【華装会・7】
2015年07月01日 (水) | 編集 |
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臨時妃 ・ 原作寄り


【注意事項】

こちらの作品は、前ブログ『遥か悠遠の朱空へ』にて公開していた作品です。
今回こちらへ移行するに伴い少しだけ手直ししておりますが、
書いた当時の陛下と夕鈴の関係が浅いものでありましたので、
当時の雰囲気を残すべく糖度はあまりありません。
そのことを踏まえた上でお読みいただけます様、宜しくお願いいたします。   瓔悠。










杯を取ろうとした瞬間、夕鈴の手が誰かの手と触れあってしまい中身が零れそうになった。

「あっ、失礼しました。申し訳ありません、大丈夫でしょうか?」

夕鈴は、直ぐに頭を深々と下げて謝る。
その頭の上から相手の男性の声が降ってきた。

「いや、大丈夫だ」

この不愛想で端的に答える話し方に夕鈴は余りにも心当たりが有り過ぎて、慌てて頭を上げる。
その男性は仮面をしっかりと取れない様に付けてはいたが、間違えようがない・・・方淵である。

マズい。
これは非常にマズい。
此処で私だとバレてしまうのは、非常にマズい。

どうしよう・・・・・取り敢えず謝ったのだから、不自然じゃない様に立ち去ればいいよね。

「本当に失礼致しました」

もう一度、キチンと頭を下げてから立ち去ろうと踵を返すと後ろから声が掛かる。

「ちょっといいだろうか?」

ギクッとして、バレた??と一瞬夕鈴の動きが止まる。
後ろを振り返ろうとするが、糸の切れた操り人形みたいに動けない。

「おい、呼んでいるではないかっっ」

不機嫌そうに方淵が畳み掛けてくる。
夕鈴は、その声音に背筋がピーンとなって慌てて振り返る。

「は、はいっ!何でしょうか?」

驚いていた事もあり、声が上ずって更に裏声になる。
これが意外にも功を奏し、方淵はこの女性が夕鈴であるとは気付かなかった。

「ちょっと尋ねたいのだが、何の花が好みなのか?」
「はい?花ですか?いえ、いただく訳には参りません」
「チッ、違うな・・・もういい、ではな」

方淵は夕鈴をその場に残し足早に立ち去ってしまい、夕鈴は茫然として方淵が向かった先を見ていた。
そうすると行った先の女性に声を掛けていて、程なくその女性の所から立ち去った。
そしてまたその女性の近くにいる今度は違う女性に・・・・。
夕鈴が見ていた少しの間に、一人きりでいる女性四人程に声を掛けていた。
ボーと方淵の様子を見ていた夕鈴だが、完全に方淵の姿が見えなくなると段々と何だか腹が立ってきた。

なっ、何なのよ!あの横柄な態度は!!
調査なんだろうけど、あんな聞き方は女性が気分を害してしまうわよ。
もっと紳士的な聞き方ってもんがあるでしょうに・・・紳士的って言えば、先程の男性はどうしたのかしら?
あんなに女性に優しそうな方だったから、直ぐにお相手は見つかっているわよね。
それにしても、ホントにお礼を言いたかったけどいなくなってしまって。
しかも顔すら見てないから、会場内で探す事も出来ないし残念だわ。

最初は方淵の事を怒っていたのだが、気付かないうちに思考が違うものに替わっていく。
いつしか方淵の女性に対する態度など、もうどうでもよくなっていた。

そのまま夕鈴は杯を持って先程いた場所ではなく、飲み物の置いてあった卓近くの椅子にゆっくりと歩いて行く。
近づくとすでに座っている女性二人に軽く会釈をした上で腰をかける。
夕鈴は直ぐに手に持った杯を傾け、果実水を飲んだ。
それもかなりのどが渇いていたらしく、一気に飲み干し『あ~~~』と小さく声を漏らす。
やっとのことで人心地つき、夕鈴も周りの事を見る余裕も出てきた。
夕鈴の隣に座る二人は友人同士らしく、聞き耳を立てているわけでは無いが会話が聞こえてくる。

「これっていう人はいた?」
「うん、まぁね~でも声を掛けられたわけではないからお傍に行って、
ちょっと私の魅力を見せつけてみようと思ってね。」
「え~結構大胆ね・・・・私の方はイマイチかしら。これといった男性はいなくて。
声掛けてくるのは、いかにも容姿しか見てないって感じの男ばっかりで・・・。
あっ、そうそう!見目はよかったんだけど、声の掛け方にものすごく腹が立った男がいたわ。
いきなり『花は何がいいのか?』って言われたから『あなた何様なのよ!』って言い返したけどね」
「あっ、いたいた!私も訊かれたわよ!!結構、格好良かったんだけどね」

この二人はどうも方淵の事を言っているみたい。
どうやら会場内の女性全般にそのようなつんけんした態度と言うか、横柄な態度で聞いて回っているらしい。
本当にお仕事熱心な人だ・・・夕鈴は他人事ながらここまで女性を無下に出来る方淵をある意味感心していた。

「あそこ見てっっ!あの人なのよ、私が良いなって思う人。行ってくるわね」
「じゃあ、私も他の男性探しに行ってくるわ~またね」

二人は立ち上がって、別々の方向へと別れて行った。
夕鈴は空になった杯を両手で握りしめたまま、二人の行く方向を興味津津に見ていた。
女性はお目当ての人に見て貰おうと傍の椅子に腰掛けたのだが、男性はどうも気がつかないのか?それともその女性に興味がないのか?全く動こうともしなかった。
それもそのはず・・・その男性は夕鈴のみを見ていた黎翔であるから、夕鈴以外はどんなに綺麗な女性でも目に入るはずもなかった。





続。
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