【初夏の一日・前編】
2010年03月31日 (水) | 編集 |
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臨時妃 ・ 原作寄り

【注意事項】

前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』からの再録です。
更に、このSSは私が初めて書いた作品です。
今読み返してみるとスッゴク恥ずかしい・・・・。
でもこのSSがあるから今があるのかなぁ~と思います。

季節は初夏に差しかかろうとしている時期の、何気無い王宮での出来事です。
私は2児のママでして、そんな主婦の思い付きからできたSSです。








さわやかな風が回廊を吹きぬけて僕の頬を掠めていく。
こんな午後は政務なんかサボって夕鈴に逢いに行くことにしよう。

どうせ後から李順が探しに来て執務室に連れ戻されるのだろうが、しばし休憩を・・・。

思案しつつ部屋の近くまで来ると、何やら回廊まで賑やかな声が聴こえてくる。
この先は夕鈴の部屋のみ。
部屋では、なにがあっているのだろうか・・。
そんな逸る気持ちを抑えつつ、少し急ぎ足で先に進む。


「お妃さま、こちらは如何でしょうか?
涼しげでお色もお妃さまにとてもお似合いでございますが」
「そうですね・・・では、こちらに収めていただけますか」
「お妃さま、この水色のご衣裳は如何なさいますか?」

中からは、楽しげな声。
僕は、戸に凭れたまま中の様子を覗いていた。
そんな僕を侍女の一人が見つけ、 慌てて拱手して迎え入れてくれた。

「妃よ、衣替えか?どの衣装も君に似合うだろうな。
着飾って、私の眼を楽しませてはくれまいか?」

夕鈴はというと、案の定真っ赤な顔してこちらを見つめていた。
何か言いたげな・・・しかしどの様に返せば良いのかわからないという様子。
僕はその夕鈴の様子が愛おしくて、次に何を言って困らせてやろうかと少し意地悪なことを考えていると、戸口から僕を呼ぶ李順の低く恨めしげな声が響く。

全く李順は、有能な側近だよ!!
すぐに僕の居場所を突き止めるんだから・・・・。
それにしても短い休憩だったな・・・・はぁ~仕方ないが戻ることにするか。

「妃よ、夜に・・・」
「はい、お待ち致しております」

短く約束を取り付け、僕は名残おしげに部屋を後にした。
回廊を靴音を響かせ歩きながら、あの楽し気な雰囲気を思い浮かべ笑みを零す。

あのまま、衣替えは続くのだろうな・・・・。

それならば、早く政務を終わらせて夕鈴の部屋に・・・・と思い意気揚々としていると、
側近のいやぁ~な一言が聞こえてきた。
今一番聞きたくない言葉が・・・。

「陛下、政務は溜まりに溜まっております!!
ですので、今宵は無理だと思いますが・・・」

なんだかこのまま逃げ出したくなってきた。
僕は大きな溜息をつきつつ、トボトボ執務室へと向かった。


*****

執務室にもどった僕は、仕方なく政務の続きに取りかかることにした。
少し書類を片付けてみたものの、先ほどのことが思い出され中々進まない。

あのまま居られたら、僕が気に入った衣装を着ることをおねだり出来たのに。
夕鈴も恥ずかしがりながらも、僕のお願いを聞いてくれたんだろうなぁ。
あの中で僕が気に入りそうなのあったかなぁ。
水色は、少し透けていたから僕以外には見せる訳にはいかないよな。
でも夕鈴には、すごく似合いそうだったんだよね。
あの萌黄色のはちょっと地味だったような・・・でも大人っぽくなっていいかも。

「コホン」

あと、どんなのがあったかな。
茜色があったような。

「コホン!恐れながら陛下。
先ほどから筆が進んでいないご様子ですが、如何なさいましたか」
「いやー、さっき夕鈴の部屋では衣替えをしていたんだ」
「そういえば、そのようでしたね。それが?」
「夕鈴に似合いそうな衣装があったから、
色々と僕の前で着て欲しくて・・・あっ、そうだ李順っっ!」
「陛下、それは許可しかねますが」
「まだ何も言ってないんだけど・・・」
「いえ、陛下の仰りたいことは、想像できますので・・・でも、それをなさると夕鈴殿が怒りますよ。
『陛下、臨時花嫁に無駄使いはやめて下さい!!!新しい衣装は必要ありません』とね」
「やっぱり・・・駄目かなぁ」

僕は予想していたとはいえ、少し・・いやかなりがっかりしつつ、また書簡の内容に専念することにした。
しかし、なかなか内容が頭に入ってこない。
そして、またしばし考え込む。

夕鈴は、本当に何に対しても無欲だ。
倹約第一の李順にしてみれば理想の臨時花嫁なんだろうが、僕にしてみれば、もう少し甘えてくれても。
でもそれが、夕鈴なんだとも思うし。
では違うこと、とくにお金がかからない物ならいいのだろうか?
それだったら夕鈴も喜んでくれるかな?

うーん、何が良いかな?花束?
いや、花は手折るよりもそのままを愛でる方を好んでいたな。
では、お菓子はどうかな?
茶菓子を持っていけば、ゆっくりと夕鈴の入れてくれるお茶を一緒に楽しむことができるな。
ならばそうしよう、ではこの書類の山を制覇しなければ!
夕鈴との楽しい一時を満喫出来ないどころか、夕鈴の元へも行けない。

僕は考え事をしつつも、一応頭の片隅で書簡の内容を精査していく。
そして先程夕鈴に『夜に・・・』と約束を取り付けた事を思い出して、
気合いを入れて書簡と向き合うことにした。

そんな黎翔の様子を、李順はやっと本腰を入れて政務に入っていただけたと安堵するのだった。


続。



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