【兎と僕の攻防戦・4】
2015年10月20日 (火) | 編集 |
【設定】

臨時妃 ・ 原作寄り


【注意事項】

こちらの作品は、前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』にて公開していた作品です。
今回こちらへ移行するに伴い少しだけ手直ししておりますが、
書いた当時の陛下と夕鈴の関係が浅いものでありましたので、
当時の雰囲気を残すべく糖度はあまりありません。
そのことを踏まえた上でお読みいただけます様、宜しくお願いいたします。   












シーンと静まり返った後宮立ち入り禁止区域。
靴音だけがやけに大きく響き渡るような気がする。
いつもは『今日はどの部屋の掃除をしようか』くらいのことしか考えておらず、
周りの雰囲気など特に気に掛からない。
だからこうして静かだと、どうにも落ち着かない。

「そこに居るのは誰じゃ」

姿は見えないが、聞こえてくるのは自分より低い位置からなので直ぐに声の主はわかった。

「張老師!!」
「なんじゃ、掃除娘。お前さんかい」
「あの・・・陛下はこちらにいらっしゃいましたか?」
「ああ、先程来られたのじゃが・・・お前さんを探しておったようがの」
「そうですか・・・・良かった・・・」

小さく呟いてみたのだが、この達者な老人の耳にはシッカリと入ったようでニヤリと笑われ、からかう様に尋ねられる。

「お前さん、陛下と喧嘩でもしたのかえ?」
「ケンカですか???とんでもない!!私はただのバイト妃なので喧嘩なんてしませんよ」
「そうか。じゃお前さんは何をしにきたんじゃい?」
「そうですね・・・・探検かな?」
「探検?」
「ええ、時間潰しに普段掃除をしない場所でも散策してみようかと」
「暇なら、いつもの様に掃除でもすりゃいいじゃないかい」
「今日は、別の仕事中なんです」

よっぽど暇人なのか、老師は根ほり葉ほり訊いてくる。
しかしこれ以上この仕事について話す訳にはいかないので、曖昧に笑って誤魔化した。
そうすると老師も何かを悟ってくれたようで、もう訊いてこなくなった。

「まぁ、散策は良いがあまり入り組んだ所へはいかないことじゃな。迷子になる故」
「はい、では!!」

夕鈴は、お妃衣裳のまま奥へと入っていった。


************


今日は朝から李順がどうもオカシイ・・・・。
いつもなら朝っぱらから僕に『お早くこの書簡を・・・』と迫って来るのに今日は全くそれがない。
そして何よりも、今は夕鈴探しを推奨している点が何よりもアヤシイ。

何を李順は企んでいるのやら・・・・。
夕鈴を見つけた後の僕がどうなるのか、一番分かっているだろうに。
大方夕鈴を使ってロクでもない事をしているんだろうけど、
見つけた後は好きにさせてもらうことにするからな。

黎翔のニヤリと口元を緩め、輝く好奇心旺盛な瞳は、ある意味妖艶で惹きつけられる。
取り敢えず、捜索の場所は何処から始めようか・・・・と考えつつ黎翔はスタスタ歩く。
それはただ、早く寵妃を見つけてまったりと過ごそうとする気持ちの現れである。
先程の夕鈴とは大違いである。

黎翔は戦略を練るのに、腕を組んで考え込む。
一番可能性の低い場所から潰していくことが手っ取り早い。
では、まずはあの場所から・・・・。

それは後宮夕鈴の部屋。
いないだろうが一応は確認を・・・・・やはりいない。
しかし直ぐに戻って来ないとも限らないので、
一応侍女に戻り次第王付きの女官にでも伝えるように念を押してから退出する。

では次はもう一つのバイト先、後宮立ち入り禁止区域。
黎翔の足は次第に早足に・・・・だが、ここにもいない。
更に言うなら、管理人たる老師すらもいない。

あの老人は何処をほっつき歩いているのか?
そして夕鈴も何処にいるのか?
ここにいるかもと思って来たのだが・・・・。
まぁいいか、ここはまた後で来ても。
時間差で来るということも有り得るし。

それにしても先程から付き纏う気配が一つ。
一応本人は気配は消しているつもりらしいが、結構うっとおしい。
からかう様な薄笑いが、たまに風に乗って聞こえてくるのが更にいらつかせる。

「おい、浩大!何時まで付いて来るつもりだ」

うっとおしさが限界値に達し、黎翔は空を仰ぎ見ると言葉を投げ付ける。

「ほへ~気が付いていたんだ、陛下!さっすが~~~」
「気が付かない訳はないだろう、あれだけ気配を駄々漏れにしていればな」
「まぁ、陛下以外の人には気が付かれないよ。アンタは特別だからさ」
「それにしても・・・お前、夕鈴の警護は如何なっているんだ」
「あっ、ごめ~~ん、その件に関しては大丈夫。他の奴に頼んでいるからさ」

