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臨時妃 ・ 原作寄り

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前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』からの再録です。






「夕鈴が怪我したと聞いたのだがっ!」

血相を変えて黎翔が、寵妃の部屋に飛び込んできた。

長椅子に腰掛け手当てしてもらっている当人は、
バツが悪そうに首を竦め『スミマセン』と頭を下げる。

「そんな謝る事はないが、一体何故・・・・」

黎翔は足首に巻かれた白い包帯が痛々しく見え、言葉が詰まってしまう。

「それがですね・・・・・笑わないでくださいませね。
恥ずかしいのですが実は夢を見てまして、夢の中で雲の上を歩いていたんです。
それが凄く心地よくてアチコチ歩き回っていたようです・・・そして気が付いたら寝台から落ちて、その落ちた拍子に足を捻ってしまったんです・・・・・・。

余りの恥ずかしい理由に段々声が小さくなっていき、俯き加減になる。

こんな事って、呆れられちゃうよね。
いくらなんでも、寝ぼけて寝台から落ちるだなんて。

夕鈴は全身の熱が一気に顔に集まって来る感覚に襲われ、
真っ赤に染まっている自身の頬に手をやった。
そして気が付くと黎翔が手を握っており心配げに、俯く夕鈴の顔を覗き込んでいた。

周りを見回すと、手当ての終った侍女達は遠慮して草々に下がっていた。


「夕鈴、あんまり脅かさないで・・・何処からか刺客にでも襲われたのかと心配だったんだよ!!
でも良かったよ、あまり酷くはないみたいだからね。
それにしても夕鈴は見る夢も可愛いよね、その夢には僕は出てきた?」
「えっ?陛下ですか??どうだったでしょう??
もう起きてしまったら、雲の上を歩いていた事くらいしか覚えて無くて・・・それに痛かったので・・・」

陛下と一緒にお散歩をしていて、しかも手を繋いで片手には綿飴が握られていたなんて、恥ずかしくて言えるわけがない!!

曖昧に笑う私をいぶかしむ陛下。
二人の間に流れる・・・・しばしの沈黙。
その静けさを破ったのは言うまでも無く、有能な陛下の側近だった。

「陛下、こんなところにいたのですね。あちこち探したんですよ。
あっ、そう言えば、今しがた侍女に聞きましたが夕鈴殿、怪我をしたそうで・・・」

その言葉を遮るように黎翔が口を挟む。

「ほら李順、政務が滞っているんだろ!!
さぁ行くぞ!では、夕鈴またね」

さり気無く怪我の追及を食い止めてくれ、李順と共に部屋を後にしてくれた。
心の中で手を合わせながら、夜のお茶の際には夢のお話でもしようかしらと密かに思う夕鈴なのであった。

それにしてもこの怪我の原因が李順さんに分かったら、
また『お妃失格ですよ!』と嫌味の応酬なのだろうな~~。
もしお給金を下げられたらどうしよう・・・・・。

夕鈴は夏だというのに背筋が凍る思いがし、ブルッと震えが来るのを止められなかった。


*******

そして、夜。


「夕鈴、怪我の加減はだいぶいいのか?」
「はい、御心配有難うございます。
早めの治療が良かったのでしょう、随分良いですわ」
「其れなら良いが」

いつもよりも早い黎翔の後宮渡りにそそくさとお茶の用意を始めようとする夕鈴に、
背後からふんわり抱きとめる腕が伸びる。
其れは、黎翔の逞しい腕。

「今日は、座っておくこと!!お茶なぞ、侍女たちにやらせればよい」

その腕にい誘われ、ストンと長椅子に座らせられる。
今日は仕方が無いと夕鈴も素直に従う。

それを見た侍女達はいそいそ二人分のお茶の用意をし始める。
そのまま準備が終れば勝手が分かっていると言わんばかりに、黎翔の合図を待たずして直ぐにさぁ~~~と下がって行く。
侍女達の行動に黎翔は満足して、二人っきりに為った途端に雰囲気が小犬に様変わりする。

「夕鈴、ホントに大丈夫?
あれから心配で、政務をしながらも気にってしまって今日は早目に来ちゃったんだ」
「え~~、そうなんですか??すみません・・・御心配かけてしまったんですね」
「そうだよ、君は僕の大切な妃なのだからな」
「・・・・・何故、そこで狼陛下なんですか?」
「そうだったね・・・でも大切な人だと言う事は本当だからね。」

その言葉にきっと深い意味なんて無いだろうと思っても、夕鈴は身体の体温が急激に上がっていく。

隣りの黎翔をチラ見すると・・・・じっと夕鈴を見ていて。
その、見るもの全てを絡め取る深紅の瞳が。

「あの・・・へいか・・・如何されたんですか?」
「君のはにかむ顔を見ていたら、政務の疲れも吹き飛ぶな」

いや、だからなんで狼なのよ!
これ以上、狼陛下で攻められたら・・・・・今夜は別の意味で夢見心地だわ。
寝台から落ちるくらいじゃ済みそうもない。

そんな事を考えている夕鈴に、そっと近付く端正な横顔。
おでこににそっと何かが触れた。
って、何??今のは一体??

「夕鈴、今夜は早目に休んだ方がいいよ」

そう言い残すと、黎翔はスクッと立ちあがりそのまま部屋を後にした。
残された夕鈴は。
モチロン、夢の狭間でしばし微睡むことと為った。





終。




2012.08.20 SNS初載


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瓔悠

Author:瓔悠

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