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臨時妃 ・ 原作寄り


【注意事項】

こちらの作品は、前ブログ『遥か悠遠の朱空へ』にて公開していた作品です。
今回こちらへ移行するに伴い少しだけ手直ししておりますが、
書いた当時の陛下と夕鈴の関係が浅いものでありましたので、
当時の雰囲気を残すべく糖度はあまりありません。
そのことを踏まえた上でお読みいただけます様、宜しくお願いいたします。   瓔悠。






執務室へと戻る黎翔は、どうしたら抜け出せるのか?如何にして李順を騙せるのか?
それについて思考を巡らせており、表情が硬くなっていた。
そのせいで、すれ違う官吏が次々に青ざめながら拱手していく。
しかし全く官吏の様子にも気付かない程、黎翔は真剣に考え込んでいた。
それでも執務室に辿り着くまでには考えが纏まり、近くにいた官吏に李順を執務室に呼ぶようにと申し付けた。

「お呼びだとの事ですが、如何されましたか?不手際な案件でもございましたか?」

黎翔からの呼び出しだと聞いた李順が慌てた様子で執務室へと入って来て、黎翔へと質問を投げかける。

「李順!華装会なるものを、お前は知っているか?」

逆に質問で返してくる黎翔を見ながら、何だ・・・そんな事かと安堵した様子で李順は答える。

「華装会ですか・・・確かその会場内で見つけた意中の女性に花を捧げ、
受け取ってもらえたら話をしてもらえるという、町で1年に1回開催されているお見合いでしたね。
参加する女性も商家の娘、町娘、下級・中級役人の娘など幅広い層の女性が集まるとかで、
若い官吏の参加者も多いとか・・・それがどうかしましたか?」
「その華装会に夕鈴も出席するそうだ」
「はぁ、夕鈴殿がですか?私は聞いてませんが」
「先程預かった封書に書かれていたようだ。それで、後ほど執務室に相談に来ると言っていた」
「まさかとは思いますが、陛下も一緒に行くなんて事を仰りませんよね。
先日、夕鈴殿の実家の衣替えに付いて行かれた際にどれだけ政務が滞ったか・・・」

やはり、李順は有能な側近である。
黎翔の行動を把握して、きちんと釘をさす事を忘れない。
しかし黎翔とて、こう言われるだろう事は既に承知の上で・・・黎翔は先程考えた事を伝えるべく言葉を紡ぐ。

「流石に私が参加するのは無理があるだろうが、どうも毎年その華装会を隠れ蓑に裏で色々な取り引きがあっていたりする様だ。ここは調査を兼ねて、方淵にでも行かせてはどうだろうか?」
「華装会でそんな事が??私の耳には入ってはきていませんが・・・・まぁ、調査するのは良いとして、方淵殿が調査員ですか?彼は、ああいう場所には最も向かない人だと思いますがね」
「確かにそうかも知れないが、方淵は実直で堅物であるから・・・周りの雰囲気にも飲まれることなく、調査してくれるであろう?」
「陛下が、そう仰るのあれば・・・・私としては、陛下が直接赴かれるのでなければ誰でも良いですし。
では、後ほど方淵殿には通達しておきます。そうそう、陛下・・・机の上の書簡の山はキチンと減らしておいて下さいよ」

李順は政務室へと戻るために戸口に向かいながらも、キッチリと黎翔を急ぎの書簡の山へと向かわせることは忘れない。
残された黎翔は書簡の山崩しに取り掛かりながら、布石は完璧だとニヤリと微笑んだ。


*********


その頃の夕鈴はというと・・・午前の続きの針仕事をしていた。
しかし先程の封書の事を考えながらしているので全く集中出来ず、
時折自分の指を刺してしまい「痛っ」と呟き、その度に侍女たちは薬箱を持ってオロオロとしていた。

お見合いねぇ・・・私、今までそんな事考えた事もなかった。
几鍔なんかには『行き遅れ』だの『嫁の貰い手のない』だの散々の言われようだけど、
お見合いしたいだなんて思いも寄らないし。
第一、まだ青慎も一人前になってないし多額の借金だってある・・・・今はどれくらい減っているのかは分からないけど。
あんまりというより全く気が進まないんだけど酒屋さんの顔を潰すわけにもいけないから、参加しておかないとね。

色々考え込んでいた夕鈴であったが、別に参加したからと言って自分の所に男の方が寄ってくることも無いだろうと、
お気楽に『美味しいものが食べられる』くらいの感覚で参加する事にしようと割り切ってしまい、
考えることを止めた。

そうした事で、いつの間にかいつもの夕鈴らしい柔和な表情に戻っていたようで、
侍女たちもいつものお妃様だとホッと息を吐き安堵していた。


*********

夕刻が訪れる少し前・・・・ようやく書簡の山をほぼ制覇した頃、
執務室に夕鈴の侍女が妃の訪れを先触れしてきた。

黎翔は書簡から視線を上げて侍女に入室を許可しつつ、ついでに政務室に居る李順を呼んでくるよう命じる。
そして少しすると侍女に先導されて夕鈴が裾を翻しながら優雅な足取りで、更には顔には微笑みを浮かべて入って来た。

