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【設定】

臨時妃 ・ 原作寄り


【注意事項】

こちらの作品は、前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』にて公開していた作品です。
今回こちらへ移行するに伴い少しだけ手直ししておりますが、
書いた当時の陛下と夕鈴の関係が浅いものでありましたので、
当時の雰囲気を残すべく糖度はあまりありません。
そのことを踏まえた上でお読みいただけます様、宜しくお願いいたします。   













浩大に連れて来られたのは、執務室でも李順の自室でもなかった。
しかし執務室と同じ並びの回廊に位置する執務机がキチンと並んである会議室の様な部屋だった。

「李順さん、頼まれたお届けモノだよ」

浩大は相変わらずの軽いノリで、夕鈴を李順に差し出した。
夕鈴はポカンと部屋の中を眺め見て、自分の置かれた状況を把握しようとする。

「夕鈴殿、待っていましたよ。浩大、御苦労様でしたね。
あっ、ついでに頼まれてくれませんか?陛下に執務室に至急お戻りになるようにと」
「え~~~イヤだよっっ!!あんな状態の陛下にそんな事言ったら、やつあたりされるに決まってんじゃん。
そんなのは、オレはゴメンだね!それにさ、もうそろそろ不機嫌モードに切り替わっていると思うし」

命令拒否とも取れる事をサラリと告げると、ヒラリと窓枠から身軽に傍の木に飛び移る。
そのまま器用に枝伝いに隣の木にそしてまた隣に木に・・・気が付くと影も形も見えなくなっていた。

その様子を忌々しく眺めていた李順だが、もう居なくなってしまったものは仕方ないと身体を反転させる。
今度は、夕鈴の目の前に姿勢正しくキチンと立った。


「さてと、夕鈴殿!特別手当の件ですが・・・その前に聞くところによると、貴女、迷子になったらしいですね。
私は迷子になってまで、陛下から逃げて下さいと言いましたか?
全くあなたって人はこんなに騒ぎを大きくしてしまっては、収拾に手間取ってしまうではありませんか」

グチグチブチブチ・・・・とお小言を長々と続ける李順をシッカリと見据え、夕鈴は神妙な面持ちで聞く。
というのも、先程浩大から聞かされた『減給』の二文字が夕鈴の頭の中を縦横無尽に駆け回っていたからである。

「夕鈴殿、聞いていますか?」
「あっ、ハイ。ちゃんと聞いています」

李順は一通り言い終えると、スッキリとした表情を夕鈴に向ける。
そして、そのまま話し続けた。

「先程の特別手当の話の続きですが、貴女が迷子になった為に当初予定していた時間の半分しか調査は出来ませんでした。
陛下が迷子探索に集中してしまったので、行動解析は不十分でデータとしてはイマイチなんですよ。
ですので、今回は途中までとして半分にさせていただきますよ」

李順の厳しい采配に、夕鈴は唖然としてうなだれる。

まさか、こんなことになるなんて・・・・。
確かに迷子になった私に原因があることくらい理解できるけど。
それでも、あんまりよ!!

「えぇ~~~そんなぁ~~~~」
「黙らっしゃい!あなたが迷子になるからでしょう・・・これを自業自得というんですよ」

夕鈴が頼まれた特別任務は、陛下から見つからないように逃げること。
それによっていつも夕鈴を探しに行ってしまい何処へ行くか解らない陛下の行動パターンを詳細に調べ、今後の陛下連れ戻しに大いに役立たせようという訳で。
これも全ては政務を滞らせない為であり、側近たる李順は大いに躍起になっていた。

李順は、守銭奴の様な眼差しで夕鈴を見ていた。
その眼鏡の奥の光る瞳に、夕鈴は身が竦んだ。

如何しよう。
手当が半分じゃ教科書代にするには少し足りないわよ。
ゴメンね、青慎・・・・・姉さん頑張ったんだけど、全部新しいモノを揃えてあげたかったのにダメみたい。
もう陛下には口付けされるし、特別手当は半分にされるし・・・・もう何なのよ!!これじゃ、私が損ばかりじゃないの~~~。