軽く言い放つと浩大はこれ以上は追求されたくはないと木々に気配を同化させ、
後は木々の葉が風に揺れるサワサワという音のみになった。

ああなった隠密は自分からは決して姿は現さない。
こうなったら早く夕鈴を見つけ出すしかない。

「さぁ、次は・・・いつもの四阿だな」

独り言を呟き自分を急き立てる様に、
二人のお気に入りの四阿に向かって歩き出した。


*********


その頃、夕鈴はいつもの掃除区域よりも更に奥へと歩を進めていた。

長く続く回廊は先が見えず、次第に意識がクラクラしてくる。
ここはかつて何十人もの女性が住まい、寵愛を競って愛憎まみえるドラマを繰り広げられていた場所。
だからなのか、どうも纏わりつく空気は重い感じがする。
夕鈴にとっては、全く想像できない世界だ。

天窓から差し込んでくる日の光りのお蔭で、行く手は暗くも無く充分散策には適している。
そして光りの加減で見えるあちらこちらの埃が夕鈴に掃除意欲をそそる。

ここは頑張って掃除バイトに精を出さないと中々キレイにならないわね。
それにしても広過ぎるわ・・・ここを全てキレイにするまでどれくらいかかるのかしらね~。

全くおかしな話である。
こんな膨大な部屋数と回廊を一人で掃除し切れる筈は無いし、
いつまで後宮に居座るつもりだ!と上司辺りにでも呆れられそうだ。

夕鈴は一人悶々と掃除の手順を考えつつ、ボー―と歩き思いつくままに歩く。
目の前に現れる角を何度か気持ちの赴くままに曲がり・・・・・気が付くと、此処が何処なのか?分からなくなっていた。

そう・・・・・夕鈴は、迷子になってしまっていた。

「え~~~~此処どこなの????」

大きな声で叫んでみるものの、自分の声だけが反響して返ってくるだけ。
誰もいないとなると、自分で出口を探すしかない。
夕鈴は更にあちこち歩き回る。

「また見覚えがあるところだわ。じゃあ、今度はさっきの所を今度は右に曲がってみよっうと」

迷子になってしまったというのに、何ともまぁ明るいものである。
取り敢えず自力で抜けだそうと、努力はしてみる。
しかしそれも一刻ほどまでで・・・出口どころか何だかドンドン奥に進んでしまい、
更に本格的な迷子になっていると気が付いてきた時には、さすがの夕鈴も少し焦り始めていた。

「実は私・・・完全に迷子になってる?どうしよう・・・どうやって入口に戻ればいいの??」

夕鈴はオロオロしてみるものの誰も答えてくれる筈も無く、
腕を組みながら短く溜息をつき途方にくれていた。




続。






関連記事
スポンサーサイト


コメント
この記事へのコメント
夕鈴を助けてくれるのは・・・誰?

どこにコメ書こうか迷いながら最新記事にしたんだ。
昨日は恥さらしなことをしてしまって・・・申し訳ございません!
よゆりん・・・読んだ?書き手さんのコメ欄使って書く勇気は半端なかったよ。
ごめんね~。

少しずつ良くなってるようで、安心だよ。
でも本当に無理は禁物です。

今日はお出かけしてて今帰宅したんだけど、夕飯が面倒。
冷蔵庫と相談して簡単におでんにすることにした!

明日から旦那様はそちらにお邪魔しますが、もし見つけたら後ろ回し蹴りでもお見舞いしてやってください(笑)
「どうして、ママを連れてこなかったんだぁーーーー!!」と。
きっと反省すると思うから←するかな?

では、おでん作ります!!
近ければ食べにおいで~と言えるのに。

2015/10/20(火) 16:43:11 | URL | ママ #-[ 編集]
昨日は\(//∇//)\、本日もお邪魔します☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
お話UPじゃないですか(≧∇≦)!嬉しいな‼︎
手首の調子が良くなってるんですね♪(´ε` )良かった‼︎

夕鈴、ほーんと李順さんの言う事良く聞きますねψ(`∇´)ψ弟の参考書代がかかっていますもの! 陛下も李順さんに乗せられているのがわかっていても夕鈴探しに躍起なんだから‼︎
夕鈴、この先どうなる〜Σ(゚д゚lll)?


あいも変わらずお仕事中ですが、ひと段落(#^.^#) 今日はお仕事中に寄られる方が多いようです。
うちの 晩ご飯には唐揚げさっぱり甘酢と野菜の炊き合わせを準備してきました。夜も長いし他にエクレア、白あんパン、葡萄‥ふう。沢山食べますよね!


2015/10/20(火) 19:17:15 | URL | #-[ 編集]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する