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【兎と僕の攻防戦・6】 

【設定】

臨時妃 ・ 原作寄り


【注意事項】

こちらの作品は、前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』にて公開していた作品です。
今回こちらへ移行するに伴い少しだけ手直ししておりますが、
書いた当時の陛下と夕鈴の関係が浅いものでありましたので、
当時の雰囲気を残すべく糖度はあまりありません。
そのことを踏まえた上でお読みいただけます様、宜しくお願いいたします。   









「なんかもう歩き疲れた~~歩いても歩いても同じ回廊が続いていて更に分かんなくなってきたし、
ここらで休憩しようかなぁ~。
李順さんに頼まれたお仕事も多分上手くいっているだろうし、
何せ記録者は浩大だから、陛下を見失うなんてことはしないだろうし。」

回廊の隅にへたり込んだ夕鈴は、この先どうしようかと思案する。
しかも空腹も覚えてきて、何にも持って来ていないことを後悔していた。

だってこんな場所で迷子になるなんてこと、思いも寄らないし。

夕鈴は疲れ果て壁に凭れ掛かったのだが、運悪くそこが戸口であったこととその戸口が少し開いていたことが原因で、そのまま身体ごとそっくり返ってしまった。
そして夕鈴は埃っぽい床に後頭部をしこたま打ってしまい、そのまま気を失った。


それからどれくらい経ったのか・・・・。
夕鈴は身動きも出来ず、意識の奥で漂っていた。


*****

花の咲き誇る草原で、自分一人が座り・・・いや、隣には穏やかに笑う陛下が。
私は座った傍に咲いている白い花を摘み取り、一輪づつ編んで王冠を作っている。
その顔は大人びており、今よりも少し歳を重ねた自分のようで。
だからこそ分かる・・・これが現実でないことが。
もっとよく見ようと目を凝らしてみると、辺りが霧に包まれ・・・・霧散した。

これは夢だわ。
だったら、誰の?
私?
それを知りたくて、暗闇の中で私は耳を澄まして辺りの様子を感じてみる。

かすかに聞こえてくるのは、元気良くはしゃいでいる子どもの声。
それは少し離れた場所から。
声は・・・男の子一人に、後は女の子二人。

すると辺りがまた明るくなって、私の姿が浮かび上がる。
私が見詰める先は、三人の子供たち。
あのはしゃいでいた声の持ち主たち。

隣に腰かけた陛下は、仲良く走り回っている子供たちを愛おしい眼差しを向ける。
その口元に笑みを乗せて『夕鈴、こんなのを幸せっていうんだよね』と陛下はしみじみと呟いている。
私はニッコリと微笑んで、『はい、そうですね』と返す。
そんな私の言葉に呼応するように陛下は高貴な微笑みを私に向けて、 私の手の上に自らの手を乗せた。

これは幸せな家族の肖像。
訪れるはずのない、私の想いの結晶。
有り得ない未来。


*****



「夕鈴・・・夕鈴・・・・ゆうりん・・・・・・・・」

何処かで、誰かが私を呼んでいる?

「ゆうりん・・・・・夕鈴・・・」 

何だか苦しそうな声。
私、この声を聞いたことが・・・覚えが・・・・。

そしてまた夢の中へ。


*****

明るい日差しの中で微睡む陛下は、やはり今よりも大人の男性だった。
女の子が駆け寄って来て、出来上がったばかりの王冠を私から受取り頭に乗せると一回りして披露する。
『可愛いよ』と陛下が穏やかな声で褒めている。
すると女の子は大喜びで、他の二人に見せる為に駈け出した。

不意に陛下が私を凝視したかと思うと徐々に顔が近付いてきて、唇に暖かい感触が・・・・・・・・・。


*****


「う~~~ん」

なんか暖かい感触と息苦しさに草原の風景は霞みの中に消えて行き、
段々と意識が覚醒してきた。
パチパチと瞬きして目を開けると、真っ先に飛び込んできたのは陛下の紅い双眸だった。

そして、未だ唇にある温かい感触は陛下の唇である。

「きゃぁぁぁぁ~~~~~~」

思わず口から出る悲鳴。
夕鈴の耳をつんざく悲鳴に、黎翔は驚いて飛びのいた。

身軽になった身体を起こすと、後頭部に鋭い痛みを感じて一瞬顔が歪む。
ジワジワ触れてみると、大きなタンコブが出来ている。
どうやら私はひっくり返っていたたしく、床で打ちつけて出来てしまったものらしい。
そんな事を頭の中で整理しながら周りを見渡してみると、
心配そうに揺れる瞳で陛下が私の顔を覗き込んでいる。

