【庶民の生活の智恵】
2010年03月31日 (水) | 編集 |

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臨時妃 ・ 原作寄り

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前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』からの再録です。






珍しく、陛下が李順さんを伴って後宮にやって来た。
こういう日は、バイト上司が私にモノ申したい時だ!!

入って来るなり、陛下は気難しい表情で侍女を下げる。
辺りに人がいなくなると、陛下はフニャリと表情が緩んで小犬が顔を出す。
それとは対照的に眉間に皺の寄る側近。
あるモノを見つけて、早速夕鈴にお小言開始のようである。

「夕鈴殿、これは何ですか?」
「えっ、何と言われましても・・・・辞典ですよね・・・」
「ええ、確かに辞典です・・・・でも、この様な使い方はしませんよ」

上司を見ると眉間の皺に加え青筋までもがたっていて、
どうもお怒りのご様子である。

まずったのかな~~~。
どうしよう、まずはやっぱり・・・。

「ごめんなさい!!この辞典があまりにも手頃だったもので・・・」
「手頃?他に変わりになるものはいくらでもあるでしょうに。
寄りによって何故貴重な辞典なんでしょう!!全く貴女って人は!!」

フゥ~~と大きな溜息を吐いた後は、呆れ顔で私を凝視している。

やっぱり、貴重な辞典だったんだ。
まぁ、確かにこんなに上等な装丁は見た事もないものね。
でも、丁度良い重さだったのよね~~。

「ホントにごめんなさいっっ!!
実は陛下から頂いたお花が余りにも綺麗で、
このまま枯れてしまうのはもったいなくて。
、記念に取って置こうと思いまして・・・それには押し花が最適かと。
それでこの部屋に辞典が置いて有ったのを思い出し、重しにさせていただきました。
本当にごめんなさい・・・」

夕鈴は上司の目を見つめながら、言いにくそうに事の成り行きと謝罪を口にする。
そして本当に申し訳ないと、俯いてしまった。

「それで、綺麗に出来ましたか?」
「はっ、はい!
とても綺麗に出来て、最初に作ったものは、本の栞にしています」

顔をぱっと明るくさせ嬉しそうに語る夕鈴を見ると、
仕方が無いと李順もこれ以上は言うまいと・・・いやしかし一言だけでも言っておかねばと!

「夕鈴殿、言っておきますが、辞典は重しでは有りませんからね!
いいですかっっ!!」
「はい・・・・・」

夕鈴は直立不動で返事をして畏まった。
その様子を長椅子に座ったまま、見ていた黎翔がようやく口を挟む。

「おい、李順!!それくらいにしておいてくれないか・・・妃が恐がってしまうではないか」
「陛下!!此処には誰もいないのですから、夕鈴殿をかばう必要はないのですよ!!
キチンと言う事は言っておかないと!!」
「全く、お前は手厳しいよ。ほら、言う事は別にもがあったのだろ!!」
「ええ、夕鈴殿にお知らせが有って来たのですが、今日でなくていいです」

そう言うと李順はそそくさと部屋を後にした。


夕鈴は李順を見送ると、急いで挟んであった押し花をそっと外し卓の上に置いたあと、辞典を部屋の書庫に仕舞い込んだ。
それが済むと手招きしている黎翔の隣りにチョコンと座った。

「夕鈴・・・嬉しいよ。
君が僕が贈った花を、あんなにしてまで大切にしてくれるだなんて感激だよ!!」
「そうですか・・・有難うございます」

黎翔はそのまま夕鈴の手を取り、手の甲に優しく口付けを落とした。

その途端、ぼふっと音をたて夕鈴の頬が見事に真っ赤に染め上がった。
そう・・・・卓の上の、日日草の赤い花弁のように。

その日日草の押し花は卓の上で、微笑ましい二人を見守る様に存在感を強調していたのだった。



終。




2012.07.10 SNS初載


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