2010.05.11 (Tue)
【白昼夢・・・?!】
【設定】
臨時妃 ・ 原作寄り
【注意事項】
前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』からの再録です。
「夕鈴はさ、罪作りだよね」
「はい??」
何の気なしに、切り出された言葉に目を見開きギョッとする。
暑い最中の昼下がり。
汗が背中を伝い、額に滲む汗。
少しでも涼める様にと、小川のせせらぎが聞こえてくる四阿でのお茶時間。
「陛下・・・・いきなり何を言うんですか??」
「いや、思っている事を口に出しただけなんだけど」
「私が何かしましたか?」
「・・・・・・・そういうとこだよ」
「???」
全くわからないとでも言う様に、夕鈴は小首を傾げる。
そんな仕草が可愛い。
でもそんな事言っても、きっと僕の真意はわからないだろう。
そして、その奥に秘められた僕の想いさえも。
きっと・・・・・。
*********
その時。
辺りが急に暗くなり。
空が一瞬光りに包まれ、轟音と共に稲光が走る。
「夕鈴・・・・一雨くるみたいだよ!早く戻ろう」
身動き一つしない夕鈴の手を引く。
今の稲光が恐かっただろうか?
「ほら、夕鈴!!!」
「・・・・・・・」
夕鈴がノロノロ顔を上げて、僕を見詰める。
その瞳は・・・・何処か違和感が。
「陛下・・・・・・抱いて連れて行って下さいまし」
「???夕鈴、どうかしたの?」
「ダメですか?」
見詰める薄茶の瞳からは、優艶な色が出ている。
違う・・・・いつもの夕鈴じゃない!!!
これは、一体・・・・。
「いいの?本当に」
「はい・・・陛下」
頬を染め、両手を差し伸べる夕鈴。
僕は・・・・・いつもの夕鈴ではないと、わかっていながら抗えず。
その両手を取って抱き上げた。
柔らかい身体。
そして、髪から薫る芳香。
クラクラしてくる。
夢見心地の様にウットリし潤む瞳は、僕の理性を破壊してしまいそうで。
僕は頭を振って、邪念を払う。
「じゃあ、戻るからね」
「・・・・・もう戻るのですか?」
つまらなそうに、拗ねる表情をする。
君は、僕の理性を試しているのかい??
何だか、罠の様な気さえしてくる。
でも・・・それでも・・・今の状況は悪くない。
四阿の外は、稲光が絶えず光っている。
その轟音も段々と近くなって来ている。
「夕鈴・・・ここは危ないから」
そう告げると、足早に後宮へと続く回廊を目指した。
その間も、僕に首にシッカリと巻きつかせている夕鈴の腕の温もりが、こそばゆく感じられる。
これを・・・・幸せだと言うのだろうか?
自分はこういう事を望んでいたのか??
でも、夕鈴は・・・如何なのだろうか?
「陛下・・・・このまま私を・・・・・・妃にして下さいませ・・・・・」
「何か言った?」
夕鈴の言葉は、轟音にかき消され『私を』の後が聞えない。
そして。
一際大きな轟音が鳴り響き、稲光が地面へと落ちた。
二人とも、その大きさに驚き、瞳を瞑る。
音が鳴りやんで・・・そっと目を開けた時。
僕の腕の中で、声もあげずもがいている夕鈴がいた。
「へ、へ、へへいかっっ。どうして私が抱きあげられているんですか~~。
お、おろしてください~~~~」
さっきの轟音と同じくらいの悲鳴にも似た抗議の声が上がる。
「夕鈴・・・・君が言ったんだよ、『連れて行って』って」
「え~~~、そんな筈はありません!!あり得ません!!!!」
はぁ~~~~そんなもんだよね。
それが夕鈴だよね。
黎翔は短く溜め息を漏らすと、そっと夕鈴を降ろす。
「やっぱり、君は罪作りだよ」
「はい??」
これは、白昼夢??なのか。
それとも、僕の心が求めた産物なのか?