「夕鈴・・・大丈夫?」

悲鳴の後、黙りこくっている夕鈴に恐る恐ると黎翔が尋ねる。

「はい、タンコブが出来ているみたいですが、大丈夫そうです」
「良かった~~」

あれ?普通に陛下と会話しているけど・・・・私、何か忘れている様な・・・・。

「あ~~~~思い出した!!!陛下・・・さっき・・・・私に・・・・」
「あっ、ゴメン!僕が何度も何度も読んでも目が覚めない様だから、
口付けでもしたら気が付いてくれるかなぁ~と。
確か、よその国の童話にもあった様にね」

片目を瞑ってニッコリ笑う黎翔に、夕鈴は苦々しい視線を向ける。

「く、くちづけですってぇぇぇぇぇ~~~~~」

夕鈴は驚きの声を上げると、即座に黎翔から離れてワナワナと震えていた。

私の初めての口づけは陛下なの????
しかも意識がない時にぃぃぃ。
私だって、私だって思い描いていた口づけのシチュエーションがあったのよ~~~。

何だかウキウキ顔の黎翔と対照的にどんより沈み返った表情の夕鈴。
二人の様子に背後から笑い声が聞こえてくる。

「へいか、お妃ちゃん、そろそろ戻ろうぜ」

ヒョコッと顔を出した浩大に、夕鈴は慌てて平静を装い部屋を後にしようとする。
その前に黎翔が立ち塞ぎ、そっと腕を差し出した。
その行動に、夕鈴は訳が分からず問うてみる。

「あの・・・・これは、何ですか?」
「いや、疲れているだろうから、抱きかかえてあげようかと」

黎翔は、しれっとすました顔で夕鈴に至極当然だと提案する。

「大丈夫です!私、自分で歩けますから」

夕鈴は申し出を速攻断わり、スタスタ歩き出した。
その様子にお腹を抱えて大笑いする浩大に、黎翔は剣を鞘から少し抜き無言で脅しをかける。
即座に殺気を察した浩大は、笑いを引っ込めて神妙な面持ちで音もたてずに歩く。

それを確認した黎翔は、性懲りもなく今度は夕鈴の手を繋ごうと画策し始めた。
ところが夕鈴はもう流されない!と断固とした覚悟で、その甘美な誘いには乗らなかった。

冗談じゃないわ!!
まだ口付けされたことを忘れてはいないんだから!!
陛下にとっては取るに足りないことかもしれないけど、
私にとってはすっごく重大な事なんだから・・・。

ご機嫌斜めの夕鈴をよそに、黎翔はニヤニヤと口元を緩ませている。

夕鈴の唇って、温かくて柔らかかったなぁ。
これって役得!役得!


そんな二人の想いは交差する事無く、遥か彼方へと離れていったのである。
そうこうしているうちに、やっとこさ後宮立ち入り禁止区域の迷路区域から無事に抜け出すことが出来たのだった。




続。






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この記事へのコメント

おはようございます。
早朝は暗いです。寒いし起きにくい季節になってきました。

そうです。女の子にとってファーストキスは大事なんです。
そんな夕鈴をよそに役得だなんて、陛下。女心がわかってませんね~。
浩大が笑ってしまうのは仕方ないでしょうねー。
いやー、朝から陛下の恋愛偏差値の低さ、そしてバカッぷりを見せられて楽しかったです。(笑)←怒られるかな?

こんばんは~コメント有り難うございます
返信お待たせしました!!


朝はホントに寒くなってきたよね~
布団が少しずつ恋しくなってきてますもんっっ!!!
それに夜が明けるのも遅くなってきたから、自然に起きられなくなってきたよ~
毎日、目覚ましにたたき起こされてます(苦笑)
でもまだ冬本番は今からですもんね~
こんな感じで大丈夫かが、心配だよ~


さてと。
ファーストキスって女の子にとっては大事なモノ。
思い入れがありますから~~
これは男性がちゃんとわかってあげないと・・・。
へーか!
聞いています???
夕鈴がすっごく傷ついてますわよ!
どう落とし前つけてくれるの???
とすごんでみましょうか・・・・。


ふふふ~
まだ続きますからねh~
お付き合い、よろしくですっっ!!


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瓔悠

Author:瓔悠

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