【青慎の懇談】
2010年04月01日 (木) | 編集 |

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臨時妃 ・ 原作寄り

【注意事項】

前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』からの再録です。
此方のSSSは、息子の小学校懇談会当日にポッコリ思いついた作品です。
きっと日常にはこんな事も有るだろう~と言う感覚でお楽しみ下さい。






「あの・・・李順さん、お願いがありまして。
実は、明日の一日だけ実家に帰りたいんですが・・・」
「どうされたんです?いきなり!!」

眼鏡の奥から、『不用意に実家に帰るのは避けて下さい!!また陛下がついていくではありませんか・・・』と言い兼ねない視線が突き刺さる。

いや、ここで、引きさがる訳にはいかない!!

「あのですね、実は、青・・・いえ弟の学問所で懇談が有るんです!!
ウチの父は全く当てに為らないので、代わりに毎年私が出ているので。
今年も行きたいと・・・」
「そうだったんですか・・・・・」
「はい!お願いします」

私は、頭を深々と下げて了承の言葉を待つ。

「では、仕方ありま・・・・」
「夕鈴!!任せておいて!!僕も行くから」

「「陛下は、行く必要はありません!!」」

夕鈴と李順の言葉が重なる。

冗談じゃない!これ以上政務が滞りでもしたら、
あの宰相に何を言われるか分かったものじゃないですよ!!
冗談じゃない!陛下が勝手に付いて来て政務が滞ってしまったら、
李順さんの怒りから『減給』なんてことも有りうるじゃない!!

二人の思惑は違えど、黎翔に願う事に関しては一致する。

「酷いよ~~~お嫁さんが帰るのなら、夫である僕もついていくべきだよ。
ましてや青慎君は義弟でも有るのだし・・・」
「私はバイト妃です!!
よって、陛下と青慎はなんの関係も有りませんっっ」

きっぱり言い切ると、夕鈴は踵を返して部屋に戻ろうとする。
これ以上此処で話をしていたら、いつの間にか黎翔がついて来ることにも為り兼ねないからだ。

「夕鈴~~~待ってよ。ま
だ話は終わってないよ~~」

黎翔の言葉で、夕鈴は仕方なく振り返った。

「いえ、これ以上此処にいて政務のお邪魔に為っても申し訳ないですし!!
李順さん、この話は後で・・・」

小犬が置いてけぼりを食らった時の様な表情は、一番性質(たち)が悪い・・・・。
気がつけば了承されられている事が多いから。

「では、失礼いたします」

今度こそ踵を返して逃げるように出て行った。


************


そして次の日。
何とかあれからこっそり話を付けて、下町に帰って来た。

「さぁ、学問所にいくわよ~~~今年は何て褒められるのか楽しみだわ」
「そうだね、青慎君は優秀みたいだし」

「・・・・・・・・・・・・・・」

夕鈴が絶句し後ろを振り返ると、ニコニコ顔で愉しそうに笑う黎翔が立っていた。

「なっ、何で、ここにいるんですか~~~~~~~~~~~」

余りの驚きに夕鈴の声は大音響となり、道行く人がその声に反応して驚きつつ振り返る。
自分に集まる視線に気がつき夕鈴は恥しくなって俯いた。

「だって、昨日行ったはずだよ!僕も行くって」
「私は駄目だと言った筈ですよ」
「駄目よ駄目よもイイのうち!!」
「それを言うなら、『嫌よ嫌よも好きのウチ』ですが・・・」
「ほら、じゃあ、イイじゃない!!」

なんだか、訳のわからない屁理屈をこねてくる。

「分かりました・・・来たものは仕方ありませんものね。
但し、学問所へは私だけで行きますからね」

ここは、チャンと釘は差しておかないと!!!

「そうだね、夕鈴解ったよ!!(ニコニコ)帰りは一緒に帰ろうね」

余りにも気持ちのイイ返事をして、黎翔は何処へ行くとも告げずに消えて行った。

陛下・・・何処に行ったのかしら?
下町の視察??
まぁ、いいわ、何にしても良かった・・・付いて来られるのも困るし。
さぁ行くわよ!いざ青慎の学問所へ!!