それはわからない・・・・・・・・・。
もしかすると、恋の女神がくれたお中元なのかもしれない。
黎翔は、まだ光っている空を見上げ、乾いた笑い声を立てたのだった。
終。
2013.08.14 SNS初載
臨時妃 ・ 原作寄り
【注意事項】
前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』からの再録です。
「夕鈴はさ、罪作りだよね」
「はい??」
何の気なしに、切り出された言葉に目を見開きギョッとする。
暑い最中の昼下がり。
汗が背中を伝い、額に滲む汗。
少しでも涼める様にと、小川のせせらぎが聞こえてくる四阿でのお茶時間。
「陛下・・・・いきなり何を言うんですか??」
「いや、思っている事を口に出しただけなんだけど」
「私が何かしましたか?」
「・・・・・・・そういうとこだよ」
「???」
全くわからないとでも言う様に、夕鈴は小首を傾げる。
そんな仕草が可愛い。
でもそんな事言っても、きっと僕の真意はわからないだろう。
そして、その奥に秘められた僕の想いさえも。
きっと・・・・・。
*********
その時。
辺りが急に暗くなり。
空が一瞬光りに包まれ、轟音と共に稲光が走る。
「夕鈴・・・・一雨くるみたいだよ!早く戻ろう」
身動き一つしない夕鈴の手を引く。
今の稲光が恐かっただろうか?
「ほら、夕鈴!!!」
「・・・・・・・」
夕鈴がノロノロ顔を上げて、僕を見詰める。
その瞳は・・・・何処か違和感が。
「陛下・・・・・・抱いて連れて行って下さいまし」
「???夕鈴、どうかしたの?」
「ダメですか?」
見詰める薄茶の瞳からは、優艶な色が出ている。
違う・・・・いつもの夕鈴じゃない!!!
これは、一体・・・・。
「いいの?本当に」
「はい・・・陛下」
頬を染め、両手を差し伸べる夕鈴。
僕は・・・・・いつもの夕鈴ではないと、わかっていながら抗えず。
その両手を取って抱き上げた。
柔らかい身体。
そして、髪から薫る芳香。
クラクラしてくる。
夢見心地の様にウットリし潤む瞳は、僕の理性を破壊してしまいそうで。
僕は頭を振って、邪念を払う。
「じゃあ、戻るからね」
「・・・・・もう戻るのですか?」
つまらなそうに、拗ねる表情をする。
君は、僕の理性を試しているのかい??
何だか、罠の様な気さえしてくる。
でも・・・それでも・・・今の状況は悪くない。
四阿の外は、稲光が絶えず光っている。
その轟音も段々と近くなって来ている。
「夕鈴・・・ここは危ないから」
そう告げると、足早に後宮へと続く回廊を目指した。
その間も、僕に首にシッカリと巻きつかせている夕鈴の腕の温もりが、こそばゆく感じられる。
これを・・・・幸せだと言うのだろうか?
自分はこういう事を望んでいたのか??
でも、夕鈴は・・・如何なのだろうか?
「陛下・・・・このまま私を・・・・・・妃にして下さいませ・・・・・」
「何か言った?」
夕鈴の言葉は、轟音にかき消され『私を』の後が聞えない。
そして。
一際大きな轟音が鳴り響き、稲光が地面へと落ちた。
二人とも、その大きさに驚き、瞳を瞑る。
音が鳴りやんで・・・そっと目を開けた時。
僕の腕の中で、声もあげずもがいている夕鈴がいた。
「へ、へ、へへいかっっ。どうして私が抱きあげられているんですか~~。
お、おろしてください~~~~」
さっきの轟音と同じくらいの悲鳴にも似た抗議の声が上がる。
「夕鈴・・・・君が言ったんだよ、『連れて行って』って」
「え~~~、そんな筈はありません!!あり得ません!!!!」
はぁ~~~~そんなもんだよね。
それが夕鈴だよね。
黎翔は短く溜め息を漏らすと、そっと夕鈴を降ろす。
「やっぱり、君は罪作りだよ」
「はい??」
これは、白昼夢??なのか。
それとも、僕の心が求めた産物なのか?
それはわからない・・・・・・・・・。
もしかすると、恋の女神がくれたお中元なのかもしれない。
黎翔は、まだ光っている空を見上げ、乾いた笑い声を立てたのだった。
終。
2013.08.14 SNS初載
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