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臨時妃 ・ 原作寄り

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前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』からの再録です。
そしてこちらにUPするにあたり、手直しをしております。









『~~~~~ラララ♪~~~~~』

鈴がキレイな音色を奏でる様な涼やかな歌声が、
四阿から少し離れたこの馬舎まで風に乗って運ばれてくる。

あの歌声は、夕鈴だよね。

黎翔は愛馬の背を優しく撫でながら、その高く澄んだ声に聞き惚れていた。
夕鈴は普段人前で自分の歌声を披露する事はなく、
こんなところにまで聞こえてくるなんてことは稀である。

よっぽど気分が乗っているのか?
何か他に理由があるのか?
そのどちらかであろう。

もっと、近付いて聞いてみたい。
そんな衝動に駆られて少し歩み寄るがその行く手を阻むモノ、いや動物が・・・・。

『ブヒィ~~~~ン』

愛馬がくりくりしている瞳を黎翔に向けて牽制してきた。

「お前は、俺の邪魔をするのか?」

少しムッとしつつも仕方ないと諦め、また馬舎へ愛馬を戻す為に綱を握った。

愛馬を馬舎に戻して急いで四阿に足を運んでみたが、すでに人影はなかった。
夕鈴はどうやら後宮に戻ってしまったようだ。

はぁ~聞きそびれてしまったな。
今度おねだりしてみようかな。

残念に思いつつそのまま執務室に戻ったものの、
どうしてもあの歌声が頭を駆け巡り政務に熱が入らない。

「あぁ~~~~!!どうしても気になる!!!!」
「如何なさいましたか?」
「李順、悪いがどうも気に為る事があるから、あとは頼んだぞっっ、いいな!」
「陛下、どちらへ?案件で気に掛かる事でも?」
「ある意味、案件よりも重大なことだ」
「はぁ?それは??」
「お前は知らなくていい事だ!いいな、任せたぞ!」

李順に後を託し、黎翔は風のごとく颯爽と駆け抜けて出て行ってしまった。
残された李順は訳が分からないものの、あの慌てようからどうせ恐らくあのバイト妃がらみであろう事くらいは容易に分かったのである。
そして直ぐには戻る事は無いだろうと、机上の書簡の山を少しでも増やしておこうと意地の悪い事を考えていた。

その頃夕鈴はというと自室の窓辺の淵に肘を乗せ、流れゆく雲を眺めていた。
本当に今日の天気は心地よく、気分が高揚してきて鼻歌でも出てきそうだ。

室内に目をやると侍女たちはそれぞれ忙しそうに立ち働いており、
元来働き者な自分も手伝いしたくてウズウズしていた。

そして堪らず・・・・おずおずと聞いてみたのだった。

「あの・・・何かお手伝い出来る事は有りませんか?」
「とんでもありませんわ、お妃さま。
もし落ち着きれませんのでしたら、散歩にでも行かれたら如何でしょうか?」
「そうですね・・・」

お散歩って、さっきも行っていたんだけど。
まぁ私がいたら監視人がいるようで、お仕事も捗らないのかもしれないわよね。

「では、行って参りますわ」
「「「行ってらっしゃいませ」」」

ニコヤカに侍女達に見送られ、自室を出てはみたものの特に行くあてなんてない。

どうしようかしら??
ボンヤリ回廊をトボトボ歩いていると、前から急ぎ足で近寄ってくる男性が・・・・。
あれは。

「陛下??如何なさいましたの?随分とお急ぎの様ですが・・・」
「ああ、急いでいたのだ。君に逢うためにな」

妖艶な笑みを向けつつ、黎翔は目の前の愛しい妃に無言で手を差し出した。

ここはだれが通るのかわからない回廊。
妃演技は念を入れて。

夕鈴も黎翔に答え、無言で優雅に微笑を口元に乗せて差し出された手に自分の手を乗せた。

「では、参ろうではないか」
「えっ、参るって、一体どちらへ?」
「それは、私に任せてくれればいい」
「・・・・・・はい」

黎翔の手に導かれ辿り着いたのは、森の入口に建てられた人気のない静かな四阿。
聞こえてくるのは、木々に止まって羽を休めている小鳥の鳴き声くらい。

黎翔は備え付けの椅子を夕鈴に勧めて座らせた。
夕鈴は大きく瞳を見開いて黎翔を見詰めている・・・何か言いたい事があるかのように。

「夕鈴・・・如何したの?」
「いえ、如何したのではありません。
あの・・・・政務は?なぜ、あそこに陛下がいらっしゃったのでしょうか?」
「それは・・・・・実は、気になる事が有るんだ!!」
「気に為る事ですか???」

黎翔は身を乗り出して、質問してきた夕鈴を凝視する。

「そう、気に為るのは・・・・・・・君のその澄んだ歌声を聞きたいのだが。
如何すれば歌ってくれるのかと言う事がだよ」
「エッ・・・・・・陛下・・・・それを何処で??」

夕鈴は瞬時に目をパチパチさせて、ビックリ顔。

それもそうだろう。
誰にも聞かれていないと思ったから、歌っていたのだろうし。

「実はね、今日馬舎にいたんだけど、その時にね。
歌姫(ディーヴァ)のキレイな歌声が聞こえてきたんだよ」
「・・・・・・聞かれていたんですか・・・恥ずかしいです」

消え入る様な声で答える声に、黎翔は破願しつつ夕鈴を凝視し懇願する。

「ねぇ、僕のディーヴァ。
もう一度聞かせてはくれまいか?その美声を」

俯いた夕鈴は、顔じゅうの体温が上がっていくのを感じていた。
それでも黎翔のたっての願いとあれば叶えたい・・・と意を決した。

「上手い訳ではないのですから、あまり期待しないで下さいね」
「そんな事はないよ・・・だって僕が聞き惚れて、政務が手につかないくらいなんだから」
「では、歌いますよ」

夕鈴はスクッと立ちあがると、そのまま四阿から出てその場で立ち止り両手を広げた。
陽光を浴びてキラキラ光る薄茶の髪が風で揺れている。

夕鈴は大きく息を吸い込むと、歌い始めた。

『~~~~~~ラララ♪~~~~~』

この声だ・・・先程の美しい歌声は・・・。
黎翔はウットリと瞳を閉じ聞き惚れていた。

小鳥のさえずる鳴き声が伴奏となって夕鈴の歌声を引き立たせている。
伸びやかな軟らかい美声。
いつまでもいつまでも聞いていたい声だった。

「陛下・・・・終りましたよ」

目を閉じたままだった黎翔に届く夕鈴の言葉。

「有難う!!とってもキレイな歌声だった。
本当に聞き惚れてしまったよ」
「そうですか・・・ありがとうございます」

二人は顔を見合わせ、ニッコリと微笑んだ。
その頬に優しい風がサワサワ撫でるように触れていった。




終。




2013.01.18 SNS初載



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瓔悠

Author:瓔悠

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