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臨時妃 ・ 原作寄り

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前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』からの再録です。






最近急に寒くなってきた・・・・特に今日は外の気温と室温が格段に違っている。

こんな時は、あつ~~~いお茶が最高に美味しい。
そしてホカホカの饅頭がお茶うけだと尚更嬉しい。


朝から夕鈴は今日の予定がない事を確認して、厨房に顔を出してみた。
これはたまにある事でなので厨房の料理人たちは驚く事はなかったが、
緊張するらしく厨房の空気がピンと張ったモノに変わる。

「お妃様・・・如何なさいました?
朝餉で何か不手際が御座いましたでしょうか?」

料理長が恐縮しきって頭を下げてくる。

「いえ、そんな事は御座いませんよ、今朝も美味しく頂けました。特にお魚が絶品でしたよ」

夕鈴は、柔らかなお妃スマイルで返す。
料理長は安心したが夕鈴の訪問理由について疑問に思っているのを言い出しにくいようで、
それでも何か言いたい雰囲気を出しながら夕鈴を見ている。
それを察した夕鈴が、お妃らしくゆったりと微笑みながら訪問理由を伝えた。

「あの・・・・今日は寒いですので、陛下にお饅頭でも食して戴きたいと思いまして。
出来ましたら厨房をお借りいたしたいと・・・・」
「あ、その様なご用向きで御座いましたか。
はい喜んで!」

料理長が合図をすると、他に作業をしていた料理人たちが一斉に片づけを始め即座に場所をあけてくれた。

「申し訳ありません。皆さんのお手を止めてしまって・・・・」
「いえ、とんでもありません、大丈夫ですよ。
ただ一つお願いが・・・・」
「はい、何でございましょう・・・・私が出来る事でしたら」
「お妃様がお饅頭をお作りになる所を見せて戴きたいと思いまして」
「えっ?」
「いえ、陛下が『美味しい、美味しい』といつも仰っておられるとのことで、
我々も見習いたく存じます」

え~~~~私が作るモノは簡単だし、庶民が食しているモノだから珍しくて陛下が喜んでいるだけなのに。
それを見せて欲しいだなんて、一流の料理人が??

夕鈴はハッキリ言って困惑してしまっていたが、料理長の真摯な眼には勝てなかった。

「では・・・どうぞご覧ください。
ただ・・私が作るものはとても簡単な物ですが」


そして厨房では、一流の料理人相手に『夕鈴菓子講習会』が急遽始まったのである。

「これは、この様に混ぜます。
そしてシッカリと捏ねて下さい」

夕鈴の手つきに惚れ惚れしている料理人。
その視線の中、夕鈴は少し緊張しつついつもの行程で手早く作っていく。
その間、『ほーーーー』『素晴らしい』と感嘆の声が上がる。
いつしか料理人達の関心の的になっていることなんて、夕鈴は全く気付かず。
一心不乱に、生地をこねていく。

*******


して数刻後。
美味しい匂いを辺りに漂わせながら、
ホカホカの庶民饅頭が、ゴロゴロと出来上がったのである。

夕鈴は、見てくれていた料理人に気前よく振る舞った。
食した誰もが『美味しい』と喜んで食してくれているのが嬉しくて、
夕鈴は何だかホンワリしていくのを感じていた。


そして気がつくと、元々の目的であった陛下への饅頭差し入れ分はかなり少なく為っていた。
でも折角陛下の為に作ったのだからと、陛下と李順のいる執務室へと運んで行った。
いつも通り『美味しい』と喜んで食べてはくれたものの、黎翔は何故か不機嫌だった。

如何したのかしら?
『美味しい』って言ってくれてるけど・・・・。

「ねぇ~夕鈴、もうこれだけ?
いつもはもっと沢山あるのに・・・もしかして、珍しく失敗でもした?」
「いいえ、今日は厨房の皆さんが見ていたいということで、急遽『菓子講習会』となってしまって、皆さんに食していただいたんですよ。
皆さん『美味しい』と言ってくださって嬉しかったです!!
それに一流の宮廷料理人の方にお教えするなんておこがましいですけど、とっても楽しかったです。」

夕鈴はウキウキとしながら、語っていた。
突如、窓や戸が開いているわけでもないのに、
執務室の温度が下がった気がした。
背筋に妙な寒気を感じる。

夕鈴のお手製の饅頭を厨房の奴らに分けてやっただと!
私だってめったに口に出来ないのに??

そう、夕鈴が先程の出来事を愉しそうに話して聞かているのが黎翔にとって気に入らないのだ。
それこそ、十分不機嫌になるべき要素だった。
執務室に冷気ををもたらせ、部屋の温度が下がり始めているのであったのだ。
それでも夕鈴の饅頭はしっかりと全て食べつくし、
それを確認した夕鈴が部屋に戻ろうとするところに黎翔は言い放った。

「夕鈴・・・今度から厨房で何かを作る時は、僕も一緒じゃないと駄目だよ」
「なんでですか?」
「なんででも!!いいから、『はい』は??」
「わかりました」

そうして。
面倒くさくなった夕鈴は、これ以後お菓子を作る機会をめっきりと減らしたのであった。

それは一重に、陛下がついて来るという事柄を了承させられたから。
これ以上陛下が政務をこなす時間を奪っては、李順さんに減給なぞされては敵わないから。
只、それ一点に尽きるのである。

『自業自得』・・・この言葉が相応しい。
だが、その事を作りだしたのが自分自身である事を理解していない黎翔は、
今日政務に縛られながら寵妃のお手製饅頭の差し入れを待っているのだった。



終。



2012.10.30 SNS初載


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瓔悠

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