【憂いの理由】
2010年03月31日 (水) | 編集 |

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臨時妃 ・ 原作寄り

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前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』からの再録です。






「夕鈴、どうしたの?浮かない顔して」
「陛下・・・・」

夕鈴を見ると、薄茶の瞳が段々涙目に。

「え、えっ、夕鈴、泣いてるの?」

おろおろ。
どうしていいのかわからず、狼陛下とあろう僕が慌ててしまう。
夕鈴の憂いの訳が分からなくて。

取りあえず、話しやすそうに笑ってみた。

「夕鈴・・・本当にどうしたの?」

やんわりと話しかけてみる。
すると、夕鈴はおずおずと話始めた。

「実は、実はですね・・・いつも使っていた茶壺の縁がが欠けてしまって、
もう使えないからと侍女さんが下げてしまったんです。
すごく使いやすかったし、まだ使えるのに・・・・」
「ふう、何か重大な事が起きたのかと心配したら、そんな事だったんだね。
仕方ないよ、きっと寿命だったんだよ」

夕鈴を見ると涙は止まっていたけど、なんだか瞳がメラメラ力強く光ってる。
あれは、もしかして・・・怒っている??

「陛下、もったいないです!!まだ使えるんですよ。
こんなの下町の主婦だったら、もったいない精神でまだまだつかいます!!」

自慢げに公言する。
更に続けて、王宮の無駄について力を込めて語り始めた。

こうなった夕鈴はもう誰も止められない。
茶壺は戻してやった方がいいのだろうか?
いや、しかし李順に知られたら、夕鈴がお小言をくらうことになりかねないし。

僕は最善の方法を模索して、思考がぐるぐる回る。

「陛下??聞いていますか?」
「聞いてるよ、じゃあ同じモノを取り寄せよう・・・うん、そうしよう」

「何いっているんですか!!そんなの更にもったいないです!!
ただでさえ王宮の備品は高いものばかりなのに・・・・・・・・・・・」

更に説教が始まった・・・・。
僕は黙って聞くしかないんだろうね。
はぁ~~~。

でも。
そんな夕鈴は可愛らしい。
僕に邪心が湧く。


「夕鈴・・・・。」

一応声を掛けて、そのまま後ろから抱き締めてみた。
途端、タピシと固まって微動だにしないどころか、言葉すら出てこないようで。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・あの、その、へいか、これは、何をして・・・いるんでしょう?」


ようやく出てきた言葉も途切れ途切れで。
まるで、酸欠の金魚みたいに口がパクパクしてる。
更に、瞳は白黒してキョロキョロ、ウロウロ。

そんな夕鈴にはお構いなしに、僕は耳元へと囁く。

「茶壺の件は任せてね!!」

僕はにっこりほほ笑むと、まだ平静を取り戻していない夕鈴を残して部屋を出た。


やっぱり・・・僕のお嫁さんは可愛い。
いつまでもそのままでいてね。


そして・・・残された花嫁はというと、茶壺が壊れた憂いなんてどこへやら。
いきなりの陛下の行動に翻弄され、
真っ赤な頬を両手で覆ってしばらく立ち尽くしていたのだった。



終。





2012.07.05 SNS初載




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