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臨時妃 ・ 原作寄り

【注意事項】

前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』からの再録です。
そしてこちらにUPするにあたり、手直しもかなりしております。







「今朝は、夢見が良かったのか、悪かったのか・・・・」

黎翔は執務室で李順と二人で、ひと息ついたところでふと漏らす。

「夢見ですか・・・どんな?」

手は決して留めずにそして余り興味なさげではあるが、一応李順は形式的に尋ねる。

「夕鈴が余りにも積極的でさ、でも違っていたんだ。
起きてすぐに確かめようと思って夕鈴を訪ねて行ったんだけど・・・・もういなかったんだ」
「そんなことでしたか・・・どんな夢かと心配いたしましたが、
どうでもいいですので早くお進め下さい」

どうでもいいって・・・確かに李順は有能なのは認めるけど、
恋愛事に関して興味が無いのはどうかと思う。
はぁ~~、李順に話したのはこちらの間違いだったというわけか。
やってらんない!これは夕鈴にでも会いに行くとするか。

黎翔は李順を此処からいなくする為に審議が足りてない書簡を手当たりしだい探し始めた。
それは、そう、ここを抜け出す算段の為に。

真剣な表情で机上の書簡を目を皿の様にして探しているので、
李順には観念して政務に励んでいる様に見えるらしいが。
そして山の中から何点が見つけ出しニヤリと意地の悪い笑いをすると、
わざとらしく咳払いをして李順の目の前に書簡をすぅ~~と差し出した。

「李順!!この書簡はまだ審議が足りないと思われるので差し戻しだ。
政務室に急ぎ持ち今すぐ審議させ、再提出させるように」

李順は案の定黎翔から書簡を受け取ると、直ぐさま政務室へと届けるために部屋を辞した。
黎翔はシメシメとこの隙に夕鈴の待つ後宮へと急ぎ足で執務室を抜け出した。

後宮では先触れをしていなかった為少し侍女たちが慌てていたが、夕鈴は穏やかに黎翔を招き入れた。
そして片手をヒラリと上げると、さっさと侍女を下げてしまった。

「陛下、今日はお早いんですね。
まだ執務中では?」

隣に座る夕鈴は、微笑みながらお茶を手渡してくれた。
茶杯を手渡す手に、黎翔は自分の掌を重ねて夕鈴の小さな手を覆う。
夕鈴の柔らかい手の感触でこれは夢ではないと感じて、何だか身体の芯が暖かくなった。
上目づかいで夕鈴を見ると恥ずかしそうに頬はほんのり紅く染め上げているものの、
手を払い退ける事はしなかった。

「うん、まぁ、まだ執務中だけど・・・・休憩をしに来たんだよ。
珠にはこうして夕鈴とお茶でも飲まないと、執務に支障が出てしまうよ」
「そうですか・・・それはお疲れでしょう。
ごゆっくりお寛ぎ下さいませ」

そう言ってニッコリ微笑む夕鈴は黎翔の手を取ると、そのまま自分の両手で包んだ。
柔らかい肌。
温かい体温。
黎翔は心地よさを感じた。

おかしい・・・・・怪しい。
夕鈴は二人きりだというのに、いつもとちがって積極的だ。
これはもしかして今朝の夢は正夢だったとでもいうのだろうか???
それか、白昼夢とでも?
いや、違う!
感じる夕鈴の手の感触は本物だし。

僕の怪訝そうな表情を見て、夕鈴はニッコリと笑うと僕に問いかけてきた。

「陛下?如何なされましたか?」
「いや、夕鈴・・・いつもと違わない?」
「何がですか?」
「いや・・・僕が近くに居て、手を握ってもはねのけたりしないし」
「えっ、何故そんな事をしないといけないのですか?」

