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【労多くして功少なし】・前編 未来は何処に(幕間) 

こちらの作品は、3月15日のプチオンリーへ出品したオフ本の
幕間話となってます。

ですので、『未来は何処に』の本編をお読みでないと
愉しめない可能性があります。

そこを了承の上、お進みくださいませ。       瓔悠。







【設定】

臨時妃 ・ 原作寄り







『私は書き記す・・・・・・・・
狼陛下と呼ばれし白陽国国王・珀黎翔の正妃は、市井のただの娘であった事を。
そしてその事は、ごくわずかな忠臣にしか知らされていなかった。
その正妃は何も持たず、何も与えることは叶わず。
それでも狼陛下はこの正妃を・・・・・・生涯唯一人と定め、大変慈しみ愛したのだった』


誰も近づくこともない今は使われていない王宮の書庫の最奥の棚に納められた、
題名も著者も書かれていない黒表紙に覆われた一冊の書物。

誰にも読まれることなどないはずだった。
しかし、縁とは不思議なもので・・・・・。
何代も何代も後の李家の若者が読むことになろうとは、
当時書き記した著者である李順は思いも寄らなかった。


そう、これは狼陛下の側近・李順の話である。


********************


それは急に起こった。
ここ何日か降り続いた雨もようやく上がり、雲の切れ間から晴れ間が見えていた午後の事。

珍しく夕鈴殿が私だけに用があると、秘密裏に後宮立ち入り禁止区域に呼ばれたことが発端だった。

忙しい私をわざわざ呼び出すなんて、あの小娘は!!
と腹立たしく思いながら向かったが、あそこであんな事を告げられるとは思いも寄りませんでした。

夕鈴殿が『後宮を辞したい、バイトの任を解いて欲しい』と真剣な眼差しで言って来るとは・・・・・。



「夕鈴殿、急にそんな事を言われても・・・・理由は何なのですか?
貴女には借金返済後も破格のお給金を支払っているのに、
一体何が不満なのですっっ!」
「不満なんて、全く有りません!!
不満よりも今まで良くしていただいた事に感謝しか有りません。
でも、私は退宮したいんです」
「陛下には、何と言ったのですか?」
「・・・・・・・・いえ、陛下には、まだお話しはしてません。
でも兎に角辞めさせて欲しいんです!お願いします、李順さん」
「辞るにしても、理由は何なのですか?
理由も聞かないのに、辞めさせる訳にはいきませんよ」
「理由は・・・・・言えません」

夕鈴殿は、しきりに頭を下げて『辞めさせて欲しい』としか言わなかった。
理由は何も語らず・・・・・。

正直、困り果てている次第です。
今更、夕鈴殿の代わりの臨時花嫁を探すのは面倒ですし。
でもそうなると、また陛下によからぬ者たちからの縁談が降って湧いてくることは
目に見えて分かり過ぎて。

「陛下がお許しになるとは思えませんよ」
「・・・・・だから、李順さんにお願いしてるんです」
「まぁ、確かに私が最初に雇い入れましたからね」
「お願いします」

どうして此処まで必死なのでしょうか?
理由が分からないのでは、おいそれと辞めさせる訳にはいきませんよ、夕鈴殿。

私は眼鏡を外すと懐に納めている布を取り出して丁寧に拭き、また掛け直した。
眼鏡の水晶体が陽に反射してキラリと光る。
その光に目の前の夕鈴殿の身体が一瞬ピクッと震えて、おののいている様子が見てとれた。
それでも薄茶の瞳は断固とした意志がハッキリと見える。

これは・・・多分、何を言っても無駄なのでしょうね。
ならば、この辺りが逃し時なのかもしれません。

私はフゥと息を短く吐き出した後、こう告げた。

「分かりました、夕鈴殿。今までお勤めお疲れ様でした。
退職金につきましては、キチンと支払いますのでご安心ください。
ただそれは、此処でのことを一切口外しない口止め料も含まれている事をお忘れ無く」
「はい、分かりました。で、あのう・・・李順さんにお願いがあるのですが」
「私に・・・ですか?」
「はい」
「何でしょうか?」
「陛下には・・・・・李順さんからこの事を伝えて欲しいのです」
「私からですか・・・・それは出来ません。
それは、まがりなりにも陛下の妃であった貴女から申し上げるべきだと私は思いますよ」
「・・・・・・確かにそうですね。スミマセン、陛下には私からキチンと申し上げます」
「そうしてください」

