【更に行きつく想いの先には】 ・ 『空は青く光りと共に』後日談2
2015年08月26日 (水) | 編集 |
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臨時妃 ・ 原作寄り






気が付けば不思議な体験をしてから、数日が経っていた。
その間黎翔の渡りが無かったわけではないが、
あの時の話題は何故か二人の間では全く上る事がなかった。

夕鈴自身も日が経っていくにつれて、あれはどうも白昼夢だった様な気さえしてきているのだ。
黎翔に『昔、私とお逢いした事は無いですか?』と聞くのもどうかと思うし。

自分の中でモヤモヤ感が駆け巡る。

「あぁぁぁぁ~~~もうっっ、どうも物事が曖昧でスッキリしないってのは、気になって気になって仕方ないのよね!!」

雑巾片手に叫ぶもんだから、卓上でお煎餅をバリバリ食していた老師がずっこけて床に尻もちを付いていた。

「まぁ~~たく、掃除娘っ!ワシの腰が抜けたらどうしてくれるんじゃ」
「あっ、老師・・・いたんでしたよね、スミマセン!!
ただ、私はこの部屋の掃除中なんですから、お菓子をこぼさないで下さい」

老師は夕鈴の言葉を聞き入れる風も無くお尻を撫でながら、また卓上に登る。

「しかし何を悩んでいるんじゃ?ホレ、わしに話してみぃ」
「あのですね・・・聞きたい事が有るのに、聞けない時って如何すれば良いんでしょうね」
「そりゃ、その・・・・まぁ・・・・」

意外なことを聞かれたという感じで、老師は口ごもる。

「いいです!こういう思いは自分で何とかしないといけないモノですから。
そうそう、老師、床に落ちたお煎餅の食べカスはキチンと掃いておいてくださいよ」

夕鈴は雑巾を入れた桶を持って、退散する。
部屋を出る直前に老師にお願い事をするのは忘れずに。

「ホイホイ!!」

老師は返事だけはいいんだけど・・・。
どうせ、明日はまたあの部屋を掃くことから始めないといけないだろう。

掃除道具を片付け着替えを済ませると、妃としての自分が再開される。
自分には備わっていない楚々たる立ち居振る舞いが求めらる。

はぁ~~今日は何だかこのまま自室には戻りたくはないのよね。

いつもならそんなことは考えないのだが、今日はどうも気が重い。
こんな気持ちで自室に帰れば、ボロが出てしまうことだって有り得る。

それならば少し散歩でも・・・・・・そうすれば、この気鬱も晴れるだろうから。


夕鈴は特に行くあてもなく、ただブラブラと歩いてみた。
今日の日差しは天高くから降り注ぎ、風は心地よくそよいでいる。
鳥はキレイな音色で唄い、池の魚は優雅に泳いでいる。

「あら、こんなところに・・・・」

木の陰に隠れて、周りからは目立たない四阿。
後宮の庭園は、代々の妃たちが各々王と寛ぐためにあちらこちらに四阿が設けられている。
使われていない現在もキチンと整備だけはされているのだ。
たった一人の王とそしてたった一人の妃の為に。

「ここなら誰からも見つからないだろうから、少しゆっくりとしていくのもいいかもしれないわね」

夕鈴はこんもりと盛り上った木々の間を分け入り、四阿の入口に回り込む。
一人きりになれると思っていたのに・・・・・先客がいた。


・・・・・陛下?
こんなところにどうして?

黎翔は四阿の中にしつらえられた長椅子に寝転んでいた。
そして、いつも妖艶に光る深紅の瞳は静かに閉じられている。
どうやら眠っているらしい。

きっと疲れているんだわ・・・・・いつもお忙しくされてらっしゃるから。

夕鈴は寝ているのを邪魔しないように長椅子の反対側に置かれた椅子に腰かけ、
寝ている黎翔をじっと見つめていた。

心地よく吹く風に黒髪が微かに揺れていて、前髪がふわりと風で跳ね上がる。
柔らかそうだなぁ~~とつい、その前髪をそっと手で触れてみた。
起きてしまうかもと気にはなったが、それでも起きることなく規則正しい寝息が聞えてくる。
普段はこんなに近くでマジマジと見る事が無いから分からないが、寝ている陛下は実際の年よりも若く見える。

