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【空中のデッサン】
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臨時妃 ・ 原作寄り

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前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』からの再録です。
こちらのSSSはお出掛けの際に、車の中から不思議な雲の形を見つけました。
そしてふっとお話が降りてきて書いたものです。




日差しが心地よい午後の一時の事。
いつもの様に夕鈴と二人で、四阿でのお茶を愉しんでいた。

今日のお茶菓子は、西の国から献上品として納められた焼き菓子。
サクッとして程良い甘さで、スッキリとしているこの花茶にとてもよく合う。
夕鈴の顔はお菓子の美味しさに綻んでいた。

「夕鈴ってホントに美味しそうに食べるよね。
そこがとても可愛いんだけど・・・・思わずそのほっぺを食べてしまいたくなるよ」

僕の言葉で、恥じらって俯いた頬は熟れた桃のように染まっている。

ホントにこの反応がいいんだよね、純情そのもので。
しばらくはこの兎さんは固まったまま、動けないだろうね。

僕はそっと立ち上がり四阿を出て、空を見上げてみる。

今日はとてもいい天気。
雲ひとつ無いとはいかないものの、大空というキャンバスに青の絵の具で染めた様に青空が広がっている。
そして所々にぽっかり浮かぶ綿菓子みたいな白い雲。
風に乗ってゆっくりと移動している。

そして空のキャンバスに、白兎が跳ねている様子が描かれていた。

「夕鈴~~~~~こっちにおいでよ。
空に浮かんでいる雲をごらんよ」

黎翔の呼び声に空の兎の様に夕鈴は跳ねるように四阿から出てきて、黎翔の隣で空を仰ぎ見た。

「雲ですか?」
「うん、可愛い雲だよね!思わず食べてしまいたくなるよね」
「そうですか~~じゃあ是非食べてみて下さい」
「いいの?」
「はい、明日の午後にでも」

夕鈴・・・ついに僕の手に落ちるのか?
これは明日が楽しみだな。

明日は忙しくなるわ~~~。

二人の思惑は食い違いを見せ。
でも互いの想いは分からず。


********

そして、
次の日の午後。


ご機嫌な黎翔は、寵妃の待つ後宮へと急ぐ。

昼餉の前にシッカリと政務はこなしたし、
これで夕刻までは夕鈴とまったりと過ごせるな。

意気揚々と訪れてみるものの、肝心な寵妃の姿は見えない。
どうやら昨日の四阿に行っているらしい。

急ぎ足で様子を見に行ってみると、夕鈴は忙しそうにお茶の支度をしていた。
クルクル忙しなく用意をしている姿にほぉ~と見惚れていると、
夕鈴が僕の姿に気がつき四阿の長椅子へと誘う。

「陛下・・・・昨日お約束いたしましたので、是非食して頂きたいと」

夕鈴は誇らしげに微笑み卓上を指し示す。
僕の瞳に飛び込んできたのは、卓上の上に掛けられた花柄の布巾。
その布巾を優雅な手つきでスルリと外すと、その布巾の下に並べられていたのは美味しそうな饅頭と蒸しまんの数々。

「夕鈴・・・これは?」
「はい、昨日陛下が丸くて柔らかそうな、そう饅頭のような雲をご覧になられて『食べたい』と仰ってましたよね。
それで、今日の午前は饅頭作りをしてましたの。
陛下と一緒にいただこうと思いまして」

「アハハハ~~~」

僕の笑い声は辺りに木霊した。
夕鈴は僕が笑っている意味なんて到底理解出来っこないから、キョトンと僕を凝視している。

余りにも、モノ解りがいいな・・・とは思ったんだよね。
夕鈴が見ていたのは僕が見ていた兎型の雲の隣の雲だったんだな。
確かまぁるいフワフワ雲だった様な・・・・やられたな鈍感兎に。
まぁいいか。
夕鈴の饅頭を食べる機会なんて、中々ないもんな。

「夕鈴、ご相伴にあずかってもいいかな」
「はい、キチンと手をお拭きになってからでしたら・・・」
「そうだね、ではいただきます」

僕は昨日と同じ青空の下で、夕鈴お手製の饅頭を頬張りながら空を見上げてみた。
だが昨日見えていた白い跳ね兎は何処にも無かった。

でもこうして過ごせる午後は、貴重で何物にも代えがたい。
穏やかな昼下がり。
幸せを感じるこの時が、一番いい。



終。


************

お出掛けで、ホントに跳ね兎型の雲を発見しました。
運転中でしたので、写メは取れずがっかりでしたが・・・・。
可愛い雲で、形が崩れるまでフロントガラス越しにみてました。




2012.09.25 SNS初載



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