如何にも黎翔に逢いかった・・・・という寵妃を上手く演じながら。

黎翔はそんな夕鈴を独り占めしたくて、椅子から立ち上がり大股で近づくとスッと手を差し出す。
差し出された手を取ってしまって良いのかと夕鈴は一瞬躊躇ったが、
侍女たちがまだ下がってはいない以上妃演技は続けなければならない。

はにかんだ笑顔で差し出された大きな手を握ると、頬を朱に染めながら黎翔の紅い瞳をジッと見詰めた。

「あの・・・陛下。私、どうしても陛下にお逢い致したく此方に参りましたが、ご迷惑ではございませんでしょうか?」

もう他には何も見えないというように・・・・薄茶の瞳は潤んでいた。
確かに傍から見れば、陛下におねだりしている可愛らしい妃である。
しかし夕鈴にはそんな気は毛頭なく、寵妃らしく振る舞う演技の恥ずかしさに瞳を潤ませていたのである。
ただ此処に来る口実を作るためだけなのに、かなりの苦労を強いられていたのだった。

「君から逢いに来てくれるなど余りないことだから、迷惑などと思う筈はない。
寧ろ、君が来てくれた事で政務も捗るというものだ。」

黎翔も夕鈴の必死の妃演技を受け、さらっと手慣れているように答えた。
殊更に離したくはないと意思表示するかの様に、握った手をそのまま強く握り直した。
そして夕鈴は表情そのものはニッコリとはしているものの、手を離そうと必死にもがいていた。

そんな様子の夕鈴に黎翔は意地の悪い笑みを浮かべると、右手を挙げて侍女を下がらせた。
そうしてこの先はどうしてやろうかと思案していると、タイミングよく李順が入って来てしまった。

「夕鈴殿!陛下から聞きましたが、華装会に出席するそうですね」
「はい、どうやらそういう事になりそうです。
それで・・・・その・・・・誠に申し訳ございませんが、帰省させて頂きたくて・・・」

鬼の上司を目の前にして、夕鈴は言い淀む。
李順の眼鏡がキラッと光った気がした。
その様子に、ビクッと夕鈴はおののく。

「やっぱり・・・・・・ダメ・・・ですよね・・・・・そうですよね・・・・・私はバイトの身ですし」
「ダメだと言っていませんよ。それは仕方のない事ですし・・・貴女にも事情がありそうですし、許可しましょう。
但し王宮勤めの官吏も多数参加するようですから、くれぐれも貴女が妃だとばれないようにして下さいよ。
あと方淵殿も参加しますので、特にご注意をっっ!!いいですね」
「えっ、方淵殿が?それは何故ですか?あの華装会は、貴族と言っても下級・中級貴族で、更には次男三男ぐらいがくるものですよ。
方淵殿といえば確かに次男ではありますが、大貴族出身では有りませんかっっ!!!」

夕鈴は驚きを隠せず、素っ頓狂な声を上げた。

「夕鈴殿、静かにっっ!!方淵殿は、ちょっとした調査を命じらて出席するんですよ。
ですから、あくまでサクラです」
「あっ、そうなんですか・・・分かりました。では、妃だとバレないように気をつけます。」


そう決意して、夕鈴は李順にきっぱりと返答していた。
画して、夕鈴は大手振って前日の土曜日からの休みをもぎ取ったのであった。




続。
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アレ?コメしたはずなのにUPされてない・・・。
あっちもこっちもコメだけど、私も楽しいので全然苦になりませんよ!
大丈夫ですので安心を~^^
読ませてもらってるからコメくらいしか出来ないので、これでよゆりんが喜んでくれるなら本望ですよ。
ま、日々暇してます私ですからお気になさらずに~。
李順さんは最初から最後まで振り回されてますよね(笑)
でもそれが李順さんなんだからしょうがないんです←
しかも方淵間で借り出されるという・・・。
続き待ってますからねー^^
おはようございます~ コメント有り難うございます
返信お待たせしました!!
あれま・・・またコメ消えた?
最近PCさんのご機嫌が悪いみたいだね・・・。
そんな中のコメント・・・超!嬉しいですっっ!!
コメント頂けるのって、書き手にとってすごく嬉しいことなの。
読んでくれて、ああ、こう思ってくれたんだぁ~とか。
ああ、私もこういうところを思いながら書いたの~と共感して。
それで、また続きを書こう!とか思えるの~
だから、すごく有り難いんですっっ!!
うふふ、側近さんはいつもああです。
特に私が書く話の中では、苦労性ですね~
全く気ままな王さまの側近は大変ですよ~~
方淵まで駆り出されましたからね~さぁ、どうなる???
私も詳しい部分は忘れてます・・・・だから久々に読んで、ああ、そうだったんだ~と新鮮だったりします。
続き、お楽しみに~~~
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瓔悠

Author:瓔悠

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