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【極めて非日常的な出来事・3】
【設定】 

現パロ設定  ・ 恋人未満

【注意事項】

こちらの作品は【アリスの口づけ】とは、
全く違う設定の現パロとなっております。

二人が出会い、そして繋がり結びゆく展開を
お楽しみいただけましたら幸いです。









空が白んできた。
長い夜が明ける。
一睡も出来ないまま、朝が来てしまった。

「はぁぁ~~もう朝かぁ。全く気が重い・・・・」

夕鈴は布団から出て机の上に置いてある名刺を手に取り、
それに書かれてある文字を凝視する。

「・・・・珀 黎翔さんねぇ。行くのは怖いけど、悪いのは私だしね」

両手を天井の突き上げて、大きく伸びをする。
そう、縮込んだ自分を奮い立たせるために。


********


事の起こりは、先週の日曜日に出かけたショッピングモールでの出来事。

ある人のPCを派手に壊してしまい、即金で弁償出来ない私は相手の言うがまま。
どうにも怪しげなバイトを請け負う羽目に。

別れ際、渡された1枚の名刺。
そこにはその相手の名前と、ある住所が書かれてあった。

『白陽ワールドビジネス・コーポレーション 
代表 珀 黎翔』と。

「あの・・・・・私はどうすれば・・・いいんでしょうか」
「そうだね・・・準備なんかがあるから、
来週の土曜日にここに来てほしい」
「ここって、この名刺に書かれた住所にですか??」
「そうだよ」
「・・・・・はい、わかりまし「あっ、逃げようなんてことは思わない方がいいよ。
何処に逃げても、ウチの情報網を駆使して探し出すから」」

目の前の鋭い深紅の瞳に気圧される。

「に、逃げたりしませんよ!
悪いのは私なんだからっっ!!」
「では、次の土曜日にね」

それだけ告げると、さっさと卓上のものを小脇に抱えていなくなってしまった。
私はその場に立ち尽くして、茫然としていた・・・・明玉に肩を叩かれるまで。

「何なのよ~~~~~~~」


*********


それからの1週間。
ろくに勉強も手につかず、悶々として過ごしていた。
テスト期間でなくて助かった・・・ってホントに思ったほどで。
明日は、いよいよ・・・という晩になって、
急に心臓がバクバクしてきて眠れなくなってしまっていた。

そうして・・・冒頭へと。

「さてと、行くことにしましょうか!
何を言われてもさせられても、我慢よ!我慢っっ!!」

しっかりと自分に言い聞かせて、家を出る。
そして右手には、もらった名刺を握り締めて。

書かれてある住所は、街のど真ん中にある高級オフィスビル街の中。
いわゆる一等地にそびえたつ、高層ビルディングの最上階。

そこまではバスと徒歩。
ドンドン近くなるにつれて、胸の内に逃げたい気持ちが湧いてくる。
でも別れ際の言葉が耳の奥で繰り返され、
寸でのところで逃げたい自分を押し留めていた。


そうするうちに、ビルの前。
一つ大きく深呼吸してから、足を踏み入れた。

入口には、綺麗なお姉さんがいる受付が。

「あの・・・・社長さんにお目に掛かりたいのですが」
「どのようなご用件で?
お約束はお有りなのでしょうか??」

受付のお姉さんが訝しんだ視線を私に向けてくる。

そりゃ、そうよね・・・こんな高校生が社長に用があるだなんて、
思えるはずはないもの。

「実は、今日の2時半にお約束をしていて・・・・」
「では、お名前は?」
「はいっっ!!!汀 夕鈴と申します」
「わかりました、少々お待ちいただけますでしょうか?
秘書室に確認を入れますので」
「宜しくお願いします。

待っている間、キョロキョロと回りを見渡す。
大きな窓があって、光が差し込み床がキラキラしていた。
掃除も行き届いているようだ。

バイトがこのビルの清掃とかだったらいいのに。
私、掃除なら自信があるのよね~~~
大体、バイトが婚約者の振りだなんて、あり得るはずがない!
あれはきっと私を揶揄ったに過ぎないのよ。
だから、バイトも掃除とか・・・そんなところだわ。

「あの、汀 夕鈴さん。秘書室で確認が取れましたので、どうぞ」
「有難うございます」
「では、そこの右端のエレバーターを使って下さい。そちらは直通ですから」
「はい」

直通?
どれだけ金持ちなのよ。
社長が使うだけの為のエレバーター??
全くもって、勿体無い!!!


