【そう、それを人は夜這いと言う?】 【夢?】
2010年03月31日 (水) | 編集 |
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臨時妃 ・ 原作寄り

【注意事項】

前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』からの再録です。
これは当時、夜更けに書いたSSS。
あの頃は、よく夜更かししていたんです。






【そう、それを人は夜這いと言う?】



ファサッ。
御簾を上げた音がこんなに大きな音がするとは思わず、
周りを見回し、気配を探る。

誰も周りにはいない様だし。
『侵入者、発見!』と衛兵や女官がやって来る様子もないな。

黎翔は安心しつつも足音を一切立てずに、寝台でグッスリと眠る夕鈴の枕元に近づく。

寝台には、規則正しい寝息で眠る愛しい女性(ひと)。
その姿は何処かの国の献上品の中にあった書物の中に出てくる姫・・・そう『眠り姫』の様だ。
紅を引いている訳でないのに、赤く濡れた唇はさくらんぼの様にプルンとしている。

思わず手を差し出して、形のいい唇をなぞってみた。

「うう~ん」

夕鈴の声で慌てて手を引っ込めた。

起こしてしまうのは可哀そうだな。

触られた事で少し覚醒したようだったが・・・・。
このまま起きてしまうかに見えたが、微かな寝息が黎翔の耳に入って来る。

どうやらまた眠ったようだ。
立ちつくして、ただ可愛い寝顔を眺めているだけの自分自身に苦笑する。

こんなに憶病だったのか?私という男は・・・。
いや、そうではない!相手が夕鈴だからだ。
ただ大切に・・・真綿で包みこむ様に大切にしたいだけ。

夕鈴が望まぬ限りは、無理強いはしたくないから。
こうして珠には自分にも見せてはくれない表情を観る為にやって来るのだ。
これくらいは許してくれるだろうか?
自分には許されるのだろうか?

少し考え込んでしまった黎翔の目に入ってきたものは、
目の前に横たわる夕鈴の綻んだ表情。
夕鈴の桃色に染まった頬が緩んで、柔らかく口角が上がっている。

良い夢を見ているのか?
微笑んでいるらしい・・・。
こうして見ると、慈悲深い女神の様だ。

胸の奥があったかくなり、疲れた僕の心が活力を取り戻していくのが実感できる。
見ているだけでは溜まらず・・・・頬に軽く触れるだけの優しい口づけを落とした。

更に微笑みが増す夕鈴に

「おやすみ♡」

一言低く甘い声で囁き、部屋を後にする。

君だけは必ず護るから。
僕の傍でずっと笑っていて。
いつか、必ず君と共に祝福の鐘を奏でよう。

まだ言えぬ決意を再確認しつつ、
回廊外から臨める満天の星々に誓いを立てた。


終。



この続きのSSSが、次の【夢?】となります。




【夢?】

これは、夜明け後に書いた続きとなるSSSです。


 



軟らかい陽光が瞳に差し込み、身体の各器官が朝の訪れを感じて覚醒していく。

瞳は光りを。
耳は蝉の鳴き声を。
鼻は朝の風の匂いを。

掛け布を払いのけ、寝台から降りると素足のまま窓辺の傍へ近寄る。
床の冷たさを足裏に感じつつ、両手で窓を開け広げ胸一杯にヒンヤリとした空気を取り込む。
窓外では、朝方の雨で花たちがその花弁の中央に雫を讃え咲き誇る。
昨晩はなんかいい夢を見ていたような気がして、思わず頬が緩む自分自身がいた。

陛下が、私の顔を覗き込んで笑っていたような夢だったような・・・。
優しい瞳でジッと見詰めていて。
私は寝ているんだけど、ホントはそれが分かっているみたいな不思議な夢。

頬に何かが触れた感覚があって手で触れてみる。
何かがある訳じゃないのに、頬が緩んでくるのを止められない。

今日も一日微笑んでいられそう。
こんなに爽やかな朝なのだから・・・そして夢見が良かったのだから。

太陽が高く登って行き、暑さが徐々に増していく。

「お妃様・・・お目ざめですか?」

帳の外から聞こえる私の目覚めを確認する侍女さんの声。

「はい!起きてます!!」

元気に声を発して、寝台から降りる。
全身を目覚めさせる様に、大きく伸びをした。


さぁ、今日も一日が始まる。
・・・・お妃としての一日が。



終。



2012.07.20 SNS初載


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