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【兎さんの美味しい風邪?】 

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臨時妃 ・ 原作寄り

【注意事項】

前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』からの再録です。
そしてこちらにUPするにあたり、手直しをしております。









外では少し肌寒い風が吹いていて、窓がカタカタと震えている。
黎翔は昼餉の後のひと時に、妃の様子伺いと称してお茶をしにやって来ていた。

「うっ、ううん・・・」

お茶を飲み込んだ後に、何かが喉に引っかかった気がして夕鈴は顔を顰める。

「どうかしたの?大丈夫?」

隣に座っている黎翔が心配そうな様子で、夕鈴の顔を覗き込む。

「いえ、何か喉に引っかかった感じがするんです」
「喉が痛いの?」
「まだ痛いとかまでは無いんですが・・・」
「侍医に診せてみたら?なんなら直ぐに手配させるけど」
「そんなまだ痛いって訳ではないので、診せるまではないですよ。
こんなことでお手を煩わすことはありません!!」

言い切ってみるものの・・・やはりヘンな感じがする。

これはもしかして風邪の前兆??
そうだったら、陛下に移したりしたら大変だわ。
夜のお渡りは控えて頂かないと・・・でもなんて言えばいいのかしら?
下手なことを言うと、大げさに心配してしまうだろうし。

どう言えばいいのかを思案している夕鈴を覗き込み心配そうに揺れる深紅の瞳。

ダメダメ、いけないっっ!!
余計な心配を掛けさせたりしちゃ!!

「ほら、陛下・・・お茶が冷めてしまいますよ。
それにこのお茶菓子、甘くて美味しいですね」

心配を掛けないようにと、食べたいわけではないがお菓子を摘まんでみる。

コクン・・・・お菓子を飲みこむと今度は違和感ではなく、喉に痛みが走った。
でも痛い顔をみせたら、絶対に『侍医だ!』なんだかんだで大騒ぎして、
挙句の果ては看病と称して私の寝台の横に張り付いてあれこれ世話を妬いてくる事になりそうだ。

それはそれで結構面倒な事であり。
そうなると恐らく李順さんが怖~~い顔で、『風邪なんてアナタがひくからですよ、ほら政務が滞ってしまって・・・』と無言で抗議してくるんだわ。
それこそイヤだし、何んと言っても、もし侍医に掛かったら・・・幾ら掛かるのか解ったもんじゃない!!
王宮の侍医よ、きっとかなりの高額に決まっているわよ。
それを借金に追加されたりでもしたら・・・。

夕鈴は、何処までいっても借金のことばかりが頭を駆け巡る。
いくらなんでも李順もオニではないのだから、
さずがに診察代までは請求はしたりしないというのに_。

ここはさっさと部屋で休むに限る。
なので早めにお茶を切りあげて、黎翔を執務室へと送り出す。
そして自分はと言えば、自室でお昼寝と決め込んだ。


「あ・・・良く・・・・寝た・・・・ゴホッ・・・」

声が擦れて出ない・・・・。
どうやら本格的に喉にきてしまったらしい。
これは結構マズイ。


隣の部屋で、なにやら騒がしい声がしている。
この声は陛下?
そして足音が此方に近付いてきた。

「夕鈴・・・・起きているのか?」

中を窺う様に静かに声を掛けてくる。
返事をしたいけど、喉がヒリヒリして上手く声が出ない。

「夕鈴・・・・まだ寝てるのか?」

帳を押し上げ、此方に入ってくる気配が。
この声は聞かせられない・・・これはもう本格的な風邪症状。
陛下に風邪を移す訳にはいけないと布団をまた着こんで、
戸口とは反対方向を向いて寝たふりをした。

「なんだ、まだ寝てるのか」

独り言を呟き、寝台に腰かけた様だ・・・寝台がギシッと音を立てたことから、反対を向いてても分かる。
私は起きている事がばれない様に布団のなかで、
殊更寝息を立てて身体を小さく丸めていた。

不意に頭に何かが触れた!!
あっ、これは陛下の手。

身じろぎせずに為されるままの状態を続けると、気が付けば頭をゆっくりゆっくり撫でられていた。

「夕鈴・・・大丈夫?」

優しく響く低い声が余りに心地よくて、ウトウト眠りの淵に呼び戻される。
気が付けば夢の中に誘われ、本当に規則正しい寝息が辺りに響いていた。

可愛い兎さんは、どうやらまた寝てしまったらしいな。

黎翔は始めから、夕鈴がそっぽを向いたまま寝たふりをしている事は分かっていた。
そして夕鈴がそうした理由もすらも・・・・。
完全に風邪が悪化してしまっており、自分に移したらいけないという優しい気遣いからだと言う事が。

そんな夕鈴が愛おしくて自分の方に身体を向けさせ、
その安らかな寝顔をジックリと見詰めた。

どうやら熱も出てきているらしく、頬が桃色に染まっており少し息が荒くなってきている。
額に手を当ててみると、やはり少し熱い様だ。

これは、もう完全に風邪決定!!

「今宵は、僕がシッカリと看病してあげるからね」

そう呟いて、その熱い額と頬に口付けを落としてみた。
そして熱い息が漏れるその口元に、そっと2度口付けた。
満足した黎翔は侍医を呼ぶために、寝室を後にした。


後日。
あの行為がまずかったらしく、しっかりと夕鈴の風邪を頂いていた。
今度は夕鈴に看病される黎翔の姿があった。

しかし夕鈴は看病しつつ考える。
陛下は何故、移ったのか??・・・と。
夜はしっかりと李順に執務室で缶詰状態にされ、夕鈴の看病も出来ずじまいだった。
それは夕鈴が夜中に目が覚めた時、傍にいたのが侍女たちだった事を知っている。
ならば、いつ?どうして??

それは自業自得だったのだが、夕鈴は気付くはずも無い。
あの口付けが原因であったのは、誰も知らない彼女の夫だけの秘密。



終。





2012.09.28 SNS初載 



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瓔悠

Author:瓔悠

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