≪ 2017 07                                                2017 09 ≫
 - - 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 - -

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


【設定】

臨時妃 ・ 原作寄り 














「い、いま・・・何しました???」
「何って・・思い出を貰ったんだけど」

少年陛下は全く悪びれる事もなく飄々としていた。
深紅の双眸は、夕鈴が首まで真っ赤になって慌てまくっている様子を観察していた。

「あの、思い出って清いモノでしょ!!
例えば握手とか!!!」

夕鈴は興奮しまくって、なり振り構わず黎翔に詰め寄っていた。

「お姉さん、結構可愛いんだね。口付けしても、減るもんでもないし」
「減るわよ―――!!!」

「ぷぷぷ、、、あはははは~~~~」

もう耐えられないとでも言う様に、目の前の少年陛下はお腹を抱えて笑い出す。
それも紅い瞳に涙を滲ませて。

「もうっっ!!少年のうちから、そんなだったら将来がどうなるかわかんないわよ!!」
「・・・・・・・・将来か」
「????」
「僕にマトモな将来なんてあるのだろうか・・・・」

眉根を寄せて真剣な表情に瞬時に変わる。
小犬から狼に変貌するときの様に。
それは夕鈴にとっては見慣れたものだったが、
少年の陛下が醸し出す雰囲気は何故かもの悲しく見えた。

「大丈夫・・・・・貴方は、高潔で精悍な男性に為ってるわ。
そして、誰よりも民や国を思って自らを律する・・・・・・・高貴な王に」

夕鈴は、自分が感じている黎翔の姿をつとつと話していた。
でも、最後の言葉は・・・黎翔には聞えないように呟いた。

「貴方に逢えて良かったです。私の知らない貴方を垣間見ることができたから」
「??」
「いいえ、こっちのことです」

夕鈴は呟くと、目の前に広がる野花の咲き乱れる野原に駆け出した。
そして野原の真ん中に立って、黎翔に手招きする。
招きを受けて黎翔が走り出したのを確認すると夕鈴は捕まらないように、
また其処の場所から野原の奥に立っている一本の大木へと向かう。
そびえ立つ大木まで辿り着くと、夕鈴はあるモノを見つけた。

「えっ、これは・・・・」

それは、大木に隠れて上の斜面からは見えなかった古ぼけた井戸。
夕鈴は蓋を開けると、身を乗り出して覗いてみた。
覗き込んだ先は、かなり深い様で底は見えなかった。

傍に落ちてある石ころを拾うと、夕鈴は井戸の中に放り込んだ。

『ポチャン―――――』

少し間が開いて、石が水底に入る音が反射してきた。

「此処は水が残っているのね」
「何してるの?」
「ううん・・・・戻れないかなって思って」
「お姉さんは、戻りたいの??」
「私は、あの方に逢いたいの・・・・・・だから帰りたい」
「そんなに切ない顔をするくらいなら、その逢いたい者に迎えに来てもらえば良いではないかっっ!!!」
「・・・・・それが出来ればどんなに良いか」

夕鈴の頬は、零れ落ちてきた一滴の涙で濡れていた。
そして・・・・・・次々に溢れ出る涙を止める事は出来なかった。

「泣かないで、夕鈴」

苦しそうに揺れる深紅の瞳が、涙で濡れた薄茶の瞳とかち合う。

「ねぇ、だったら僕がその寂しさを埋めてあげるから。
泣かないで・・・・僕が一生を掛けて守るから。
絶対に君を哀しませたりしないから」

少年陛下は腕を伸ばして夕鈴の身体を引き寄せた。
そしてそのまま、夕鈴は成長途中の少年が持つ荒々しさと優しさに満ちた胸に抱かれたのだった。

やっぱりここにいるのは陛下なんだわ。
でも、この優しさに甘えてはいけない・・・の。
だってここは、私の居場所ではないのだから。

そっと夕鈴は両手で抱き締めた腕を外し、ニッコリと微笑んでみせた。

「ありがとう」

一言呟くと・・・そのまま、井戸の中へと身を躍らせた。

「夕鈴――――――!!!」

上から聞こえてくる悲痛な声を耳で捕えながらも、心はあっちの黎翔へと飛んでいた。

「陛下に逢いたい!!!!私は帰りたいんです!!
だから、私を迎えに来てください!!!」

深い井戸で落ちて行く感覚とは別の感覚が、襲ってきて夕鈴は目を開けている事が出来ず両目をシッカリと瞑った。
井戸の底の水音が聞こえる事は無く代わりに乾いた土の匂いが鼻をくすぐり、
そのまま夕鈴の意識は遠くなっていった。



「夕鈴っ!!夕鈴!!!」

誰かが私を呼んでる・・・・・一体、誰???

「夕鈴、夕鈴・・・・お願いだから、目を開けてくれ!!!」

だから・・・そんな耳元で呼ばないでください、陛下!!
へいか?????って!!!

『パチッ』

目を開いたら、上から覗き込んでいる心配げに揺れる瞳があった。

「陛下・・・・・・・・・・ですよね」
「夕鈴、心配させないでよ」
「良かった~~~お妃ちゃんが無事で!!これでオレ、命拾いしたよ」
「・・・???陛下デスヨネ」
「大丈夫か?」
「はい、大丈夫です」

夕鈴は背中を支える黎翔の大きな手に安心して・・・・安心し切って、また睡魔が襲ってくる。

「ただいま・・・・・陛下。やっぱり、素敵な男性になりましたよね」

その謎の言を残したまま、夕鈴はそっと目を閉じた。

「寝ちゃったよ・・お妃ちゃん。如何するのさ、陛下??」
「私が運んでおく・・・しかし、どうしてこんな井戸の底にいたのか。
恐らく何か裏が有るのだろうから、お前はちゃんと調べておけよ。いいな!」
「はいはい!!!了解!!」

浩大が風の様に去って行くと、そこに残るのは夕鈴と黎翔の二人きり。
黎翔は壊れモノを扱う様に、優しく抱きあげ頬にそっと唇を落とした。
そして安らかに眠る夕鈴へ一言呟いた。

「お帰り・・・・・お姉さん」

その言葉は風に溶けていき、誰も聞きとる事は出来なかった。





終。





2013.05.10 SNS初載
関連記事
スポンサーサイト


おはようございます!
最終回が読めましたな!ハッピー♪(´ε` )
お姉さんって、いつ気付いた!! 白状せよ、陛下! 約束通り一生守って〜\(^o^)/
こんばんは~コメント有り難うございます
返信お待たせしました!!
はぁ~~い、最終回をUPしました。
UPが一日遅くなってしまいましたが・・・。
やっぱ陛下の『お姉さん』発言は新鮮さがあって
私は大好きです。
しかし、いつ気が付いたんでしょうね~~
そこは私も謎です・・・。(笑)
この記事へコメントする















瓔悠

Author:瓔悠

現在の閲覧者数:
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。