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臨時妃 ・ 原作寄り

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前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』からの再録です。









「陛下、こちらにお座り頂けますか?」
「え、どうしたの?夕鈴」

夕鈴は小さな小箱を手に長椅子へと座り、黎翔に手招きしている。
何だろうと思いながらも、言われるがまま隣へとゆっくりと腰かけた。

「陛下・・・申し訳有りませんが、今ここで上着を脱いでくれませんか?」

益々もって、何だろう。
まさかのお誘い???
夕鈴の限ってそんな事なんて無いか・・・・。

上着を脱ぐとそこに現れたのは、鍛え上げられた強靱の肉体美。
余計な肉などついているはずもなく、引き締まった胸。
剣を振るう二の腕も無駄のない筋肉が付き、この腕から振り降ろされる剣舞は激しいものであろうと容易に想像できる。

夕鈴は頬を上気させながら、しばし黎翔の上半身を惚れ惚れと見惚れていたがハッと我に返り、
いそいそと小箱から道具を取り出す。

「陛下、あのですね・・・袖口がほつれていましたので、お直しさせていただきますね」

受け取った上着に針を通し、手早くほつれを直し始める。
夕鈴の鮮やかな手慣れた手つきに黎翔は感心しつつ、ジッと見つめていた。
そんな真剣な眼差しに夕鈴も気付き、恥ずかしそうに更に手早く済ませようとする。

「イタッ」

見詰められいる事が気に為り、気もそぞろに作業をしていたものだから、針を謝って指に刺してしまった様だ。
刺してしまった指からは微かに血が滲んでいる。

「夕鈴!!」

名前を呼ばれ気が付くと、心配そうな黎翔の顔が目の前に。
そして、指を掴まれそのまま黎翔が口元に運ばれた。

「だっ、大丈夫です!!!」

慌てて自分の手を引っ込めると、長椅子の端まで飛びのいて黎翔から離れようとする。

「いや、血が出ているよ」
「い、い、いえ大丈夫です・・・・というより、何をされていましたか?」

訊くのも恥ずかしかったが、思わず訊いてしまった。

「治療だよ」
「治療って・・・・・・・・・・」

何を今更・・・というような飄々とした黎翔の答え。
夕鈴は、黎翔の呆気ない答えにその後の言葉が続かない。

二人の間に沈黙が流れてきた。

「くしゅん」

沈黙を破ったのは、黎翔の小さな小さなくしゃみ。

「あっ、ごめんなさい。直ぐになおしますね」

慌ててほつれを直すと、黎翔に手渡す。
上着を受け取った黎翔がほつれの直しがキレイに出来ていることに感心する。

「夕鈴、どうも有難う」

満面の笑みで感謝を述べる。
その表情に、夕鈴も幾分安心する。

「はい」

黎翔よりも柔らかく、夕鈴は暖かい笑みをお返しした。
それでも、先程の行為には納得がいかない。

「あの・・・陛下、こんな事以前にもありましたよね」
「そうだった?」
「確か、あれは・・・私が茶杯を割った時に」
「そんな事有ったような、無かったような」
「あの時も、その、あの・・・・陛下が・・・・・」

『私の指を舐めて治療しましたよね』とは、夕鈴は言えない。
だって、そんな事口に出して言うのは恥ずかしいし。

「僕が何かしたっけ?」

黎翔はホントは覚えているくせに、すっ呆けた質問をする。
訊かれた夕鈴は、言えるはずもない。


大体、あんな機会なんてそうそうないのだから、自ら治療してもいいはずだよ。
僕たちは夫婦なんだし。
これこそ、役得って感じだよね。
夫としての・・・・・・・。

脳内で至らぬ事を考える黎翔の表情は、まさに悪いオトコというモノだった。



終。





2012.07.25 SNS初載



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瓔悠

Author:瓔悠

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