきの陛下は甘いにも程があるわよ。
着飾っても素材が普通なんだから、そんなに変わらないわよ。
もう返答に困るったら・・・。
まだ何か言いたそうだったわよね、あそこで李順さんがお迎えに来てくれて助かったわ。
あれ以上何か言われても妃演技でどう返すかも思いつかなかったし。
それにしても陛下は『夜に・・・』とは言っていたけど、李順さんのあの様子だとお仕事を詰込まれて執務室から一歩でも出してもらえなさそうだけど、一応お茶の用意はしておいたほうがいいわよね。

芳醇な甘いお茶の香りが鼻をくすぐり、いい具合に茶壺の中で蒸らされたようで、
茶壺から手際良く茶杯に人数分注ぐとお盆に乗せて、中央の卓へとゆっくりと運んで行く。

「お妃さま、申し訳ございません!
お茶でしたら、私どもにお申し付け頂ければ、すぐにお入れ致しましたものを・・・」

お茶を運ぶ事も妃がすることではないので、侍女の一人に見つかり慌ててこちらへお盆を受け取りに来てくれた。
こんなところを李順さんにでも見られたら、『妃のすることではありません!!』と大目玉をくらった上に、
再度お妃教育を施されそう。

「いえ、皆さんに頑張って頂いたお陰で衣替えも今日中に終えるようですし、
お茶でも飲んで疲れを取って頂きたくて」

そのまま侍女の方々にお茶を勧める。
最初はお妃さま自らは恐れ多いらしく誰も飲んで頂けなかったけれど、
私がしつこく勧めるとお断りする方が逆に申し訳ないからと飲んでくれた。

しかし妃と同じ卓について飲むのは、さすがに恐れ多いと隣に卓を運んできて飲んでいた。
夕鈴はそんな侍女の様子を見ながら、心の奥で『バイト妃に気を遣わせてごめんなさい』と手を合わせるのだった。

空が赤く染め始める頃ようやく衣替えも終り、
侍女の方々は退室して広い部屋の中には夕鈴一人のみとなり静けさを取り戻していた。


********


沢山の星が空を覆い尽くす頃、所変わってここは夜の執務室。
シーンとした部屋の中からは、紙をめくる音しかしない。

「李順~もう今日はこれくらいにしとかない?」
「何を言ってますかっ!まだ書類の山がふた山程残っていますよ」
「もうかなり書類の山を減らしたと思うけど・・・大体僕は、機械じゃないんだから休憩も必要だよ」
「休憩は昼イチにもうお済みのはずでは??
夕鈴殿のところに行かれていたでは ありませんか」
「行ったって、あれは行った内に入らないっっ!
だって、すぐに李順が迎えにきたじゃないか」

紅い瞳がスーと細められこちらを睨んでいる。
黎翔はもう限界らしく、狼モードに突入する一歩手前の様で。
ここで狼モードに入られると、後々厄介なことになる。

「フゥ、わかりました。
今日の執務はここまでと致しましょう・・・どうぞ夕鈴殿のところへ」

言い終わる前に、黎翔はもうすでに戸を開け放ち出て行っていた。
残された李順は、はぁ~と短く溜息を付くと机上の筆や書簡などを片付け始めた。




続。



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