【兎と僕の攻防戦・3】
2015年10月06日 (火) | 編集 |
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臨時妃 ・ 原作寄り


【注意事項】

こちらの作品は、前々ブログ『遥か悠遠の朱空へ』にて公開していた作品です。
今回こちらへ移行するに伴い少しだけ手直ししておりますが、
書いた当時の陛下と夕鈴の関係が浅いものでありましたので、
当時の雰囲気を残すべく糖度はあまりありません。
そのことを踏まえた上でお読みいただけます様、宜しくお願いいたします。   















月の輝く光の下、黎翔としばし穏やかな刻を過ごした後、
夕鈴は夢心地のまま就寝する。
こんな刻がいつまでも続けばいいのに・・・・・。
そんな想いを抱えながら、問題の朝がやって来る。


***********



夕鈴は昨日二人で見た月見の余韻が醒めないらしく、
起きているというのにまだ寝台の上でまどろんでいた。

「はぁ~もう起きないと侍女さんに迷惑が掛かっちゃうわね」

独り言を言ったつもりだったのに、何処からとなく返事がかえってくる。

「そうだよ、お妃ちゃんっっ!李順さんが待ってるよ」
「浩大ね・・・おはよう。『李順さんが待ってる??』何故?」
「あらら~まだ寝ぼけてんの?昨日お仕事を頼まれたんだろ」
「お仕事??・・・・・・あぁぁぁ~思い出した。いけない、遅れるとまたお小言の嵐が~~」

飛び起きた夕鈴は、それこそ淑やかなお妃様を完全に忘れてドタバタしながら身支度を始める。
その為、何故このお仕事のことを浩大が知っているのかを聞きそびれてしまっていた。
そして聞こうと思った時には、すばやい隠密は姿どころか気配も完全に消え失せていた。

身支度を整え朝食を済ませると、部屋を後にして李順の自室に急ぎ足で向う。

部屋の主は『来るのが遅い』と入って来るなり、夕鈴に一言目の小言の飛礫(つぶて)を投げる。
夕鈴は自分に非があるため黙って聞くしかなく、しばしお小言の嵐が通り過ぎるのを待っていた。
一通り言い終わり満足した李順は、夕鈴にさらっと今日の事について話し出した。

「夕鈴殿・・・昨日も申しましたが、これはこれからの政務の進捗に関わる重要な任務です。
ですから、シッカリと勤めて下さいね」

『シッカリ』というところを、李順は殊更に強調する。
その様子に夕鈴の顔もキリッと引き締まる。

「分かりました、任せて下さい!!」
「では昨日と変わったことと言えば、浩大が記録者として協力することになりましたから」
「浩大が??」
「ですから、漏れはないと思いますよ。
夕鈴殿は陛下から逃げるだけで結構です!兎に角、体力の続く限り逃げて下さい」
「はい、体力だけには自信が有りますので大丈夫です」

夕鈴は、自信満々にニッコリと微笑を見せる。
そんな様子に李順は一抹の不安を感じたのか、更に注意を続ける。

「夕鈴殿・・・・言い忘れましたが、くれぐれも貴方はお妃だと言う事を忘れずに優雅に楚々として逃げるように!!
いいですねっっ、あくまで貴方はお妃なのですよ」

心配げな李順は何度も何度も念を押してから、夕鈴を送り出した。


*********


やっと李順から解放された夕鈴は、何処に逃げようかとボンヤリと空を見上げる。

「さてと・・・・何処に行けばいいかしら?
でも、陛下が考えつかないような所に行かないといけないってことよね」

立ち止って考えていると回廊の向こうから、水月と方淵が珍しく二人並んで歩いて来た。

「これはお妃様、ご機嫌は如何ですか?
最近は暑さも和らいで参りましたから、お過ごしやすくなられましたね」

水月は、ホンワリとした柔和な表情で優しく語りかけてくる。
それに対して、方淵は嫌そうな表情で眉間に深い皺を寄せながら声を掛けてきた。

「貴方はまたこのような場所をウロウロなさって、いい加減後宮で静かに過ごすべきなのでは」

方淵は、これくらいでは言い足りないとでも言うような苦々しい視線を夕鈴へと向ける。
それを受けた夕鈴は、殊更にニッコリとお妃スマイルをご披露し優雅に答えた。

「おはようございます、お二人揃ってとは大変珍しいですわね。
これからご政務なのですね、ご苦労様です。
私はこれから後宮に戻りますので、今日はお会いする事はないと存じますわ」