私から陛下に伝えるのは、勘弁ですよ。
どれくらい荒れるのか・・・・想像も付きませんし。
そのとばっちりを受けるのは、絶対に私なのですから。
だから、夕鈴殿の口から伝えるのが一番・・・です、多分。
でも本当に夕鈴殿は、何故辞めるなどと言い出したのでしょうか?
その辺りはキチンと調べた方が良いのでしょうね。

私は後宮立ち入り禁止区域から執務室へ戻る道すがら、そんな事を考えていた。

*************

「何か用?」
「来ましたね、浩大・・・・・貴方に調べて欲しい事があるのです」
「オレッちに?」
「はい、貴方でないと出来ない事なのです」
「ふぅん、で、何?」
「夕鈴殿が退宮します」
「へぇ~お妃ちゃん、また実家に帰るんだ~。じゃあ、オレは護衛ってことだね」
「いえ、護衛の必要はありません」
「どういうこと?」
「夕鈴殿は、もう此処には戻ってきませんから」
「はぁ?」
「文字通りの意味ですよ。あの方はバイト妃を辞めて、実家に帰るんです」
「何で?」

浩大は驚いて、目を見開いていた。
そして口元でもごもご何か言っているようですが、私にまでは聞こえてきません。

・・・・浩大も理由は分からないということですか。
護衛ということで陛下よりも私よりも夕鈴殿の様子を見ているから、
理由を知っているのでは?とも思ったのですがね。

「私にも理由は分からないのですよ。夕鈴殿は頑なに理由は言いませんでしたから。
それで、貴方に調べて欲しいのです・・・・退宮理由を」
「それは、いいけどさ。で、オレはお妃ちゃんに接してもいいの?」
「いいですよ、人に見られないのであれば・・・それで分かるのであれば万々歳ですしね。
私には言えなくても、貴方には言えるかもしれませんし」
「まぁ、それは分からないけどね・・・頑張ってはみるよ」

そう言うとすぐに浩大は足を掛けていた窓枠からポンッと蹴り出して、隣の木幹に飛び移った。
更にその木幹からも、直ぐにはいなくなってやがて姿は見えなくなった。

これで、浩大が何かを掴んでくれると良いのですが・・・。



そして数日後・・・・・・後宮から、妃が消えた。
たった一人の妃が。
あるものは、狂喜した。
あるものは、哀傷した。

陛下は、何も言われなかった。
表面上は、平然として政務をただこなしていた。
でも纏う空気は、冷たくて・・・それは陛下の心情を表しているようで。
まるでナイフが凍ったまま心の臓に突き刺さった感じです。

本当はもっと荒れると思ったんですがね。
政務も手につかないほど。
ですが、予想が外れました。
でもきっとこのままと言う訳にはいかないのでしょう。
さぁ、私は狼陛下の側近としてどうすれば良いのでしょうか?

自分の為すべき事とは何であるのか・・・・・それをボンヤリと考えていた。


そして、驚愕の事実が付きつけられた。
夕鈴殿のところに遣わせた浩大に因って。

「汀 夕鈴嬢、いやお妃様は・・・・陛下の御子をご懐妊なさっているご様子です」

えっ???
今何と、言いました??
夕鈴殿が陛下の子を身籠った??

まさかの報告に驚きの声しか出なかった。

「何ですって!!!」

と・・・・・・・・。



続。
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この記事へのコメント

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こんばんは~ コメント有り難うございます
良かったぁ~~楽しんで頂けて!!
この話はオフ本の内容を知っている人の方が楽しめるからですね~
私は羞恥プレイよろしく、オフ本を片手に書いてました。
マジでハズい・・・・・。
自分の本を読み直すのはホントに拷問に近い・・・です。
続きを~~と言っていただけるのは、書いた私にとって
凄く励みになります!!!
続き~~少しお待ちくださいませ~
マジでありがとう~~です。
スッゴク嬉しかったぁ~~~。
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瓔悠

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