学問所に着くと、廊下には息子の成績を我先に聞こうと沢山の保護者が教室の前で待機しており、その中において夕鈴が一番若く周囲の目を引いていた。
夕鈴は特に知り合いもいない為、談笑する保護者の話をボーと聞きつつ椅子に座りただ順番を待っていた。

「汀 青慎君の保護者の方、中にどうぞ」

中から呼び出す声が聞こえてきて、夕鈴は椅子から立ち上がると直ぐに返事をした。

「は、はい!今参ります」

緊張しつつ中に入る。
後ろの保護者から『まぁ』『あの方は?』と声が聞えてくる。
でもこれは年若い保護者に対する驚きの声だろうと思い、特には気にしないこととした。

けれど目の前の先生も怪訝そうな視線を向けている。
でも先生には何度も会っているから、自分が父の代わりにくる事は了解済みである筈なのだが・・・・。

そして先生は徐に訊いてくる。

「あの、お姉さんと・・・此方は?」
「はい?私だけの筈ですけど・・・」

夕鈴は不思議に思い、訊き返す。

「あのですね・・・後ろにお立ちの男性は?」
「?????」

壊れたからくり人形がギィ~~と音を立てるように、ゆっくりと首を後ろに向けた。

「あっっ!!!へい、イエ、李翔さん!!どうして???」

夕鈴の驚きの言葉は掻き消されるように、
当たり前のように付いて来てしまっている黎翔は先生に話し始めた。

「こんにちは、先生殿!私は、此方の女性の仕事上の上司です。
ただの付添ですからお気になさらず・・・」
「気にしますよね~先生!!」
「いっ、いえ、私は大丈夫ですが・・・」

先生は汗をぬぐいつつ、曖昧に笑う。

全く!!さっきの約束は如何したのよ!!!

「もう、イイです!!この方はお気になさらず、お話をどうぞ」
「ではですね、青慎君は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

先生が話している間、隣りに座る黎翔は物珍しそうに『ウンウン』と頷きながら、話を聞き入っていた。
最初は夕鈴も気に為って話を聞くのもそぞろになっていたが、
途中からはどうでもよくなり先生の言葉を聞き洩らすまいと真剣に聞いていた。



そして四半刻程で懇談も無事に終り、学問所から二人並んで下町ぶらぶら歩いていた。

「夕鈴!愉しかったね~それに青慎君、とっても優秀なんだね。
夕鈴にとって本当に自慢の弟君だよね~」

ちゃっかり先生の話を最後まで聞いた黎翔は、とてもご機嫌で夕鈴にニッコリと微笑んでいた。
そんな黎翔の様子に夕鈴は頭を抱える。

「愉しい訳ないでは有りませんか!!!
もう帰ったら、また李順さんに怒られてしまいます」
「大丈夫!李順には僕が取りなしておくから!
それにしてもホントに凄いよ、青慎君。
これはきっと官吏の登用試験合格は間違いないよ!!
先生のお墨付きもある事だし!!僕も青慎君が出仕してくるのが楽しみだよ~~」
「そうですか~~~そこまで褒めて頂くと嬉しいです!!」

夕鈴は頬を染めて、嬉しそうにニッコリと笑う。
最愛の弟を褒められたとなれば、悪い気はしない。


夕鈴・・・・青慎君を褒められて段々上機嫌になってきたな!!


「じゃあ、夕鈴!!懇談も無事に終った事だし、此処は美味しい甘味処でゆっくりとお茶でもして帰ろうよ」
「でも、李順さんが・・・何と言うか・・・」
「さっきも言ったけど、大丈夫だよ!だから行こうよ~」
「分かりました、では行きますしょうか」
「やった~~~夕鈴のおすすめの所に案内してくれる?」

始終ご機嫌な黎翔は、無意識に夕鈴の腕に自分の腕を絡めてきた。
瞬時に顔を赤らめ、逃れようとゆっくりと絡められた腕に反対の手を回す。
それを察した黎翔は、離してなるのもかと無言で夕鈴を引っ張って行く。

はぁ~~~。

心の中で大きく嘆息した夕鈴は、もうなされるがまま甘味処へを向かった。
黎翔は、益々ご機嫌に足を早めたのだった。


そしてこの後甘味処でゆっくりと愉しんだ二人が王宮に帰りついたのは夕闇が迫る夕刻で、
待ち構えていた李順に夕鈴も巻き込まれこってり絞られたのは言うまでもない。
黎翔が取り成すと言っていたが、李順の怒りは誰も止めることなんて出来ない事を夕鈴は知ったのだった。


終。






2012.11.26 SNS初載



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