夕鈴は受付のお姉さんに笑顔で一礼すると、
すぐさま指定されたエレバーターに乗り込んだ。
そして1つだけある行先のボタンを押した。
すぐに扉は閉まり動き出し、目的の階まで2分もかからなかった。

扉が開かれると・・・そこには見知らぬ男性が一人立っていた。

「ようこそ、汀 夕鈴さん」
「はっ、はい!こんにちは、汀 夕鈴です」
「こちらです、社長も待っていらっしゃいますので」

眼鏡を掛けスラリとした長身の男性は、さっさと歩いていく。
私は遅れまいと早足でついて行くと、廊下の一番奥に『社長室』と書かれたプレートのドアの前で、
その男性はピタリと止まった。

「ここです、どうぞ!」
「はい・・・・・・」

私はドアノブに手を掛けて、ゴクリと息を呑む。
扉を開けたその先には、先日の男性がビシッとしたスーツ姿で佇んでいた。

「1週間ぶりだね。
「その節は、大変ご迷惑をおかけしました」

私はまずは深々と頭を下げて、謝意を表す。
そのまま頭を上げずにいると、頭上に低い声が落ちてきた。

「そうだね・・・実は、あのPCは最新式で、結構値が張るんだよ」

ヒェ~~~。
でもそうですよね。
こんな立派な会社の社長さんが使う位だから。
ど、どどど、どうしよう。

「ス、スス、ススス、スミマセンっっっ!」

余りの恐怖で、声が上ずる。
しかし、私の謝罪なんて気にしない風で、社長さんの言葉は続く。

「まぁ・・・ね、それを現金で弁償しろ!なんて事は言わないけど。
その身体で返して欲しいんだ」
「ハイっ、体力にはそこそこ自信はあります!
掃除は特に得意なんです」
「掃除ぃ???あははははは~君、面白い子だね」
「???」

夕鈴は、薄茶の瞳を大きく見開く。

「・・・・掃除では、返せませんか??」
「そうだね、返せないことはないけど。かなりの期間が掛かってしまうよ。
それよりも手っ取り早い方法があるから。
そっちのほうがいいよ・・・というより、君のバイトはもう決まっているし」
「は、はい?」
「先日言っただろ、『婚約者になって』とね」
「いや、あれは・・・揶揄っただけでしょ?」
「いいや、違うよ」
「えぇぇぇぇ~~~~~~~~~~」
「何ですか?その声は!!!これはバイトの前に教育が必要ですね」

私の悲鳴に似た声に反応して、そこに控えていた眼鏡の男性が会話に割り込んできた。
そういえば、この人誰なんだろう??

「あっ、紹介して無かったね。これは李順・・・僕の秘書だよ」
「は、はじめまして・・・汀 夕鈴です」

夕鈴は偉い人だということが分かった途端、深々と頭を下げた。
そんな姿を見ると、李順は『宜しい』というように、ウンウンと頷いてみせた。

「さて・・・・汀 夕鈴さんでしたね。
地方公務員である父親と中学生の弟との3人家族で章安地区の借家暮らし。
公立高校に通う17歳で、学校と家とバイト先との往復が毎日の生活。
そして、母親がいないために家事一切を学業と両立している・・・・そんなところでしょうか」
「・・・・私の事、よくご存じなのですね」
「勿論ですよ、調べさせていただきましたからね。
社長の偽の婚約者だとしても、素性くらいは」
「・・・・・・・・・・・私、やっぱり婚約者の振りをするのがバイトなんでしょうか??」
「そうだよ、よろしくね」

そう答えた社長さんのニッコリ笑顔。
この前見せたあの妖艶で策士の笑顔とは大違い。
あの時は牙を向けた狼のような感じだったけど。
今のは、育ちのイイ小犬のような笑顔である。
この笑顔に、一体誰が逆らえよう・・・・・・。

「・・・・・不束者ですが、宜しくお願いします。
兎に角頑張って、壊したPC代はお返し致します」
「そう?それは言い心掛けだね。よろしくね、夕鈴~~」

私はただ、そう言うしかなかった。
こうして私の『極めて非日常』が始まりを告げた。




続。



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