不思議な感じだわ。
眠っていると、あの時の陛下のようだわ。
そう、私は確かに逢った・・・・少年だった陛下に。
あの古井戸の穴から抜け出た先で。

夕鈴はボンヤリとあの時のことを思い出していた。

「ふふっ、あの時の陛下は・・・今と余り変わらなかったのね。
でも、あの時よりも今の陛下の方がずっと精悍で素敵だわ」
「そう??」

寝ている筈の黎翔の口角がキリっと上がり、艶っぽい笑みが夕鈴を捉える。
そして力強い深紅の瞳が此方を見据えていた。

「えっ、えっ~~~~~~~~~いつから起きていたんですか??」

度肝を抜かれた夕鈴の絶叫が辺りに響き渡る。
その絶叫に驚いた鳥たちが一斉に周りの木々から飛び去った。

「・・・・・起きたのはさっきだよ」
「じゃあ、私が独りごと言っていたのは聞えていたんです・・・よね」
「まぁね」

夕鈴は恥ずかしすぎて、火照る頬を両の手で覆う。

「夕鈴・・・・僕を見てよ」

そっと呟く言葉と共に、両手の上に黎翔の一回り大きな掌が重なる。

「ねぇ、あの時よりもいい男になった?お姉さん?」
「!☆”!!」

やっぱり、あれは夢じゃ無かった!!

口をあんぐり開けてビックリ顔の夕鈴を見て、黎翔はクスクス笑ってる。

「此処にちゃんと繋がっていたんですね」
「そうだよ・・・・君にもう一度逢いたかったんだ」

遠くを見詰めて、一言一言を噛み締めて話す黎翔が眩しく見える。
時の狭間に迷い込んだ夕鈴が出逢った少年が、今はこの国を支える偉大な王で。
更にバイトではあるものの、素敵な伴侶であることが何だかこそばゆい。

「陛下・・・・・私も、逢えてよかったです」

同じ景色を見て、同じ思いを感じて。
この時を共に過ごせる幸せに浸る。
それが、いずれ終る関係だとしても。
想いが交差しないとしても。

恋と呼べるこの想いをずっと胸の奥に秘めたままだとしても。
それでも、貴方と出逢えてよかったです。


夕鈴は空を見上げ、大きく息を吸い込んだ。





終。





2013.06.07 SNS初載
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コメント
この記事へのコメント
狸寝入りは、うまいですね~。
それで、夕鈴のことわかってしまうんですね・・悪趣味だよ陛下←
夕鈴のモヤモヤも解消され、二人の距離も近づくかな?(^_-)
2015/08/27(木) 06:34:45 | URL | ママ #-[ 編集]
おはようございます、タイフーンです(≧∇≦)
後日談② あるなんて、嬉しい〜!
でも、そうだ、、バイト妃のお話だったんですよね、陛下の手中納め計画ががっつりとは発動されてないので( ̄^ ̄)ゞ
狼陛下の花嫁の知識が深まるにつれ、再録SSって魅力いっぱいです。もうすぐはまって一年になります\(^o^)/
2015/08/27(木) 07:56:14 | URL | #-[ 編集]
ママ様
こんばんは~コメント有り難うございます
返信お待たせしました!!
ふふふ~~陛下はどんなに寝ていても、夕鈴の気配なら起きてしまうんでしょうね。
それは愛する所以・・・だと。
これを書いたときは、その後陛下と夕鈴の道行きは全く分からなかったから
二人の距離が少しでも縮まってくれればいいなぁ~とすっごく思ってましたね・・・。
今読み返すと、実は結構新鮮だったりします。
でもそのままUPすることはできませんでした。
手直しが必要で・・・・(苦笑)
自分が書いたものを読み返すのって、結構精神が消耗するもんです・・・。
2015/08/27(木) 23:58:43 | URL | 瓔悠 #-[ 編集]
タイフーン様
こんばんは~コメント有り難うございます
返信お待たせしました!!
後日談2・・・楽しんでいただけたようで、良かったです。
そうなんです、これってバイト妃の話なので
結構、その後の陛下と夕鈴の関係性がまだ希薄ですね~
今読み返すと、『狼陛下の花嫁』のハマり年数の長さが
浮き彫りになる感じがします。
私はどれくらいになるんでしょうか??
2次を書き始めて3年は経ったんですけどね・・・。
2015/08/28(金) 00:02:51 | URL | 瓔悠 #-[ 編集]
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