【兎と僕の攻防戦・7】
2015年11月19日 (木) | 編集 |
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臨時妃 ・ 原作寄り


【注意事項】

こちらの作品は、前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』にて公開していた作品です。
今回こちらへ移行するに伴い少しだけ手直ししておりますが、
書いた当時の陛下と夕鈴の関係が浅いものでありましたので、
当時の雰囲気を残すべく糖度はあまりありません。
そのことを踏まえた上でお読みいただけます様、宜しくお願いいたします。   










夕鈴が黎翔にキスされて怒りながらも救出されている頃。
所変わって王の執務室では。

残された李順はイライラしながら書簡の整理をしていた・・・というのも、
重要任務を任していたはずの小娘がどうも迷子になって陛下が血眼で探していると、後宮管理人たる張老師がワザワザ教えに来たのだ。

はぁ~~~何をやっているんですかね、夕鈴殿は。
迷子ですか?
迷子になってまで陛下から逃げる様に!とは言ってませんがね。

この後の事を考えると片頭痛が起こりそうになり、こめかみに指を押し当てる。
如何に優秀な李順でも、黎翔が『眠り姫』のワンシーンの様に口付けして気絶した姫を目覚めさせ、そのお姫様がオカンムリだなんて思いも寄らない事である。

頭を抱えながらも尚、忙しそうに政務をこなす李順の前に、見知った人物が音も無く佇んでいた。

「えっ!!ビックリしましたよ、宰相殿。お越しなら、一言くらい声を掛けて下さいよ」
「そうですね・・・・・・・李順殿。予言しましょう・・・陛下に置かれましては明日は、政務にならないと思われますよ・・・・・残念ながら・・・・・折角の骨折りもきっと無駄になってしまうでしょう・・・・・」

ジトッと暗い表情で淡々と話す宰相は不吉というか余り考えたくない未来を李順に告知すると、シズシズと足音一つ立てずに出て行った。

後に残った李順は呆気に取られてしばらくボ~~としていたのだが、政務は待ってくれないと慌てて再開する。
しかし余り身が入らずに、政務とは全く別の事が頭の中枢全てを占めていた。

気掛かりなのは、迷子の夕鈴殿が見つかった時ですね。
感極まった陛下がバイト小娘に何をするか・・・抱きつくことくらいはするのかもしれないですし。
そうすると夕鈴殿は烈火のごとく怒って、それを静めるのに陛下が政務そっちのけでとりなしを始めるという構図が浮かぶのは、私の思い過ごしではないのでしょうね。
まぁ、そうなるとは限らないのですが・・・・。
浩大辺りが夕鈴殿と見つけてくれれば問題はないのですが。

李順の予想は、悪い方に当たっており、でも実際は抱きついたどころか・・・・口付けしていた。
そしてやっぱり夕鈴は・・・・・・・怒っていた。

黎翔の前をスタスタスタスタ・・・早足で歩く夕鈴の背中は誰が見ても、
怒りに支配され話し掛けられない雰囲気を醸し出していた。
そんな様子にも関わらず、勇猛果敢に黎翔は夕鈴陥落に挑む。

「夕鈴、大丈夫?頭擦っていたみたいだけど、タンコブが出来てるの?」
「・・・・・・・・・・・・」
「そんなに急がなくても。ねぇ、夕鈴・・・一緒に行こうよ」
「・・・・・・・・・・」

黎翔の頑張りもむなしく夕鈴には届かず、暖簾に腕押し状態で。
相変わらず押し黙りスタスタ歩いて行く夕鈴を、何とか注意を向けようとあの手この手を駆使して努力している黎翔だが、どれも全く効果なくチラリと見向きもしない。

そして後宮の自室にそのまま入ってしまうと、侍女を直ぐに下がらせ中の戸口に棒を噛ます。
更に家具まで動かして戸口に置き、そのまま閉じこもってしまったのである。

ある東の国の神話にある『天の岩戸』状態なのである。
その前で為す術を持たない黎翔は、途方に暮れるだけでその場で佇む。
そして中の夕鈴は更に奥の寝室に入り大きな溜息を吐きながら寝台の上にバタンと倒れ込んで、先程の事を考え始めた。
顔を真っ赤に染めて。

陛下なんか、もう知らないっっ!!
あんなことしといて、軽~~く『ゴメン』と言ったきりで。
大体女の子の始めての口付けを奪っておいて、あれで済むなんて有り得ないっっ!