哀しさとやるせなさと怒りの感情が入り乱れ、いつしか薄茶の瞳からは一滴の光る涙が頬を伝っていた。
しかしそのことに夕鈴は気が付いていなかった。

「夕鈴殿、何故、泣いているんです?」
「えっ、泣いて??」

夕鈴は李順に指摘され、頬を掌で触ってみて初めて自分が泣いていたことを認識した。


「うわぁ~~李順さんがお妃ちゃんを泣かしてるぅ~~!!
ヤバいよ~オレ、知らないよ~~。
陛下なんだけど、お妃ちゃんの部屋の前から移動したみたいだから何時こっちにやって来るか分かんないんだけど」

さっき出て行った窓から今度は顔をヒョイと覗かせて、浩大が呑気に李順に恐ろしい事をサラリと言う。
その第三者の声に驚いて、夕鈴の瞳から零れていた雫も一瞬にして引っ込んでしまう。

「泣かしたりしていませんよ、人聞きの悪い。
それより、また陛下が夕鈴殿を探して歩き回っていると?
これは正に好都合っ!」
「多分、そうだと思うよ~~。
それにしても、あの人の耳聡いところは流石というか凄いというか・・・・。
お妃ちゃんが部屋から居なくなったのを察して直ぐに行動しているんだから。
全く何かお妃ちゃんセンサーでも持ってんのかよ!!
でもあの人だったら有り得るかもね~~おもしれ~~」

ケラケラ笑ってこの事態を愉しんでいる風の浩大は、
更に面白い事態にしたいと心の内で願い更に李順をけしかける。

「李順さん、お妃ちゃん目が真っ赤だよね~。
今、陛下に踏みこまれてマズイのはここに二人っきりでいたアンタだよ~。
お妃ちゃんを見た陛下はどうなるか???オレ、考えたくもねぇ~~~」
「そうですね・・・・私も陛下の怒気の対象にはなりたくはありませんね」

なんで、今陛下が来たら困るの??
そして私が泣いたことで、李順さんがどうして陛下から怒られるのかしら??

男性二人の意味不明な会話に付いていけない夕鈴は、しきりに首をひねって考えてみるもののよく理解出来なかった。
電光石火のごとく素早く結論を出した李順は、ニッコリと企み顔を夕鈴に見せ提案する。

「夕鈴殿・・・陛下がまた貴女を探して散策をしていらっしゃる様です。
先程の特別手当が半分になったと嘆いておられた様ですが、ここでまた陛下から見事に逃げきってもう半分を手にしませんか?」

ホントに悪徳商人の様な面構えでニヤリと微笑む。
夕鈴の頭の中はもう半分の特別手当を手に持っている自分自身の姿が映し出されており、
二つ返事で李順の申し出を引き受けた。

「はい!私、頑張りますっっ!!」
「では、夕鈴殿・・・今度は迷子にならないようにして下さいよ。
あと浩大、先程の続きをお願いしますよ!
さぁ、善は急げと言いますし、さっさと行って下さい」

夕鈴は『特別手当!!特別手当!!』と呟きながら軽やかな足取りで回廊を横切り、庭園へと身を躍らせていた。
部屋に残った李順と浩大は二人して、夕鈴の余りの行動の速さと立ち直りの速さに呆気に取られ苦笑いを浮かべていた。

「流石は庶民ですね・・・・ホントに逞しくて頼もしい限りですよ。
では私は仕事に戻りますので、後は浩大!報告お願いしますね」
「へいへい、まずは問題の陛下を探さないとな」

浩大はそのまま窓から姿を消し、後は風の音のみとなった。

相変わらず、早いことですね浩大は。
それにしても、ここに陛下に踏み込まれなくて良かったですよ。
寿命が5年は縮みました・・・・・。

溜息を吐き出しながら、書簡の山制覇に取り掛かった李順であった。



続。











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瓔悠

Author:瓔悠

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