やっぱり夕鈴は変だ・・・。
何か怪しげな薬でも飲まされたとでもいうのか?
じゃあ、これを試してみることにするか。

「夕鈴、そこにある桃を僕に食べさせてくれる?」
「桃ですか?」
「うん、そう」

夕鈴は首を縦に振りコクリと承諾すると、桃を上手に剥いて楊枝で突き刺し黎翔の口元へと運んだ。
でもよく観察してみると、桃に突き刺さった楊枝をを持つ手は小刻みに震えているようだ。

でも折角の夕鈴からの据え膳。
これは食わねば、勿体無い。

夕鈴の手首を掴むと、自分の口元に桃が届くところまで持っていく。
そして夕鈴からの桃をパクリと、口へ入れる。

でも、それで終わりでは無かった。
夕鈴の手に桃から滴った雫をぺろりと舌先で舐めてみた。

「えっ、あっっっっ!!
陛下っっ!!!!!
何をしているんですかぁぁぁぁぁぁぁ」

夕鈴は羞恥で赤い顔をして大声で叫ぶ。

「えっ、だって勿体無いよ、桃の果汁って甘くて美味しんだよ」
「それは食べなくていいんですっっ!!!!」
「折角、夕鈴が食べさせてくれているのに~~」

夕鈴は頬を膨らませて、プイッと横を向いてブツブツと呟く。
黎翔は耳を澄ませてその独り言を聞いてみる。

「まだまだ・・・・だわ。
こんな事で動揺してしまうなんて・・・・。
プロ妃には程遠いわ」

くくっ・・・やっぱり夕鈴だ!!
はは~~~ん、なるほどね。
やっと納得した。
夕鈴のこの不審な行動が!!

何だか、いつもの反応でホッとした。
やっぱり夕鈴はこうでないと!!
いつまでも初々しい反応の夕鈴が愛しいのだから・・・。

「ごめんなさい、陛下・・・・まだまだですね、プロ妃は」

申し訳なさげに項垂れる夕鈴を、下から覗き込み黎翔は囁いた。

「夕鈴はそのままでいいんだよ。いつまでもいつまでも僕の傍にいてくれれば」
「何言っているんですか!!
早く借金を返さないといけんですよ、私は。
そうしないと帰れないんですからっっ!!!」

夕鈴は、凛として答える。
黎翔は自分の気持ちなんて夕鈴には全く通じないと少しがっかりしつつも、
それでも今傍に居てくれる幸せを噛み締める。

「へ~~~い~~~か~~~!!!やはり、ここでしたね~~~。
書簡はとうに出来ておりますよ~~~お早く~~~お戻り下さい」

恨みがましい表情で李順が迫りくる。

折角の休憩も、これまでだな。
では仕方ない・・・戻るとするか。

今朝の夢は、やっぱり夢だったけれど。
それでも・・・夢は夢かもしれないが、それはいつか叶えてやると信念をもってすれば夢は叶わぬ事はないのだろうから。

「夕鈴、またね」

名残惜しげに立ち去る黎翔に、向き合う夕鈴は深々と頭を下げる。

「はい、また夜にお待ち致しております」

そして最上級の微笑みで、僕を送り出してくれる。
きっとこれは夕鈴の言うところのプロ妃の見送りということなのだろう。


「はぁ~~~~~~~」
「何を溜め息なんてつくのですか!!
私の方が吐きたいところですのに!!」

大きく嘆息を吐く黎翔に、オニの形相で迫る李順。

「はい、はい!!行くから。
じゃあ夕鈴、夜を楽しみにしてるよ」

李順に急かされ、立ち去った黎翔を見送った夕鈴は腕を大きくあげて伸びをする。
そして一言!

「あ~~~あ、疲れた!!!
プロ妃って肩凝るのよね~~やっぱりいつも通りが一番なのよ」

プロ妃には、ほど遠い夕鈴の姿であった。
その後、当分プロ妃は止めてしまう夕鈴なのであった。

まぁ、それはそれでいつもの夕鈴も可愛いから、
黎翔にしてみたところで全く意に返さないのだったが。

そうして夫婦ごっこは続くのだった。
夕鈴が本物の妃となるまで。





終。






2012.07.09 SNS初載


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瓔悠

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