しかし夕鈴は知らない・・・もう黎翔は何度か寝ている夕鈴の唇に自らの唇を重ねており、今回が初めてではない事を。

寝台に横たわったまま唇にそっと手を触れる。
まだ微かに口付けの余韻が残っている様な錯覚に陥り、
羞恥に顔をそして全身を真っ赤に染め上げ身をよじって丸くなる。

初めての家族以外との口付け。
陛下がイヤって訳じゃない。
むしろ嬉しいと言えなくもない。
きっともう二度と起こる筈もないだろうから、ホントは悦ばしいことなのよね。
でも、なんだかシックリこない。
自分の心の整理が出来ないだけなのよ、恐らく多分。

夕鈴は、ボンヤリと思考を巡らす。
寝台の上ということと迷路から抜け出られた安堵感と疲労感から意識を徐々に手放していく。
次第に規則正しい寝息をたて始め、夢の世界の扉をこじ開けて駆け足で入って行ったのだった。

そして戸口の外では尻尾をダランと床に垂れさせ主人をひたすら待つがごとく、
大人しく中の様子を窺う可哀そうな小犬が佇んでいた。

入って直ぐにガタゴト音がしていたけど、今は静かだな。
あの音は恐らく家具を移動させていたんだろうけど。
しかしそこまでしなくても・・・・そんなにイヤだったのか?
意識が無かったから、人工呼吸をしていただけなのに。
まぁ息はしてたから必要なかったのかもしれないけど、立派な人助けなのに・・・・あそこまで怒る事は無いと思うが。
はぁ~ホントにどうやってこの中から出てきて貰おうか?

如何に君主として素晴らしい資質を持っており、見事にこの国を立て直しをしている黎翔といえども方法を考えあぐねていた。


***********


その頃浩大は夕鈴にこの堅い『天の岩戸』から如何にして出て来て貰うかを考えて、直ぐさま李順の所に駆け込んでいた。
ため息をつきながらも、原因の発端であることを自覚した李順は浩大にある方法を授けていた。
そしてそれを試してみる為に、夕鈴が立て籠る寝室の屋根裏へと浩大は密かに移動する。
屋根裏からこっそり覗いてみると、夕鈴は可愛い寝顔を天井の浩大に披露しながら胸を上下させスヤスヤ夢の中の住人の様である。
どうやら深い眠りに陥っているらしい。

これって結構マズイ?!
こんな緊張感のないお妃ちゃんの寝顔を拝んだと陛下に知られたら、オレ生きて明日の朝餉は食べられないだろうな~~。
さぁて、どうしよっかな~~まずは起こしてみるとしますか。
このまま目を覚ますまで待つのはマジでヤバいし。

試しに小声で夕鈴を呼んでみる。

「お妃ちゃん!起きてよっっ!
李順さんが呼んでいるよ~~~」

ピクリとするものの、まだ起きる気配が感じられない。
それでもめげずにそのまま続けて呼び掛けてみる。

「お~~い、お妃ちゃんってば」
「起きてよ~~~!!ネェ~~~。
「李順さんが呼んでいるんだってば!!!
起きないと減給されるかもよ~~~減給っっ」

『減給』という言葉に敏感に反応し、夕鈴は即座に目を覚ます。
意識が完全に覚醒して天井を仰ぎ見ると、二カッと口角を目いっぱいあげて笑う浩大がこちらを覗きこんでいた。

「浩大・・・・な、なんでそんなところから、出没するのよ」
「だって、お妃ちゃん・・・戸口や窓を堅く閉めてるじゃんか!!」
「・・・・・・あっ、そうだったわね。ところで如何したの??」
「李順さんが呼んでいるんだよ、今回の特別手当の事で来て欲しいってさ」
「そ、そう・・・でも戸口は陛下がいらっしゃるのでは??」
「そうだね~まだしつこくいるみたいだね」

