【所詮誰も李順には勝てない】
2010年03月31日 (水) | 編集 |

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臨時妃 ・ 原作寄り

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前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』からの再録です。






「夕鈴、何見ているの?」

不意に耳元で心地よい声がして、腰が砕けそうになる。

「キャッ・・・陛下!耳元で囁かないで下さい」
「だって僕が何度も呼んでいるのに、聞こえてないみたいだったから・・・」

小犬が拗ねてキュンキュンしている幻が見え、夕鈴は慌てて黎翔の姿をニ度見する。
そして自分が気が付かなかった事の訳を話す。

「すみません!!何を見てるかですか?
あそこ見て下さい、李順さんが侍女さんに囲まれていますよ」
「確かに珍しい光景だね」

李順には後で問い質してみよう。
結構楽しい答えが返ってくるかもな・・・それよりも今は夕鈴との時間を。

「夕鈴、李順なんて放って置いていいから、僕のほうを見てよ!!
はい、あ~~~んして」
「あ~~~ん?」

黎翔の手によって何かが口の中に放り込まれ、その後甘い味が広がる。

「なゃんでゅか・・・・・・・(モグモグ----ゴクン) これ、美味しいですね」
「これは、献上品の『ちょこれいと』というものだよ」
「そうなんですね~~スッゴク甘くて美味しかったです。
例えて言うなら、大人への第一歩って所でしょうか」
「よかった~~~夕鈴に気に入ってもらえて。
よし、これを大量に買わせよう」
「ち、ちょっと、待って下さい!!!私の一言で無駄遣いをしないで下さい!!
大体、こんな上品な甘さの菓子なんてきっとスッゴク高いんですよね~~。
庶民の舌を侮るなかれです!!
食べた事は無くても、どれくらい高いかくらいは解る舌ですよ。
だからそれを『大量に』なんて、一体いくらに為ると思っているんですか??
私を悪女に仕立てたいんですか?陛下は!!」

一気に捲し立てる夕鈴を黎翔は呆気に取られて、見詰めていた。
この後、夕鈴は切々と節約について国王陛下である黎翔に講義と抗議をして、
決して甘い時間ではなくホロ苦い時間となってしまったのである。


こうなれば後は李順に先程の事を問い詰めて、憂さ晴らしでもすることにしよう!!

とんでもない憂さ晴らしを思いついた黎翔は、そそくさと執務室に戻ったのであった。
そして何食わぬ顔で書簡に目を通していると、そこに疲弊した面持ちで李順が帰ってきた。

さぁ、いまだ!!

「李順、先程夕鈴の侍女たちに囲まれていたようだが。
お前も隅に置けないのだな」
「はぁ?あれですか?冗談じゃありませんよ、色恋沙汰では全くもってありませんよ。
大体あそこで捕まって聞かされていたのは彼女達の愚痴ですよ。
なんで私に言うのでしょうかね・・・ブツブツブツ。

迷惑だと眉間に皺を寄せながら、李順はツトツトと黎翔に話して聞かせる。

「愚痴?
誰の?
狼陛下の?」
「そんな訳あるはずないでしょう。
そんな事すれば解雇されたり、それで済めば良いですが・・・それ以上のことも有り得ると考えますよ、きっと!!」

そこまで侍女達には恐い雰囲気は見せてない筈なんだが・・・・と黎翔は少し不満げであった。

「では、何なんだ?もしかしてお前にか?
もう少し陛下とお妃さまの二人きりの時間を過ごさせて欲しいから、
側近であるお前に陛下の政務の量を減らして欲しいとか?」

語尾に『ルン♬』とでも付きそうな感じで、尻尾がパタパタしている。

「そんな訳ないでしょ!!!これ以上減らしたら国政が立ちいかなくなるでしょう。
いい加減もっと身を入れて下さらないと夕鈴殿の所に行く時間が取れなくなりますよ!!」

李順はもういい加減にして下さいと言わんばかりに、頭を抱え込んでいた。
そんな様子に黎翔はムゥ~とむくれる。

これが、天下に名を知らしめた狼陛下なんですからね・・・全く。

李順は、段々先程の話をするのがバカバカしくなってくる。
だが、ここで全部話しておかないときっとこの主君は政務に身を入れてはくれないのだろう~と思い直し、話の続きを再開する。

「侍女達の言いたかった事は、お妃様である夕鈴殿をもう少しお世話したいと。
着飾らせたりしたいんです~~~と口々に言われていたんですよ!!!」
「それはいい!!それではちょっと後宮に許可すると言い渡してくるとしよう。
そして、直ぐにその場で着飾らせて思う存分眺めておくことに・・・」

僕がいなくなるのを察した有能な側近は、椅子から立ち上がろうとする黎翔の肩に両手を置いて阻止する。

「陛下~~~~さっさとお・し・ご・としましょうね」

眼鏡の奥の瞳が、ジロッと怖~~いモノになっている。


この目つき。
これには、例え狼陛下と言えども敵わない!!
有無も言わさず、こき使うんだ!!
国王は僕なのに~~~。

陛下に教えるんじゃなかったですね。
ホラホラ、『心此処に有らず』ってなってますよ。


じと目で見詰めながら、深い溜息を吐く李順。
だが、その呪縛からは逃げられない黎翔は、その後シブシブ書簡の山に三刻ほど向かわされた。
そして随分と進んだ政務に、李順はホクホク顔と為っていたのであった。

肝心の夕鈴は、李順が『程々である為らば、お妃さまをお綺麗にして差し上げるのも良いでしょう』と彼女らの要求を呑んだことにより、意味もなく着せ替え人形と化されていたのだった。

結局つまるところ李順がいなければ、この国は立ちいかず彼の功績は大なのだ。
そして今日も白陽国は、平和にそしてより良い国へと歩んでいるのである。


終。




2012.06.22 SNS初載
2012.06.23 SNS初載



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