方淵に向けて殊更『今日はもう政務室には行かない』事を強調して印象付ける。
これで方淵の嫌味に対する応酬・・・更には黎翔に大して夕鈴は政務室には来ないと、
進言して貰える手筈は整ったことになる。

「では、ごきげんよう」

夕鈴は最後まで頬をピクピク引きつらせながらもお妃スマイルは崩さず二人を見送ると、
回廊から外れ外苑へと続く道をトボトボ歩いて行った。


*************


目的地は、いつもは寄る事もない四阿。
草木が生い茂り日差しを遮ってくれており、しばらくここでゆっくりしていようと石の長椅子に腰を下す。
夕鈴は、風になびいている名前もハッキリと分からない青々とした草をジッと見詰めていた。

「こんなに気持ちいい所なら、お茶道具でも持って来てゆっくりしても良かったかしらね~」

夕鈴は独りごちて『うふふ・・・』と笑ってみるが、誰も居ないので笑い声は風に消えていった。
何もない四阿は独りきりでいるには手持ち無沙汰になってしまい、
このままここに居ても退屈なだけだと感じ始めていた。

それに自分は陛下から逃げる指令を受けていたことを思い出し、
夕鈴はここから近いところをボンヤリと考える。
思い浮かぶのは・・・老師のいる立ち入り禁止区域だ。
でもそこに黎翔が来ていたら、鉢合わすことになり大変マズイのだが・・・。

「まぁ、いいわ!こっそり行って、陛下がいるかどうかを聞いてみればいいか」

夕鈴は安直な答えを出して、目的地に向けて颯爽と歩き出した。








続。





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コメント
この記事へのコメント
です(≧∇≦)
ふふふ(#^.^#)来ました!
兎さんは逃げていますね〜☆
兎さんならではのぴょんぴょんさが伺えます!李順さんもそりゃ何度もお妃らしくと言いたくもなりますね〜♪(´ε` )
そして夕鈴、四阿で手持ち無沙汰になるのがはやっΣ(゚д゚lll)
さて陛下から逃げ果せられるか!ですね!
2015/10/06(火) 20:59:22 | URL | タイフーン #-[ 編集]
あの陛下から簡単に逃げ切れるとは思わない・・。何せ、彼には夕鈴センサーがついてますからね。恐ろしい・・。
素早い行動ですよ・・。てか、夕鈴老子のところなんて簡単過ぎませんかぁ?(笑)
もう少し捻りましょうよー(笑)

続きお待ちしております。

2015/10/06(火) 21:55:17 | URL | ママ #-[ 編集]
タイフーン様

こんにちは~コメント有り難うございます
返信お待たせしました!!

ふふふ~
いらっしゃいませっっ!!!
魅惑の園へ~~って違うかっっ。


兎さんは頑張りますよ~~
だって特別報酬の為ですからね~俄然やる気に満ち溢れてます。

ぴょんぴょんですから~これを陛下が見たらたまらんでしょうね~~
捕まえて!そしてぱっくり食べてしまうことでしょう~~
ふふふ・・・・折角再録するのだから、少し話変えましょうか・・・。


続きもお楽しみくださいね~~ってまだUPしてない!!!
今日あたりでもUPしたいと思います!!!




2015/10/10(土) 16:38:09 | URL | 瓔悠 #-[ 編集]
ママ様

こんにちは~コメント有り難うございます
返信お待たせしました!!


陛下には鋭いセンサーが標準装備ですからね~~
兎妃だけに反応するという特別センサーですがっっ!!

さぁ~~て兎さんは逃げ切れるのか?!
それは続きを見てくださいまし!!ってまだUPしてないじゃん!!!


ふふふ~~~
ホント、夕鈴って安直すぎます。
でもそれだけ行動範囲は狭いってことですよね~~
妃ってホントに窮屈ですよね~~


夕鈴、頑張れっっ!!
とエールを送っておきますねっっ!!!

2015/10/10(土) 16:43:25 | URL | 瓔悠 #-[ 編集]
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