陛下の姿を思い出しながら、浩大はクスッと笑う。

「じゃあ、オレが窓から出してやるからさ。この寝室の窓を開けてよ」
「分かったわ!!」

夕鈴は窓に近づき即座に開けると、浩大に抱きかかえられるように窓から脱出した。
戸口の外の黎翔には気がつかれないように、浩大は気配を消して。


そうして、堅く閉ざされた『天の岩戸』はこうして呆気なくあけられたのであった。



続。



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コメント
この記事へのコメント
周宰相きっと大当たりしますね!
天照大御神 夕鈴様〜
《お初》だと思ってるのに ねぇ♡
ファーストキッスじゃないんだよー!
陛下、簡単にすまさないで!
口づけをああやって思ってるのが、やっぱり可愛い(#^.^#)

でーもー
寝顔見たのも、
天の岩戸を開けたのも、
抱きかかえて窓から出たのも、
隠密 大ちゃんさ☆*:.。. .。.:*☆

優秀な大ちゃんはこの後妬気にヤられずに生きてられるのか ( ̄◇ ̄;)‼︎
そして李順さんの命も‥
2015/11/19(木) 12:03:18 | URL | タイフーンです(≧∇≦) #-[ 編集]
おはようございます。
今日もきっと私の行動がばれてるであろう時間帯にコメしますよ(^_-)

心が通じあってないからしっくり来ないのもあるんじゃないかな~と、おばちゃんは思いますよ(笑)
実は簡単に開くことが出来る天の岩戸・・・。
これ、浩大ヤバくね?


成人式自体の用意は終わりを告げましたが、
別日に成人お披露目会兼お誕生日会の準備を今からしないといけません・・。
ブライダルに勤めてるので会場で・・と思っていたんですが娘に止められてしまいました(笑)
「流石にそれはやめて・・・。」と。
なので旦那様ご用達の割烹料亭に決まりました。
来年の娘の誕生日は特別なものなので特に気合がはいります!
20歳なのに・・5歳という・・。
よゆりんは解りそう(*^_^*)
今のところの最大の悩みはケーキをどうするか?です。







2015/11/20(金) 07:17:10 | URL | ママ #-[ 編集]
タイフーン様

おはようございます~コメント有り難うございます
返信お待たせしました!!

楽しんでいただけているようで良かった~~~

ホント、陛下、ダメだよ。
夕鈴が怒るのも当たり前!と誰かが教えてやらねば・・・。
えっ?誰が??
それはやっぱり側近氏?!

そうなんです!!!浩大が美味しいところ全部取り!!
大丈夫なのか?
狼さんの怒気に触れないといいけどね~~~

続き、もうちょっと待っててくださいねぇ~~~~
2015/11/22(日) 07:36:00 | URL | 瓔悠 #-[ 編集]
ママ様

おはようございます~コメント有り難うございます
返信お待たせしました!!

ふふふ~~
私はすべてを知っている!!!
ああ、この時間帯はこうなのね~フムフム。
と思いつつコメントを読む私。


ホント、この頃の二人ってマジでかみ合ってない。
自覚ゼロだもんね~
ホント、読み返してて懐かしく感じる~~

浩大、結構ヤバいよね~~
狼さん、嫉妬深いから・・・・。
恋心は自覚してないくせにさっっ!
マジで逃げないと~~


そうか~~成人式となると20歳になるんだもんね~
お酒解禁!旦那様と娘ちゃん一緒に飲んだりするのかな。
用意は大変だけど、気合入るよね。
良い日になることをお祈りしてます。
ウチはまだまだ・・・先は長い。
でも20歳に誕生日に二人が生まれた年のボジョレを取っているので
それをあけたいなぁ~とは思ってます。
ただ、ワイン貯蔵庫なんてものはないから、ちゃんと飲めるのか?
それが心配なのよね~~~


2015/11/22(日) 07:41:55 | URL | 瓔悠 #-[ 編集]
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