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臨時妃 ・ 原作寄り

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前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』からの再録です。








ガチャッン!!!!
音を立てて壊れのは、青磁の茶杯。

「夕鈴、怪我はない??」

黎翔は長椅子から慌てて駆け寄り、夕鈴の柔らかな手を取り怪我が無いか確認する。

「は、はい!
大丈夫ですが・・・・・・・・茶杯が、茶杯が・・・・・・。」

夕鈴は茫然として、砕けちった茶杯を見詰めていた。
ただもう元には戻らないという事だけは、真っ白になった頭でも理解出来る。
おぼろげな動作で、座り込んだ夕鈴は割れた茶杯の破片を慌てて拾い始めた。

「イタッ」

気が付けば尖った破片で人差し指を切っており、赤い血が滲んでいた。
それをただ眺めていて、一向にどうにかしようとはしなかった。


「夕鈴っっ、何しているんだ!!」

力強い手で手頸を掴まれ、驚く暇もなく人差し指は黎翔の口腔内に姿を消しており、ヒリヒリする感覚だけが夕鈴にさざ波の様に襲ってくる。

「えっ、陛下何をしているんですか?」

取り敢えず聞いてみた。
一見すれば治療している事くらい分かる。

でもそれだけではないのだ・・・・黎翔の行為は。

口腔内から解放された人差し指を・・・いいや、それだけではない。
中指も薬指もはたまた小指まで、丁寧に舐め上げられている。
離してもらおうと、涙目で懇願するものの一向に離してくれそうにない。

その内、羞恥で顔が・・いや全身が火照って血が沸騰しそうな感覚に落ち入ってくる。
そして天と地がぐるりと反転し、意識が急降下していく。

「夕鈴・・・・・・・ゆうりん・・・・」

黎翔は慌てて止めてみたが・・・時すでに遅し。
もう夕鈴は夢の住人になっていた。
黎翔は、抱き上げてそのままゆっくりと寝台へと運んだ。
そして、砕けた茶杯をかき集め、しばし考え込む。

このまま夕鈴の借金追加にしてもいいけど・・・・。
恐らくそうすると夕鈴はまたガッカリするし、
下手したらもう割って借金追加はイヤだからと、美味しい夕鈴のお茶が飲めなくなるのは困る。
それだけは絶対に避けなければ。


***********


そして、夕鈴が目覚めたときには紅く空を染める夕刻であった。
起きあがり、居間に行って茶杯の確認をする。
ひとつ足りない筈なのに、ちゃんと数は揃っている。

うぅ??あれは夢だったのかしら・・・・・いやそんなはずはない。
でも割れた筈の茶杯はキチンとある。
あれは確か一品ものの筈で・・・・・。
では夢??

その時。
人差し指がチクッとして、確認してみると破片で切った時に出来た傷がうっすらと残っている。

夢じゃない。
ではどうして???
・・・・これは、恐らく陛下だわ。
キチンと借金に追加して頂かないといけないのに。


何処からか見られている気配を感じ、辺りを見回して見ると戸口から陛下がこちらをみてニヤリと笑みをこぼしている。
優雅に歩いて来て私の手を取ると、傷を見て痛そうに顔をゆがめた。

「陛下、茶杯はどうされました?」
「茶杯??」
「割れた茶杯ですよ」
「ああ、あれ・・・処分したよ。
でも大丈夫!また同じモノを用意したから」
「どうしよう・・・・また借金が・・・・」
「気にしないで、李順は全く知らないから。
僕と夕鈴だけの秘密事だよ」

黎翔は片目を瞑り、イタズラっぽく笑ってみせた。
その笑顔に流されそうになるのを抑えて、夕鈴はハッキリと言い切った。

「駄目ですよ!壊してしまったのは私ですし、ちゃんと弁償しないと」
「あっ、そうそう・・・夕鈴はもう対価を僕に支払っているから、心配しなくていいよ」
「対価??」
「そう・・・・その手でね」

黎翔は黙って夕鈴の手を取り、自分の掌にのせて手の甲にそっと口付けを落とした。

「何をするんですか~~~~~~~~」

夕鈴の絶叫は部屋中を振動させる位のものであり、
そしてワナワナ身体を震わせて全身で怒りを表していた。

クスクス笑って夕鈴の怒りなどモノともない黎翔は、先程の行為を思い出し愉悦に浸っていた。
それが更に夕鈴の怒りのツボにハマったようで・・・・。

「もう陛下なんか、だいっきら~~~~~い」

大声で叫ぶと、そのまま寝所に籠ってしまった。
それを見て、黎翔はクスクスと口元を綻ばす。

『もう』ってことは、もうすでに僕の事は好きってことだよね・・・夕鈴。

黎翔はご満悦に部屋を出て行くと、回廊を軽い足取りで執務室へと歩を進めた。
その後夕鈴には茶杯の借金追加はされる事無く、
この事は闇に葬られるように消えてしまったのであった。




終。




2012.9.24 SNS初載




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瓔悠

Author:瓔悠

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